ナッペ山ジムは、その名の通りナッペ山の山頂付近にある。せっかくなのでもう少し上に上がって、文字通りパルデアの最高峰へ。
眼前に広がるパルデアの大地の中に、ぽっかりと口を開けたパルデアの大穴…断崖に囲まれたその中は、常に雲に覆われていて中を窺い知ることはできない。
「…早く行きたいな。そのためにも…がんばろうね、ぽにこ!」
「ぽにおっ!」
もしかしたらあの大穴の底にいるかもしれない同族に思いをはせたのか、傍らのぽにこが元気に足を踏み鳴らした。
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ジムテストの内容は、雪山すべり…あの、ぼくスキーもスノボもやったことないんですけど…?
「ああいえ、そっちではなくライドポケモンに乗って行うんですよ」
「あぁ、それは良かったです」
コライドンに頑張ってもらって、どうにか規定タイム以内にゴールに成功。これで満を持してジムリーダーにチャレンジできるぞ。
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バトルコートに行くと、中央ではアルクジラが踊っていた。
その様子を眺めていると、いつの間にか来ていた男の人がその子を撫でて…ボールに戻していた。
「…挑戦者の人?」
「あ、はい…そうです!」
マフラーを口元まで上げて寒そうにしているこの人が、ジムリーダーのグルーシャさんだった。元プロのスノーボーダーらしい。
「テスト見ていたよ…うん、クールな滑りだった。でも、あまり気を良くしないほうがいい」
ため息をつきながら、コートの端に立つ。
「雪山は危険だ…簡単に人生のコースを狂わせる。バトルも同じだよ…いつだって…慣れ始めが一番恐ろしいんだ」
それでも戦うかい?と問いかけてくるグルーシャさん。彼の過去にどれだけのものがあったのだろう。元ボーダーということは、今はそうじゃない…つまり辞めたということ。きっとその選択をせざるをえなかった何かが、グルーシャさんにあったんだろう。…でも。
「…やりますよ。そして…勝ちます!」
どんなに危険だとしても、ぼくの夢…宝物を掴むために。
「…残念だよ」
そう言い残して、グルーシャさんがモンスターボールを構えた。
「…雪のように冷たい現実を、教えてあげるよ。…出てきて、モスノウ」
静かに投げ放たれた一番手が青空の下に舞い、バトルコートに躍り出た。
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「…いうだけのことはあるね。ここに来たということは、そうなんだろうけど」
ぽにこのツタこんぼうに倒れたハルクジラをボールに戻し、ぼくに視線を向ける。
「でも…踏み外せばすぐに奈落だよ」
最後に繰り出すのは…チルタリス。むしろ氷タイプを弱点とするポケモンだけど、ここで来るということは…
「知っているかい?勝負と雪山はよく似ている…あっという間に姿を変えるんだ…こんな風に!」
グルーシャさんのテラスタルオーブが煌めき、凍てついた輝きがチルタリスを彩る。
「君の道は…ここで凍りつかせてあげるよ…!」
「凍ったって溶かします!そこから…ぼくは先に進む!ぽにこ…かまどの面に、面影を宿せ!テラスタル!!」
これまで戦ってきたジムリーダーたちとの思い出が、ぼくとぽにこの力となって…それは今、振り下ろされた。
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「…僕の氷、溶かされちゃったな」
テラスタルの影響で暗くなった空が明るくなると同時に、グルーシャさんの声に心なしか熱がこもったような気がした。
「あんたの熱意…なんだか昔を思い出すよ」
「昔?」
「…こっちの話さ。さぁ、ジムバッジを渡すよ」
ひょいと渡され、あっさりと回れ右する。
「あ、ちょっと待ってください!一緒に写真…」
「ええ…そういうのサムいから普通にヤなんだけど…」
「お願いします!グルーシャさんので全部揃うんで…!」
「…しかたないなぁ、特別だよ?」
最後のチャレンジで得た自撮りは、ちょっと嫌そうな顔の隣になった。
-つづく-
最後のジムチャレンジは最強のジムトレーナー・グルーシャ。なんかマフラーが商品化されてるらしいですね。どうせならゲーム内でも販売しててほしいもんです。ボタンのイーブイリュックとか(設定上ゲームの景品らしいですが)。
実のところ実際のプレイではほぼコジョンドで終わらせてたんですよね。オーガポンに変えたのは演出の都合みたいなもんです。まぁリプレイ「風」ですので(何度目だ
さて、ここまでくるとメイン3ストーリーもいよいよ終盤。
ネタバレ無問題なやつだけかかってこいや!(言い方