雑用に取り掛かった依頼が奇妙な事件を呼び、すったもんだがありつつもどうにかユピテルの鍵を受け取ることができた。
「あなた最近、ピーネと親密すぎやしないかしら?そりゃあ、仲良くしなさいって言ったのは私だけれど…」
…何故かフランから変な釘を刺されはしたが。
「そうそう。あなたが持ち帰…いえ、連れ帰って来た双子の機械人形、修復できたんですって?」
うん。レゼルムとプロメスがやってくれてね。これから起動実験するって。
「ふぅん…爆発しないわよね?」
しないと思うよ…多分。
「不安ねぇ…」
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「やあ、待っていたよ」
レゼルムの道具屋の一角で、目を閉じたままの双子の機械人形と相対する。修復は完了したものの、まだこの子たちを目覚めさせる要素が足りないのだという。
「うん、雷のデモンの鍵も受け取っているようだね。じゃあその鍵に君の魔力を注いで…彼らの首筋にある鍵穴に差し込むんだ」
レゼルム曰く、機械人形には自分で生命力や魔力を生み出す力があるようだが、一度機能停止した身体にはどちらも枯渇しているため目覚めないのだという。そこで雷の力を乗せた僕の魔力をブースターとして使い、強制的に起動させる…というのが今回の起動実験だ。
ユピテルの鍵にゆっくりと魔力を送り込み…白く光ったそれを、鍵穴に差し込み、捻る。
「…!」
ほとばしる火花に目の前が青白く染まり…
「ほう…成功だよ」
ようやく慣れた視界に、双子が目を開けて佇んでいた。
『…名前を、決めてください』
二人は抑揚のない声でそう告げる。
「彼らに過去の記憶はない。まっさらな状態なのさ。君が色々教えてあげるといい」
レゼルムの言葉にうなづいて、二人に目を向ける。
この子たちの名前は…日記に記されていた、かの錬金術師の子供たちから付けよう。かつて彼も、そうしたように。
『僕は、クリス』
『私は、クレア』
…登録しました。と二人の瞳が真っ直ぐ僕の魔眼を見つめた。
『よろしくお願いします…お父様』
…お父様!?
「はっはっは…なるほど。君の魔力をもって生まれ変わったのだからね。そりゃ父親にもなろうというものか。はっはっは…面白いねぇ」
レゼルムは大笑するが、笑い事じゃない。よ、呼び方を変えてもら…
『変更はできません』
『お父様は、お父様ですので』
…マジですか。
「さてこれからどうするんだい、パパ?」
誰がパパか…どうするって?
「この子たちの今後さ。蘇らせて、蘇らせた後のことを考えていなかったのかい?」
ああ…そういえば。
彼らのかつての“お父様”は、彼らが再び笑える日を夢見ていた。だが、彼がその笑顔を見られる日は、もう永遠に来ないのだ。
「まぁ、何かの役には立つだろうさ。ひとまずは君の部屋で面倒を見たらどうだい?」
そうするよ…
−つづく−
双子の修復イベント自体はすごくあっさり終わっちゃったので、僕なりに肉付けを。
これでマキナが加入ということにはなるんですが、パーティーに加えるということは誰かと交代をせにゃならんということでしてな…