炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ディケイドSS】-MASKER WARS-<前編>【プレエピソード】

「報告! ライオトルーパー大隊3千余名のバイタルサイン、途絶!」

デンライナー及びキングライナーの一斉砲撃、全弾命中! ですが目標無傷です!」

「タイガより通達。クリスタルベントによる足止めは効果アリ、ただし短時間のみとのこと!」

 刻一刻と進行する戦況。あらゆる場所から飛ぶ報告と怒号、そして断末魔。

「……いよいよ、正念場、か」

 紅い瞳の仮面ライダーが、ぽつりと呟いた。



   仮面ライダーディケイド/A.R.WORLD STORY
   EPISODE:DECADE-MASKER WARS-



 ―――それは、唐突に始まった。

 <ディケイド>と、のちに呼ばれる<仮面ライダー>が、“世界”に対し破壊活動を始めたのだ。
 その理由は、今をもって不明。

 少なくとも、怒りでも憎しみでもない。
 あえて言うのであれば、破壊したいから破壊する。

 淡々と破壊を繰り広げるその姿から、識者はそう判断せざるを得なかったらしい。


 しかし、世界とて黙って崩壊を待ちはしなかった。

 ディケイドを倒すべく、世界は<仮面ライダー>を望んだのだ。

 最初は、一人。それで足りねば、二人、三人……

 いまや、両の手ですらとうに数え切れぬほどの<仮面ライダー>が世界にいる。
 たった一人、世界の破壊者たる、ディケイドを倒すためだけに。

 あるいは、純粋な力を以って。
 あるいは、綿密な技を以って。
 あるいは、類稀な速さを以って。

 が、それでもなお、ディケイドの力は強大であった。

 “世界”は知る善しも無かった。<ディケイド>は全てのライダーの力を内包していることを。
 ライダーが増えれば増えるほど、それに呼応して、またディケイドも強くなったのだ。

 ……果たして、いつしか<ライダー大戦>と銘打たれた戦いは、間も無く10年の月日が巡ろうとしていた―――


   *


「……どうした?」

 夜。ひとり空を見上げる<仮面ライダークウガ>に、<仮面ライダーアギト>が声をかける。

「星を、見ていた」
「…そうか」
 しばし、沈黙が二人を包む。
「…さっきのお前の演説、なかなかだったぞ」
「よしてくれ。ガラじゃないって思ってるんだ」
 アギトの言葉に、クウガが仮面の向こう側で微苦笑する。
「まぁ、お前は俺たちのリーダーだからな。最後の戦いの音頭は、やっぱりお前がとらなきゃさ」

 最後の、戦い。

 先刻、クウガは仲間のライダーを集め、最終決戦の発動を唱えた。
 全てのライダーの、すべての力を集約し、ディケイドを倒すために。
 クウガの強い思いが、ライダーたちに伝わり、しばし本陣は勝利を願う戦士たちの雄叫びに燃え震えた。

「……なぁ、―――」
 ふと、アギトが名を呼ぶ。クウガの、もうひとつの名を。
「……その名前で呼ばれるのも、随分と久しぶりだな」
「あ、済まん。つい、な」
「構わんさ。…今日という日に、仮面を脱ぐのも悪くは無い。だろう?」
 クウガが、“変身”を解く。アギトもそれに倣った。

「…お前、死ぬ気だろう?」
 アギトの言葉に、クウガの肩が一瞬、ぴくっとなる。
「……そりゃ、最終決戦だからな。死は覚悟してるさ」
「そう言う意味じゃない」
 茶化すように言うクウガを、アギトが咎める。

「……やっぱり、解るか。お前には」
 僅かな沈黙の後、クウガがゆっくりと口を開いた。
「お前と一番付き合いが長いのは、俺だからな」
 アギトの声が、少し穏やかになる。まるで親友に語りかけるそれのように。
「……この戦い」
 クウガが一度言葉を区切り、意を決して再び言葉を紡ぐ。
「すべての力を以ってしても、ディケイドを倒せないときがあれば……俺は、“闇の力”を解き放つ」
「!?」
 絶句するアギト。
「もう決めたんだ」
「だが! それは、ディケイドと同じ呪われた力だ! 自分で言っていたじゃないか、これは世界を滅ぼす力だって!」

 この“世界”における、原初のライダーとして生まれたクウガには、ディケイドと同質ともいえる、強大にして凶悪な力が備わっていた。
 “凄まじき戦士”“究極の闇”と称されたそれは、先にアギトが言ったとおり、世界を滅ぼしかねない力を有していた。

「……いまやディケイドは、俺たち仮面ライダーの全ての要素を持っている。いわば、ヤツはこの世界の移し身ともいえる存在だ。世界そのものと言ったっていい。……そんなやつに対抗するには、もはや手段なんて選んじゃいられないんだ」

 言っただろう? すべての力を使うと。
 それは、この力だって例外じゃない。

 クウガは、淡々と言った。

「……本気、なんだな」
「……ああ」

 二人の瞳が、互いを見つめる。

「わかった」
 やがて、アギトが溜息交じりに呟く。
「なら俺たちは、お前がその力を使わないように、とっととディケイドを倒すことにするさ」
「…ははっ、大きく出たな」
「ふふっ、俺たちは<仮面ライダー>だからな」
 二人は、声を出して笑いあう。

「―――」
 クウガが、アギトを名前で呼ぶ。
「うん?」
「勝とう」
「……おお」

 素顔の戦士が、互いの拳を打ちつけ合った。


  -つづく-


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 というわけで(?)予告どおり今回はディケイド編…というよりは、本編に繋がるプレ・エピソード。
 正直な話、ライダー大戦の世界とかを本編でやるんじゃないかなとか、内心ひやひやものなんですが。浮かんだんだからしょーがない。と言い訳してみる(何

 脳内でプロット組んで、イケるかな?と思って書いたら思いのほか長くなったので、今回は前後編で。
 ライダー大戦の本番は後編でやりまっせ。