炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

Before GREEN/シーン3

 コンソールの下で配管の手直しをしていたドンが、突っ込んでいた頭をようやく戻し、ふぅ、

とため息をついた。

「順調みてえだな」
「!?」

 背後からのふてぶてしい声に驚いて振り向く。不敵な笑みを浮かべた男がそこにいた。

「おまえ……」
「おまえじゃねえ。マーベラスだ」
「そうじゃなくて! ロックしたはずなのになんで……」

 ドンの問いに、マーベラスが懐から携帯端末……<モバイレーツ>を掲げてみせる。

「こいつの船長は俺だ。ロックぐらい、俺の権限でどーにでもなる」
「あ……」

 そういう仕様であることに気づき、ドンが言葉を詰まらせる。

「で、あとどんくらいで直るんだ?」
「……そんなに時間はかかんないよ。動かすだけならあと1時間もいらない」

 ふて腐れたようにマーベラスから視線を外し、作業に戻る。

「でもオーバーホールはそれからだから、丸二日……いや、一日くらいはもらうけどね」
「他の連中には手伝わせねえのか? そのほうが早く済むだろ」

 コミューン・グランデには無数のクルー……船大工がいる。しかしドンは、その誰一人に力を借りることなく、ここまでの修理をやりきっていた。

「この船、ちょっと特殊でね。修理はともかくだけど、オーバーホールは僕じゃないと無理なんだ」
「不便なもんだな。普通船のメンテってな、乗組員でもやりやすいのが基本だろうが」

 まぁね……と、ドンが語尾を濁す。

「……本当はさ、僕もこの艦に乗りたかったんだ」

 コンソールのフタを閉じたドンが、エアロックの向こうに見えるだろう宇宙を視線の先に結びながら呟く。

「ドクから聞いたんでしょ? 僕がここの生まれじゃないってこと。僕の夢は、自分の作った宇宙船で、自分の故郷を見つける旅に出ることなんだ」
「じゃあ……」

 行きゃいいじゃねえか、と返すマーベラスに、ドンは自嘲する様に笑ってみせる。

「……勇気が無かったんだ。そりゃ、僕の作ったこいつは完璧だよ? でも……独りで宇宙に出るのは、怖かったんだ。それにね……うわっ!?」

 言葉を続けかけたドンを、大きなゆれが遮った。

「な、何!?」

 慌ててガレオンのコンソールを叩くドン。コミューン・グランデのメインモニターに繋ぐと、

周辺宙域を覆いつくすように、無数の艦が隊を成していた。

「ザンギャックの艦隊? なんでこんなところに!? しかもこっちを攻撃するなんて!!」

 “ありえないはず”の宇宙帝国の攻撃に驚くドンの襟首が、急に引っ張られる。

「下がってろ。……今度はお前が出てく番だ」
「ちょっ……何する気!?」

 問いかけを無視して、マーベラスはドンをガレオンから文字通りつまみ出した。

「まさかあいつらと戦う気?! 無茶だ! まだ修理だって万全じゃないし、“ガレオンだけ”じゃああの物量を押し切れない!!!」
「そいつを決めるのはお前じゃねえ。……まあ見てな。海賊のやり方ってやつをよ」

 そう言い残し、マーベラスが踵を返す。閉まるハッチの隙間から覗いたその横顔は……

 ――不敵な笑みを浮かべていた。



   -つづく-




 次回のゴーカイがひょっとしたらハカセの過去エピ絡みそうなので慌てて続き。
 いくらアンオフィシャルとはいえ、公式に過去エピだされてしまうと書くにかけなくなっちゃうのさ…orz

 とりあえず現時点でのストーリー構想だとあと3シーン分くらいいるんだよなー。死ぬ気で書かないと死ぬ(謎