炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ディケイドSS】-MASKER WARS-<後編>【プレエピソード】

 ―――戦いが、始まった。

 時の列車が、竜の天守閣が宙を走る。その上に立つ幾人かの<ライダー>が、強力な重火器を装備して<悪魔>を狙い、それらを援護するように、飛べる<ライダー>たちがミラーモンスターらを伴い空を陣取る。
 地上では、ライオトルーパーを中心としたバイク部隊が荒野を駆け、<ブレイド>をリーダーとした剣撃部隊、<ファイズ>率いる銃撃部隊が合間を縫って進撃する。

 序盤から出し惜しみせず、全力全開の攻撃が、次々とディケイドに浴びせられる。
 が、そのピンク色の装甲は傷一つつかず、打ち返される銃弾に、ひとり、またひとりと倒れていく。

「怯むな! 倒れても立ち上がれ! 死ぬまでは負けじゃないンだ!!!」
 <キバ>の励ましが、爆音でかき消される。

「うおおおおおおおおっ!!!」
 と、数台のジェットスライガーが、搭乗者もろともディケイドに突っ込み、爆ぜた。
「バカ! 全力を尽くせとは言ったが、命を粗末にしろって誰が言った!!!」
 クウガの慟哭がむなしく響いた。


   *


 それは、1時間にも満たなかった。
 ディケイドの反撃は、淡々と繰り広げられ……あっという間に、全ての仲間達が地に倒れ伏したのだ。

 今、ここに立つ人間がいるなら、その光景をこう表現したであろう。

 <地獄>と。

「う……」
 クウガの意識が、僅かに戻る。紅い瞳が捉えるのは、仲間の骸のみだ。
「…!」
 倒れたアギトの姿を見つける。大いなる光を宿した彼でさえ、ディケイドには敵わなかったというのか。クウガの心に絶望が宿る。
(やはり……)
 腹に力を込め、立ち上がる。
(あの力を…使うしか…)

「待て……!」

 立ち去りかけていたディケイドが、クウガの声に立ち止まり、振り返る。

(…もってくれ、俺の心…)
 祈るように呟き、ベルトに手をかざす。
「はぁぁぁ…」
 霊石・アマダムから電撃が迸る。その姿が、黒を基調とした禍々しい鎧姿へと変わっていく。“究極の闇”アルティメットフォームの発現だ。
「…っは!」
 傍に倒れていたキバの手から剣…ザンバットソードを借りると、それは手の中で漆黒の大剣…アルティメットタイタンソードへと変わる。
(俺の心が…まだ残っているうちに…!)
 咆哮とともに、剣を振り下ろす。しかし、それはディケイドに片腕で止められ、苦も無く折られてしまった。
「何!?」
 怯んだ隙をついて、ディケイドの蹴りがクウガの腹を直撃し、その身体を吹き飛ばす。激痛が走り、アマダムに僅かに亀裂が入った。
「くっそぉ…」
 周囲に目をやる。散らばっていたデンガッシャーを拾い、ロッドモードに組み替える。次の瞬間、それは杓杖・アルティメットドラゴンロッドへと転じた。地面に突き刺さっていたレンゲルラウザーを抜き、もう一本ドラゴンロッドを生み出すと、クウガは再びディケイドに肉迫する。
「はっ、そりゃあっ!」
 時に剣のように、時に槍のように、薙ぎ、衝く。
「そこだぁっ!」
 僅かに見せた隙を逃さず、ロッドを投擲する。一本は阻まれたが、二本目はディケイドの腹を貫き、動きを止めさせた。
「ふっ!」
 一度間合いを取り直し、転がっていたカイザブレイガンとカブトクナイガンを拾い上げたクウガは、それを二挺のアルティメットペガサスボウガンへ変える。
(ぐっっ…)
 クウガの心が、鎧と同様に黒く塗りつぶされていくのを感じる。
「まだだ…まだ、もってくれ……!」
 苦痛に声を震わせながら、ペガサスボウガンを乱射する。闇の力を伴った圧縮空気の弾丸が、ディケイドの装甲を削る。
「おおおおおおおおおっ!!!」
 その弾丸が、ディケイドに突き刺さったままのロッドに当たり、飽和したエネルギーが膨張し、爆発を引き起こした。
「くあっ!?」
 猛烈な爆風が、周りのライダーの骸を吹き飛ばす。やがて収まった土煙の向こうを視たクウガは、絶句した。
「…バカ、な」

 ディケイドは、未だ健在であった。


   *


(……どう、する?)
 クウガは戦慄した。
 己が究極の力を以ってしてさえ、ディケイドには届かないと言うのか。
 そして、そう考える自身の心が、少しずつ蝕まれている事実にも。
 このままでは、ディケイドと自分自身が世界の破壊者となってしまう。

 …否、真に恐れるべきは……

「……やるしか、ないのか」
 クウガが、覚悟を決める。

「…ディケイド!」
 相手の名を叫び、右腕に渾身の力を込める。ディケイドも、それに倣うかのように右腕にエネルギーを集中させた。

(…もはや、この“世界”の崩壊は避けられないだろう)

(なら、どうすればいい?)

(次に生まれるであろう“新たな世界”の為に、俺は…<仮面ライダー>はなにができる?)

 消え逝こうとしている心の片隅で、クウガは必死に自問自答を繰り返す。

(ディケイドは、世界のすべての力を持っている。世界そのものだ。いまの世界が崩壊しても、次の世界に、再び破壊者として蘇るかもしれない)

 …それは、避けなければならない。

(こんな悲劇を被るのは、俺たちだけで充分だ…!)

 ならば、自分に出来ることはただ一つ。

(刺し違えてでも、ディケイドを倒す! …いや)

 たとえ、倒せないとしても。

(ディケイドが、“破壊者”でなくなりさえすれば、それでいい)

 勝つ事だけが、勝利ではない。

 “世界”に平和をもたらせれば、それは勝利なのだ。

 たとえ、今の“世界”を救えないとしても。

 それでも、彼らは戦うのだ。

 それが、<仮面ライダー>なのだから。


「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 クウガの叫びがこだまする。拳に集まった力が真紅の炎を呼び、滅び行く世界を示す篝火のように輝く。




 クウガとディケイドの拳が交錯して―――






 “世界”は、暗転する。



   * * *









 ・
 ・
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「…え? ここは写真館か、ですって? ええそうですよ。まさか喫茶店かなにかだと思ってたんですか? …って、ちょっと、勝手に奥入っていかないで下さいよ。え?気に入った? それはどうも、ありがとうございま……
 はぁ? 気に入ったからここで働いてやる? 写真を撮ればいいんだろ?って……いや、ちょっと! あなたなんなんですか!? いきなり来て…え? 門矢士? それがあなたの名前……あ、こら! お店のものに勝手に触らないで下さいっ! ちょ、ちょっとおじいちゃん! おじいちゃんってば!」



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 <全てのライダーを継ぐ者>仮面ライダーディケイド
 新たに生まれた“世界”で、その瞳に映すものとは……

 てな感じで、テレビシリーズに続いていく…と。

 …いや、ホントに本編でライダー大戦の世界に行かないことを願うばかりです(滝汗

 正直、ありえない話じゃ無さそうなので急いで書き上げた感がw(ぉ


 そういえば、今週からOPナレが変わりましたな。
 まぁ、9つで終わらなかったからってことですが。次回は1週お休みしてディエンド・海東の出身世界が舞台のエピソード。はたして、士の瞳は何を見るのやら…