『オモテ祭りのともっこたちのお面さ、なんか妙に特撮ヒーローっぽいでしょ?』
今日もレポートを書きながら、ゼイユと通話中。
『アレ、少し前にともっこをモチーフにしたご当地ヒーローの企画があったのよ。まぁ色々あって企画倒れしちゃったんだけどね。デザインはかっこいいからってことで、お祭り用のお面に残ったんだって』
ちなみにデザインを担当したのは村のお面職人…つまりゼイユたちのお祖父さんだ。本当の歴史を明かせなかった時の話とはいえ、なかなか複雑な心境だっただろうなぁ…
『ほんとよねぇ…今にして思えば、だけど』
向こうもレポート中だろうか、ペン先でこめかみをかきながらゼイユが呟いた。
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「あ、ともっこで思い出したんだけどさ」
『なに?』
「ぽにこのお面を取り戻しにともっこたちと戦った時、大きくなってたじゃない?」
『ああ、うん。キタカミセンターのおっちゃんたちがキタカミもち食べさせたからだっけ?』
パルデアに出現したヌシポケモンとともっこたち。ヌシをヌシたらしめた秘伝スパイスの存在と、よく似たスパイスを混ぜ込まれた餅について、以前ぼくとペパーが推測した話を交えながら説明する。
『巨大化したポケモンに、スパイスか…ブライア先生が言ってたてらす池のこととかもあるし…すっごい離れてるのに、パルデアとキタカミってめっちゃ遠く離れてるのにいろいろ共通点があるのねぇ…?』
「まぁスパイスについては、確かめてみないと同じ物かはわかんないけどね。機会があったらまたキタカミに遊びに行って、いろいろ調べてみようかな?」
飛行機やらバスやら乗り継いでいくからおいそれと行きにくいけど。
『あー…来てくれるのは嬉しいけどさ、今はやめといた方がいいわよ?』
「なんで?」
『公民館の管理人のおっちゃん…キタカミにある施設とかも管理してるんだけどさ、ほら、ともっこが復活したときに祠がぶっ壊れちゃったじゃない?それを直そうとしてさ…』
伝承の真実が明かされ、ともっこたちは悪だった…ということが周知されたものの、長らく村人たちに愛された祠と像は悪くない…ということで修繕計画が立てられ、修繕費を募り始めたとのことなのだけれど…
『それが一口1万円からだって。おっちゃんに声かけたら大金せびられるわよ?』
「えぇ…?」
まぁさすがに子供には要求しないだろうけど…まぁポケモンバトルでそれなりに賞金は稼げてるし…機会があったら少し募金してみようかな?
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「さっき、パルデアとキタカミに共通点があるって言ったじゃない?」
『うん…それが?』
「もしかして…オーガポンってパルデアから来たのかもって思ってて」
伝承によれば、オーガポンは外の国から一人の人間とともにやってきたとされている。もちろん、キタカミから見て外国であれば、色んなところが候補になるけれど…そのヒントの一つになりうるのが、てらす池の底に沈む結晶だ。
「前に、コルサってジムリーダーさん…彫刻家でもある人なんだけど…その人にぽにこのお面を見せたら、テラピースがあしらわれてるって言ったんだ」
『テラピースって…テラスタルの破片のことよね?でもあれっててらす池の…』
「そう。あの水底の結晶がテラスタルの結晶だとしたら…伝承だと、あの結晶も昔外の国から持ち込まれたものって言われてるんでしょう?」
もし、テラス池の水底の結晶を持ち込んだ人物と、オーガポンとともにキタカミを訪れた人物が同じだとしたら…
『男は…それからぽにこも…パルデアから来たかも…って?』
「うん。だから今、パルデア中を廻りながら、ぽにこの仲間を探してるんだけど…」
多数のポケモンを図鑑に登録してきたけれど、未だオーガポンの同族につながりうる情報はない。コルサさんの推測では、パルデアの大穴…エリアゼロにならいる可能性もあるかもしれないらしいけど…
『エリアゼロねぇ。あんたもそこを目指してるって言ってたけど…行けそう?』
「そこでポケモンの研究をしている博士に、手伝いに来てほしいとは言われたんだけどね…」
『そうなの?やったじゃない!夢叶って!』
「いやまあそうなんだけど…」
かつてエリアゼロに行ったことがあるという親友が言うには、強力かつ凶暴なポケモンだけでなく、侵入者を阻む機械もたくさんあるらしい。一人で行くにはさすがに難しいから、仲間を募っていくことを考えている…とゼイユに言うと、はい!と大きな声で手を挙げた。
『あたし!あたし着いてく!』
「さすがに学校違ったら博士の口添えがあっても無理じゃないかな…?」
『だよねぇ…ってかパルデアリーグも攻略しなきゃなんでしょ?こっちはイッシュリーグで手いっぱいだわ』
冗談冗談。と手をひらひらさせてごまかすゼイユだった。
「まだ勧誘したわけじゃあないけど、パルデアリーグのチャンピオンランクのネモと…あとボタンって子がメカに強いらしいから、いろいろ用事が終わったら誘って…」
『ネモって…前に写真見せてもらった子よね』
急にゼイユの声が一オクターブさがって、背筋が寒くなる。
『あとボタンって誰?名前の響き的には女の子っぽいけど…』
「うん、女の子だけど…友達だよ?課外授業手伝ってて…」
『…ふぅん』
目を細めたゼイユがシャーペンをカチカチと鳴らし、やたら芯を伸ばしながら生返事。な、なんか怖いんですけど…
『やっぱついてこっかな…ブライア先生に相談してみよ』
頬を膨らませながら、ゼイユが呟いた。
-つづく-
そろそろ電話で会話するネタにも事欠いてきたんで、今後の番外編は別アプローチで書くかもです。もちろん思いつけばその都度。
冒頭のともっこお面ネタは単に自分が感じたネタからの拡張ですね。実際、鬼(というか碧の面)の面はほぼオリジナルに近いデザインなのに対し、やたらヒロイックなものでした。ともっこプラザに設置されていたともっこ像はほぼオリジナルの姿をしていたことを鑑みれば、あのアレンジは意図的でしょうしね。
ゲームの仕様上、残念ながらゼイユやスグリがエリアゼロに同行することはないんですが(そもそも後編が本編クリア前提)、できれば楽しいなぁ…とは思うんで、番外編で書けたらなぁと。もちろん後編クリア前提ですが。
本文中ではおいそれと行けないとしていますが、ゲームプレイヤー諸氏はご存じの通り、割と普通に行き来できますよね、キタカミ~パルデア間。前編終了後は半ばサザエさん時空と化していて林間学校中ですが(前回の番外編でも出した仲間たちもまだいる)、後編時空始まったらどうなるんでしょうねぇ?