炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

VERSUS SPACE PIRATE/シーン1


 目的地へと帆を掲げ、順調に進んでいた航海は、突如降って沸いた大量の砲弾によって破られた。 

「のわ~っ! いきなり攻撃!? メーデーメーデー! 叫び声が響くよ~っ!!?」 

 なんか前も似たようなこと言った気がする~!? などと珍妙な叫び声をあげながら、振動に転がりまわるナビィ。 
 それを蹴飛ばしながら操舵輪を握り、マーベラスが吼える。 

「左舷ガレオン砲……っ撃てーッ!」 

 反撃に転じるゴーカイガレオンの砲撃を、しかしそれよりはるかに巨大な艦は、まるで生き物であるかのように躱し、撃ち返す。 

「損傷率増大! や、やばいよマーベラス!?」 

 サブモニターでコンディションを確認するハカセが悲痛な声を上げ、その胸板を「うっさい!」とルカが肘で小突く。 

マーベラス、俺たちも出るぞ!」 
「いや、無理だ」 

 ゴーカイオーでなら……と言うジョーに否定を返し、マーベラスがサブモニターを顎でしゃくる。

「次元圧縮ハッチがやられちゃってるんだ。ゴーカイマシンは発進できない!」 
「そんな……!?」 

 マーベラスの代わりに解説したハカセに、アイムが言葉を失う。 

「わっわっ、近づいてくるよ! みんな、ショックに備えて!!」 

 ナビィの言葉が届くや否や、被弾の比にならない強烈な衝撃が船体を大きく揺らした。やがてサロンの入り口がこじ開けられ、四つの人影が姿を見せる。 

「ほう……悪くねえ艦だなァ」 
「お宝の匂いは、あんまりしていませんけど」 
「そんな俗な連中ではあるまいに……」 
「なんでもいいさ。これからぶっ壊すことに変わりはねえ」 

 一目見て異星人とわかる容姿。そのシルエットからにじみ出る、禍々しいオーラに、マーベラスは銃を突きつけた。 

「てめえら……誰に断って俺らの艦に土足で入ってやがる?」 
「奪いに来るのに断りがいるか? それが海賊ってモンだろうよ?」 

 4人のまとめ役らしい男が肩をすくめてみせる。そのおどけた口調に、後ろの連中が低く笑った。 

「あのジョリー・ロジャーには見覚えがあるな。伝説の宇宙海賊……確か、その名は……」 
「ご明察。我らは<バルバン>。宇宙中にその名轟かせた宇宙海賊で御座る」 

 侍風の男が告げた銘は、マーベラスたちも知っていた。星の穢れ、淀みから生まれし“魔獣”を艦に幾多の星を、滅ぼし奪い取ってきたという荒くれ者たち。しかし…… 

「でも、確かバルバンって、三千年以上も前に消息を絶ったって聞いたぞ!? に、ニセモノだろお前ら!」 
「てめぇがそう思うンならそうかもな? てめぇの中ではよ?」 
「私たちはその生き残り……という表現は、あまり好かないけれどね」 

 伝説の宇宙海賊、その残党を名乗る彼らは、嘗めるように船内を見渡す。 

「さて……おしゃべりしに来たんじゃねえんだ。単刀直入に聞く」 

  ギンガマンのレンジャーキーは、どこだ? 

 銃を突きつけ、男が睨む。 

ギンガマン? ……知らねえな」 
「たいしたタマだ……この状況下でしらばっくれるとはな。隠すとためにならねえぞ?」 
「隠すも何も……俺たちゃどれがギンガマンなのか、わかんなくてな」 

 しれっと返すマーベラスが、レンジャーキーをひょいと摘み上げる。 

「なら教えてやるよ……てめえが今持ってるそれがそうだよ!」 

 寄越せ! と飛びつく男に背を向け、懐に忍ばせた携帯電話……モバイレーツにレンジャーキーを差し込む。 

「豪快チェンジ!」 


  -GI――――――――NGA-MAN!- 


 マーベラスの身体が炎の如き真紅の衣に包まれる。それは、彼らが最も忌むべき戦士の姿。 

「“炎のたてがみ”ッ!」 

 レンジャーキーに意識を向けていた4人に、不意打ちとばかりに火炎を浴びせる。怯んだ刹那、ジョーたち4人が一斉にゴーカイガンを撃ち放ち、その圧力で残党どもを追い出す。 

