炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

VERSUS SPACE PIRATE/シーン2


「クソッ! あの海賊ども、味な真似ェしやがる……」

 宇宙空間に放り出されたバルバン残党たちが、拠点にたどり着く。彼らの要塞艦のサロン……通称・豪傑無双砦に集まった彼らは、宇宙塵に塗れた身体を軽く払い、歯噛みした。

「奴らとて某らと同じ宇宙海賊。したたかだからこそ生き延びてきたのだろうよ。今回は某ら……と言うより、わぬしの油断が敗因よ……<ダイバー>」
「うるせぇ!」

 ダイバーと呼ばれた、地球で言う革ジャン姿のような異星人が苛立ちをトリガーにぶつける。飛び交う銃弾を、ダイバーに指摘した侍風の異星人が苦もなく切り払い、厳ついいでたちの大男は手に持った斧と楯で防ぎ、妖しげな雰囲気を纏った女は、その大男の陰に隠れて難を逃れる。

「まったく、堪え性のねえ自称リーダー様だぜ」
「ほんとよねぇ」

 呟いた大男と女に、ダイバーが睨みを聞かせる。「おーこわ」と大男が肩をすくめた。

「まぁいい……おい<カイラギ>、“羅針盤”の様子はどうだ?」
「相変わらずで御座る。ギンガ星系の惑星の全てを等しく指して安定しておらぬ」

 カイラギなる侍が取り出した大きなコンパスは、砦のブリッジから見渡せるギンガ星系の五つの惑星すべてを常にゆらゆらと指し示していた。その針先は、どんな原理か不明ながら、ギンガマンのレンジャーキーのありかを指しているのだという。

「まぁ、順当にそれぞれの星に1個ずつ……ってとこか?」
「でしょうねえ。ギンガレッドのレンジャーキーは船ごとあの赤い星に落ちたみたいだし、それ以外は……」

 大男こと、<シーバク>が針先を怪訝に睨み、女……<ヨルド>がおさらいと言わんばかりに解説する。

「よし、じゃあ俺らでとっとと星に乗り込んでレンジャーキーを奪い取るとしようぜ?」
「それについては賛成だが……某は単独行動をとらせてもらおう」

 言うが早いか、カイラギが砦を出て上陸用の小型艇に飛び乗る。

「おい勝手に……!」
「悪いが俺らも勝手させてもらうぜ。一緒に行動するのも時間の無駄だろ?」
「まぁ、私たちは互いに指図されるの嫌いだものね? そうね……早い者勝ちで、一番多くレンジャーキー奪えたらあの海賊どものお宝総取りとかどうかしら?」
「相変わらずの業突く張りめ……」
「あら、乗らないの?」
「いや、乗ったぜ」

 シーバクとヨルドが軽口を叩き合いながら、それぞれに小型艇に向かう。一人残されたダイバーがフン、と鼻を鳴らし、操舵輪を握った。

「まぁいいさ。最終的に目的が果たせりゃ……そうだろ? リーダー……」

 ホルスターのショットガン越しに、憧れの男に思いを馳せ、ダイバーが要塞艦に鞭を入れる。

「行くぜ……<魔獣要塞ブライダニック>、発進ッ!!!」

 巨大な魔獣の艦が雄たけびを上げ、ギンガ星系ごと飲み込まんとばかりにその大きな口を開いた。


   -つづく-





 魔獣要塞ブライダニックの元ネタは、ダイタニクスの元ネタになったタイタニック号の姉妹船であるブリタニック号。

 ちなみに、ブリタニック号は同名の船が全部で3隻存在し、タイタニック号およびオリンピック号の姉妹船になるのは、2代目のブリタニック号とのこと。

 以上、本編には何の関係もない豆知識であるッ!


 さてさて。
 今回本格的に喋らせているオリジナル敵キャラクター・バルバン残党軍。

 彼らの創造者は私ではなく、マイミクのレオ氏。
 そもそも、氏が考案したバルバン残党軍を出すのが目的で私にこの作品を書かせるべく白羽の矢が立ったのですw(ぇ

 本格的なキャラクター描写は今回が初めてですが、彼女好みのシロモノになれているだろうか、ちょいと不安で御座いますが、ひとまずはこれを、氏への誕生日プレゼントとさせていただきましょう。

 レオさん、誕生日おめでとう!(6/15)