炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【SS】菊地真バースデー記念【書いたッ!!】

「化粧品の…CMですかぁ!?」
 思わず素っ頓狂な声を出してしまった。

「ああ。ティーンコスメって言うのかな? 中高生向けのやつのね」
 はいこれ、と手渡された資料は、最近人気のブランドのティーンコスメだ。
 クラスメートの女の子達が話題にしていたのを憶えている。
 それにしても…
「なんでボクなんですかプロデューサー? 伊織とか、美希とか…もっと適任いると思うんですけど」
 そういう僕の頭を、プロデューサーはこつんと小突いた。
「そう自分を卑下するな。俺は、お前も充分魅力的だと思うぞ?」
 そういわれた途端、かぁっと顔が熱くなる。
「まぁ、楽しみにしてろ。…最高の一日にしてやる」
 不敵(?)に笑うプロデューサーに、ボク…菊地真は、不安と期待が入り混じった胸をきゅっと押さえつけた。



   Makoto's Birthday Short Story
   女の子のマホウ



 当日。
 スタジオに着くなり、控え室に連行されたボクを待っていたのは、何着ものきらびやかなドレスと、3人のスタイリストさんだった。
 最近よくお世話になってる人たちなんだけど…なんかボクをオモチャみたいにしてメイクしているふしがあって、実はちょっと苦手なんだよね。
 いや、悪い人たちじゃないんだけどさ。

「さぁ…覚悟はいいかな真ちゃ~ん♪」
 じりじりと笑顔で寄ってくる。…いや、お願いですからフツーに来てください、フツーに。

 ・
 ・
 ・

「ねぇ、やっぱ仮面ってつけるの?」
「いや、主役なんだから仮面付けてちゃわからないでしょーが」
「エクステどーしよ?」
「あー、付けてくれって言ってたよ。プロデューサーさんが」

 スタイリストさんたちがめまぐるしく動き、ボクはなすがままにされている。姿見が何故か置いてなくて、ボクが今どうなってるかは分からない。一番最初に着せられた水色のドレスが、違和感ありすぎでなんだか落ち着かない。
 というか、プロデューサーはボクに何させる気なんだ?
 ティーン向けコスメのCMって話は聞いたけど、どんな内容なのかを全然教えてくれなかったのだ。

「さ、でーきた!」
 スタイリストさんの声にはっとなる。ちょっとボーっとしてたみたい。
「ほら、立って立って。ちょっとー、姿見姿見っ」
 目の前に等身大の鏡が置かれ、ボクはようやく今の自分の姿を見る―――

「―――嘘」
 これが…ボク?
 鏡に映った人影は、確かに僕の顔をしてた。
 けれど、その姿はいつものボクとはあまりにも違いすぎて…
「うんうん、腕によりをかけただけのことはあるわね。我ながらパーペキ☆」
 ひとり腕を組んで納得するスタイリストさん。
 ボクは右腕を動かし、左手を広げ、くるりと回る。
 間違いない。今鏡に映ってるのは…このボクだ。
 エクステ…付け毛だっけ?…を付けた、いつもより長い髪。唇に薄くひかれたピンク色のルージュ。そして、ふんわりとしたドレスをまとうのは、始めてみる姿の“ボク”だった。

「さぁ、それじゃ早速おひろめといきましょー♪」
「ええ!? これ見せるんですかぁ?」
「あったりまえじゃない。そのためのものなんだし」
 うわぁ…めっちゃ恥ずかしいよぉ…
 そんなボクの想いをよそに、スタイリストさんたちが三人がかりでぐんぐんと引張っていく。
 やがて、スタジオの前に到着し、彼女達は力いっぱい入り口の扉を開けた。

「「「おっまたせしました~っ!」」」

 すこし丈の長いスカートと、気恥ずかしさが、ボクの歩く速度を緩やかにする。
 周囲からざわめきや溜息が聞こえる。ボ、ボク…そんなにヘンかなぁ…?
 うぅ…雪歩じゃないけど、穴掘って埋まりたいよぉ…

「やぁ、いいじゃないか。素晴らしいよ菊地クン」
 その声ではっと我に変える。監督がボクを見て満足げに頷いていた。
「これなら充分、主役として映えるよ。さぁ、それじゃあの舞台へ行ってくれ」
 監督が指差す方へ目を向ける。お城のホールみたいにキラキラした舞台装置に、仮面をつけたタキシードやドレス姿の男女が立っている。
「仮面…舞踏会?」
 監督に指示されるまま、ボクは舞台の中央に立つ。みんなが仮面をつけている中、一人だけ素顔のボクは、どこか浮いていて、やっぱり恥ずかしくて。
「おーい、菊地クンの相手役、まだなのかー!?」
 監督ががなりたてる。ほどなくして、仮面をつけたタキシード姿の男の人が小走りに舞台に向かってきた。
 ん…?
 仮面つけてるからよく分からないけど、誰かに似てるような…?