ハカセ、緊急離脱だ! 全力でブースター噴かせろ!」 
「わかった! みんな、何かに掴まって!」 

 ハカセがコンソールの裏に隠した緊急発進ボタンを殴りつける。急激な加速に伴い、船内に生じた強烈なGが、体制を崩した残党どもをガレオンから振り落とした。 

「ぐぐ……ッ」 

 操舵輪にしがみつきながら、マーベラスはメインモニターの航海図を凝視する。ナヴィの占いから推測した目的地……5つの惑星が連なる神秘の星系はすぐそこであった。 

「お前ら……ガレオンから脱出しろ!」 
「何?」 

 マーベラスの発言に、ジョーが目を見開く。 

「こいつはこのまま不時着させる……お前らはこっから出て、あの星を目指せ!」 
「そんな! 無茶だよ! 第一、マシンも使えないのに大気圏に突入なんてできないでしょ?」 

 もっともなハカセの指摘に、マーベラスがレンジャーキーの入った宝箱から4本を抜き出し、仲間たちに投げ渡す。 

「そいつを使え。たぶん大丈夫だ……」 
「たぶんって……確証はあんの?」 

 ルカの問いに、マーベラスは不敵に口角を持ち上げる。 

「……海賊の勘だ」 
「わかった……いくぞ、みんな」 

 その言葉を聴いて、ジョーがレンジャーキーを握り立ち上がる。 

「ちょっ……ジョー、あんた正気!?」 

 ルカが食ってかかるが、ジョーは当然だ、と頷く。 

「こいつの勘は、こういう時は割と当たるんだ」 

 メンバーの中では一番付き合いの長い彼の言葉と、船長への信頼に、ルカたちもしばしの逡巡の後、それに賭けようと頷いた。 


   -Fa―――――――IVE-MAN!- 


 <地球戦隊ファイブマン>の姿を借りた4人が、マーベラスに視線を向けた。船長は小さく頷き、「行け!」と叫ぶ。 

「ファイブテクター!」 

 ファイブマン特有の追加装甲を纏い、海賊たちが宇宙へと躍り出る。 

マーベラス……」 

 死ぬなよ、とは言わない。 
 それは無用な言葉だと、ジョーは知っている。 
 だから信じて、彼は飛んだ。 

 青い光球に身を包み、漆黒の宇宙に消えた仲間を視界の端で見送り、マーベラスは操舵輪を握りなおす。 

「トリ、しっかり掴まってろ!」 
「掴まる手がないけどねー!」 

 マーベラスの襟首にくちばしでしがみつきながら、ナビィが叫ぶ。 

「目標! ギンガ星系・惑星“ガレオン”。行けええええええッ!!!」 

 渾身の力を込めて、操舵輪を回す。ゴーカイガレオンの紅い船体が、大気との摩擦でさらに深紅に染まった。 


   -つづく- 



 

 どうしよ、ナビィにメタ発言させるのがすごい楽しい(挨拶 

 そんなわけで、いろいろ整いましたのでいよいよシリーズ本格スタートと相成りました。 

 宇宙海賊同士による、とんでもねえ戦争ってヤツをよぉっ!(CV:焼け野原ひろし 

 さて、のっけからファイブテクターで大気圏突入させようとか、ガレオン星を初めとする星獣の出身星に勝手に星系名をつけてたりしていますが 

 二 次 設 定 で す の で 

 平に、平にご容赦ください(土下寝 

 まぁ、後者はともかく前者はねぇ……南斗人間砲弾をガチでやれる装備だし……大気圏くらいは突入できると思うよ? 必殺技ぶっぱする際の光球モードになれば。 


 ところで。 
 今回の、文字通りにキーアイテムであるギンガマンのレンジャーキー。 
 これって、考えてみれば歴代戦隊でも屈指のエネルギーを内包している気がするんですが。 
 や、だって。 

  ギ ン ガ の 光 を 抱 え て ま す よ コ レ 、確 実 に。 

 最終話でパワーアップ形態への豪快チェンジもしてましたので、恐らくはギンガマンも獣装光を豪快チェンジできるはずですしね。 
 それを考えればさもありなん、と。 

 そりゃ連中も欲しがるわー。 


 さて。 
 次回はバルバン側をちょろっと描きまして、いよいよ宇宙海賊大戦が幕を開けます。 
 星獣たちのふるさとで、宇宙海賊の修羅場が見れるぜ!(ぇ

※初出:mixi日記・2014.6.13