回復したマイコを伴って、赤の旧市街を回る。
本当は一日休みにしても良かったのだが、彼女から「家賃払えなくなっちゃいますよ?」と諭されてしまった。
金にうるさい我らが館の主の方針により、家賃は日払いとなっている。現状廃墟探索でしか金銭を稼げない僕たちにとって、潜れないのは即死活問題に直結するのだ。
さしあたりの目標に、サークルの確保を掲げ、危なげなく潰していく。ローナや賞金稼ぎ連中から得た情報を集約するに、このサークルを全て潰さない限り、デモンは現れないのだ。
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「...おや?」
サークル探索の最中、マイコが一冊の本を拾った。
赤の旧市街は、実のところその全てが燃え続けているわけではなく、一部は鎮火...どころか水びたしになっているような箇所もある。
近くに他のデモンがいる影響らしい。
それはさておき...
「日記帳...みたい」
ぱらりとめくる。湿気で多少よれよれ担っていることを除けば、紙もインクもしっかりと原型をとどめていた。
日記の主は、ベルガーなる錬金術師らしかった。
彼と彼の子供たちは、家族でこの廃墟...もとい城下街に住んでいたようだ。
妻を亡くし悲観にくれつつも、残されたこらと共に平穏に生きる毎日。
王宮での不穏な噂や、その王宮に、家族ともども招かれていること...などが書き綴られていた。
「つまりこれ...200年前の人の日記、なのね」
ローナやフランから聞いた話によると、ここら一帯は200年前に一夜にして廃墟になったらしい。それが事実であれば、この日記はそれより前に書かれたものとなる。よくも今まで風化しなかったものだ。
「...わたしの郷里では、言葉には魂が宿るといわれるわ」
この日記には、ベルガーなる人物が家族に寄せた深い愛情が示されていた。その言葉の力が、長い時を経てもなお残り続けているのだろう...と、マイコが言った。
「まぁ...結局推測でしかないけれど」
たしかにそうだ。だが...
この錬金術師ベルガーと、彼の二人の子供たちが、平穏に人生を過ごしたことを、僕は願わずにはいられなかった。
−つづく−
一日分飛ばすといったな?スマン、ありゃ嘘だった(ぇ
まぁ、リメイクに際しての追加要素部分なので避けられないんですよね~
ちょっとネタバレっぽい気もしますが、序盤も序盤なんでまだいいかな、とは。