「よーし、それじゃ始めようか。菊地クン。ワルツは知ってるかな?」
「え? あ、は、はい」
 先週、ダンスレッスンの時に一緒に叩き込まれてたっけ。プロデューサー、用意周到だなァ。
「それじゃ、本番いきまーす!」
 って、ええ? いきなり本番!?
 ま、ままままだ、心の準備が…!


「よーい…スタート!」

 カチンコの合図とともに、ステージに音楽が流れる。周りのペアが手をつなぎ、緩やかに踊り始める。それは、現実離れしていて…ボクを呆然とさせるには充分だった。

「…お嬢さん」
 と、耳元で声をかけられる。はっとして振り向くと、ボクの相手役っていう男の人が手を差し出していた。
「俺と、踊っていただけますか?」
 どこかで聞いたような声だった気がしたけど、ボクは頷くのが精一杯で…
「よ、よろこんで…」
 と、その手を取った。触れる指に、思わずドギマギする。


  1.2.3… 1.2.3…

 ダンスレッスンで憶えたワルツのステップを思い出しながら、くるくると世界が回っているのを感じる。
 向かい合う男の人と何度も目が合い、そのたびに胸がドキドキする。


 …やがて、曲が終わり、ボクの体はゆっくりと動きを止めた。


「カーット!」
 監督の威勢のいい声が響き渡った瞬間、全身の力が抜け、ボクはその場にへたりこんでしまう。
「はっは。いやぁ、とっても良かったよ菊地クン。君のドキドキが、こっちにまで伝わってきた。君の目に狂いはなかったようだね、月臣クン」
 …え?
 監督がボクの隣に立つ男の人にそう声をかけた。…ちょっと待って。もしかしてこの人!?

「…恐縮です」
 頬をかきながら仮面を外したのは、間違いなくプロデューサーだった。


   * * *


「もう…プロデューサーも人が悪いんだからなぁ…」
 控え室でスポーツドリンクを飲みながら、ボクは呟いた。
「折角の日だからな。思い出に残るような一日にしたかったんだよ」
「え?」
「おいおい…自分の誕生日、忘れてないか?」
「あ…」
 そういえば。
 今日は8月29日…ボクの誕生日だ。
「プレゼント代わりに…って言うと、ちょっと安っぽいかもしれないけどさ」
 プロデューサーのその言葉を、ボクは全力で首を横に振ることで否定する。
「そんなことないです! すっごく楽しかったし、それに…」
 すっごくドキドキした。
 踊っている間、プロデューサーはすごく優しくボクを包んでくれてて…
 とっても“女の子”扱いしてくれているのが、ホントに嬉しかったんだ。
 …まぁ、期間限定かもしれないけどね。
 でも…できれば、もう一回くらいは…
「また、やるか?」
「え…ええ~っ!!?」
 まるで心を見透かされたようにプロデューサーにそう言われ、ボクは頭の中が真っ白になる。
 顔が熱くなって、クラクラしてくる。
「いやっ、その…あのカッコ……ボクにはちょっと…ごにょごにょ」
 荷が重いかな…なんて
「そうかなぁ。似合ってたぞ。最高に可愛かった」

  どっきーん☆

「あ…ぱ…ふ…?」
 あーもーっ。いま絶対耳まで赤くなってるよっ!
「魔法一つで、女のコってのは変わるもんさ」
 そんなボクの頭を、プロデューサーはぽんっと軽くなでた。
「俺は、真にいろんな魔法をかけて、いろんな真を、たくさんの人に見てもらいたいんだよ」
 プロデューサー…
「もちろん、最初に見るのはこの俺だけどな♪」
「なっ…」
 さらに顔が熱くなる。プロデューサー…恥ずかしいコト言い過ぎ!
「っもぉ! からかわないで下さいよプロデューサーっ!」
「ははは…」
 からからと笑うプロデューサーの頬も、ちょっぴり赤くなってた…ように見えたのは、ボクのうぬぼれなんだろうか。

「さあ、撮影はまだ残ってるぞ。さっくり終わらせちゃおう」
「はいっ!」
 ボクは勢いよく返事して、控え室を飛び出した。











「…ところでプロデューサー。ダンス上手なんですね。感心しちゃいました」
「なぁに。俺の37の技の一つに過ぎないよ」
「…何してる人なんですか、プロデューサー…;」




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 あとがき

 最近になって、真にまっこまこにされている俺、参上(何
 でもアケ版でも箱版でもいまだクリアしてなかったりする俺、再び参上(さらに何

 いやぁ、真は可愛いねぇ…(惚

 お約束的に真の女のコらしさをピックアップしてみようとしてみましたが…いかがでしたでしょうか?
 …結構前からプロットは出来てたんですが、上手く真のなけなしのフェロモン(ぉぃ)をかもし出すことが出来ているかどうか…やや心配(ぇ

 ちなみに、水色のドレスとロングヘアーのエクステ、ピンクのルージュは三種の神器だと勝手に認定しました。たった今(爆
 自身に絵心がないのが悔やまれる…誰か描いてくれません?(こらこら



 さて、9月はいよいよアイマス界の隠しヒロインと名高い(?)小鳥さんですよ~
 プロット、誠意製作…できてません(ぉ