――宇宙。
無限の広さと輝きを秘めた……神秘の世界。
若者たちは……いや、若者に限った話ではないが……夢や望み、そしてロマンを求めるものは、我先とこの漆黒の大海原へ繰り出してゆく。
<ゴーカイガレオン>と銘打たれたその紅い帆船もまた、そんな冒険者たちの居城のひとつであった。
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「……ふふっ、コレで名実ともに海賊の仲間入りね、アイム」
「そうですね……なんだか嬉しいです」
自らの顔写真と、その下に記された金額……50万ザギン。賞金首となった自らを省みて、<アイム>と呼ばれた少女は、漸く自分が<仲間>に入れたと自覚して破顔した。
「しかもハカセよか高いわよー。すごいすごい」
「……いちいち僕を引き合いに出さないでよ、ルカ」
焼きたてのローストチキンを運びながら、<ハカセ>なる――<ドン・ドッゴイヤー>という本名があるが、ここは仲間に倣い渾名で記そう――青年が口を尖らせる。反論を「うっさい」と一蹴したもうひとりの女海賊……<ルカ>はテーブルに置かれた瞬間の肉を早業で掠め取っていった。
「あーもう、つまみ食い禁止ー! それ最後の肉なんだからさぁ」
「もう食料切れか。そろそろどこかの星で補給しておかないとな、マーベラス」
日課の腹筋を終えたばかりの長髪の青年……<ジョー>が、サロン中央の椅子にどっかりと座り込んだ“船長”に声をかける。一呼吸置いて「おう」という生返事だけが戻ってきた。
「っていうか、今あたしらどこに向かってンの?」
「<地球>とかいう星に行くんじゃなかったっけ?」
ルカとハカセからの問いかけに「まだ足りねえんだよ」と呟きながら船長こと<キャプテン・マーベラス>がローストチキンの半分を一息に頬張る。その視線がちらり、と小さな宝箱へと向かい、4人もそれに倣った。海賊の持つ調度品にしては妙に小ぶりなその宝箱には、彼らの目的……<宇宙最大のお宝>へと導く、文字通りの“鍵”が入っている。
<レンジャーキー>と呼ばれるそれは、かつて地球を守ったとされる34の<スーパー戦隊>の姿を象ったものだ。しかし、象っているのはカタチだけではない――
「随分集めたものだと思ったんだがな」
「いや、これでもようやく半分ってとこだ」
そう言って宝箱をあけ、おもむろに手を突っ込む。指先に摘まれたレンジャーキーは、紅い戦士の形をしている。
「レンジャーキーってのは、だいたい5本で一組だ。だがこいつは、“まだ1本しかない”」
多少の例外は存在するものの、形状やそれに秘められた“力”によってグループに分けられるレンジャーキーであったが、現在手の内にある80本余りの中で、その括りが弱いものも多々ある。
マーベラスが手にするそれも、そのうちの1本だ。
「……うん?」
と、マーベラスの表情が怪訝に曇る。手の中の紅いレンジャーキーがほのかに光を発し始めたのだ。
「何なに? それもレンジャーキーの力なの?」
「んー? 呼んだー? っていうかナビィって呼んでよって何度もガッ」
止まり木で惰眠をむさぼっていたオウム型のロボットが、間延びした声でそれに応える。マーベラスはレンジャーキーをその口に突っ込み、「占いの時間だぜ」と笑みを浮かべた。
「むぐぐ……へっふ・おふぁふぁらなひへーほー」
本人(本鳥?)は「レッツ・お宝ナビゲート」と言っているつもりの声が、咥えたレンジャーキーに阻まれる。鳥型ロボット<ナビィ>のお宝ナビゲートは、彼らの本懐である「宇宙最大のお宝」に通じる道しるべになりうるものだ。
「ふうむ……“星の獣のふるさとで汝らを待つ……”だってさー」
……もっとも、精度はともかく内容が難解すぎるのが玉に瑕、であるが。
「星の、獣……?」
「ナビィ、方角は判るか?」
「もちのロン! この<レンジャーキー>が教えてくれてるよ~」
あっち! と翼で指した先へ衝角の切っ先を向け、ゴーカイガレオンが加速する。
「そんじゃ、腹ごなしに宝探しといくか」
「……いや、僕たちまだ食べてないんだけど」
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――冒険とロマンを求めて、宇宙の大海原を行く若者たちがいた。
宇宙帝国ザンギャックに反旗を翻し、海賊の汚名を誇りとして名乗る豪快な奴ら。
その名は……!
海賊戦隊ゴーカイジャー/BEGINS
EPISODE:BARBUN/VERSUS SPACE PIRATE
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時を同じくして、ゴーカイジャーと同じ目的地を目指す“海賊たち”の姿があった。
「……あれ、か」
漆黒の宇宙空間で、なお光の届かない暗礁宙域。
ともすれば巨大なスペースデブリと見間違いかねないほどに損傷の目立つその船より、低い声が小さく呟いた。
「間違いないようだ。そして……おそらくはあれが、奴らの星だろうよ」
奴ら。その単語に秘められた憎悪という感情が、ぞわり、と船内の空気を濁らせる。
「いくぞ、野郎ども」
薄暗い船内で、4つの人影が揺らぎ、闇へ溶け込んだ。
……冷たくも鋭い眼光を、一瞬閃かせて。
-つづく-
それは、勇気あるもののみに許された、銀河の大海原を往く宇宙海賊たちの称号であるッ!(若本ボイスで
色々お待たせいたしました(ぇ
予告編から1年近くたってましたよ。ははははは(乾
さて、今回のお話はゴーカイジャーがまだ地球に来る前。時系列的には、冒頭のシーンからアイム加入直後あたりということで。
一話と最終話でがらっと変わった、彼らの心象をうまーく再現できればなぁ、と。
再現といえば。
今回は前日談なので、しっかり豪快チェンジできますよー♪
とはいえ、作劇の都合上レンジャーキーが本編より少ないのでどうしようかなーってところですが。
ともあれ、幕は開きました。
そんじゃまいっちょ……派手に行くぜっ!
※初出:mixi日記・2014.4.16