シャーク教団の司祭に託されたミスリル電光石を握りしめる。これで時計塔の動力を取り戻せば、上層階への道が開ける。けど…
「ルルのことが気がかりよね」
マイコの言葉に頷く。あの司令書には、ルルを裏切り者として処刑する旨が記されていた。ソルに反旗を翻したのは事実だったのか。そして、それをソル側に知られたルルは…
「ま、あのチビを助けるか助けないかは別だ。俺様たちのやる事は…次に進むために時計塔へ行くことだぜ」
そうだねノアル。ともかく時計塔へ向かおう。
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時計塔を登りきると同時に、鐘が鳴り響く。
塔も入り口には、鐘が五つ鳴ったらルルの処刑を執行すると貼り紙がされていたが…
ひとつ、ふたつ──五つ。
鐘が全て鳴り終わり、静寂に包まれた時計台…
「…隊長さん!あそこ…っ」
その歯車に、ルルが倒れていた。
もう処刑されてしまったのだろうか。近づいて様子を伺おうとして…
──だからテメェは…甘ぇんだよっ!!!
しまった!
突如眼を見開いたルル…いやルナの瞳…ソルゲイズをまともに受けた僕は、内なるデモンに縛られて身動きが取れない。
「まっ…たくよォ…」
ひらりと起き上がったルルは、くふふっとくぐもった笑い声を上げながら僕に近づく。
「まさか信じたのか?このオレが操られてる…なんてヨタを…?」
完全に信じたわけじゃ、なかったけどね…
「はっ、それでもここまでノコノコ来てりゃ一緒だぜ。おめでたい脳ミソしてんな、このお人好しがよ!」
ああ、マイコからよく言われるよ…
「ハン、動きもできねえのに減らず口だけはいっちょまえだな…じゃあ…」
──あばよ兄弟。母なる闇の中で…ゆっくり休みな。
ルルの両手に魔力が集中していく。この距離でこれをまともに浴びるのは…
覚悟を決めようとしたその時、黄昏の如く燃える空を、咆哮が引き裂いた。
「あ、あれ…は…!」
「マジかよ…!?」
どうにか動く眼球がとらえたものは──
…ドラ、ゴン…!?
「あ、あのアマ…まさかっ!?」
驚愕に目を見開くルル。そして僕達の眼前で、ドラゴンの姿は光に包まれ…
「…フラン?」
その場に立っていたのは、よく知った顔だった。
彼女はつかつかと僕の前に歩み寄り…
「…ちょっ!?」
…柔らかな唇を、僕の唇に押し付けた。
途端に、この身を縛っていた戒めが解かれ、バランスを崩しかけた僕の身体を、フランが優しく受け止めてくれる。
「…どう?これで動けるようになったでしょ?」
「ってこらーっ!今貴女何した!?っていうか近い!はーなーれーなーさーいっ!!!」
なぜか顔を真っ赤にしたマイコが、猛烈な勢いで僕とフランの間に割って入った。
「…緊急事態ゆえの処置よ。古今東西、王子様は愛するお姫様のキスで目覚めるのが相場でしょ?これくらい大目に見なさいな」
「どさくさに紛れてよく言う…っ!っていうか誰がお姫様よ図々しい!」
ちょ、ちょっと二人さん?今ここ、割とヤバ目な状況だったと思うんですが…?
「そこをどきやがれ!トカゲ女にネコ娘がッ!!」
さらに激昂したルルが飛び込んでくる。ああもう!みんな散って!
「せっかくの作戦を無駄にしやがって!あと一歩でこのアホを…なぶり殺しにできるところだったものをよぉ!」
ルルの姿が歪み、再びルナとしての姿をあらわにする。
「我が兄弟よ…二人きりになれなくて残念さ」
だが…ここでサヨナラだ。
そう言ってルナが鎖を振り回す。フラン、さがって。ここで決着をつけるッ!
「ええ…頑張って!」
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ルナ…これを作戦だと言ったな?じゃあシャーク教団を襲わせたデモンっていうのは…!
「っは、もちろんオレに決まってんじゃねえか。あんな神のなり損ないの魚類なんぞ、オレがひと睨みすりゃ一発だったぜ…キヒヒッ!」
なぜそんなひどいことをっ!僕が狙いなら真っ直ぐ僕を襲えば良かっただろう!?
「バーカ、それじゃつまんねえだろうが!お優しい人間様たるオマエのこった、随分傷ついただろ?はっは!その顔さ!オレはオマエのその顔が見たかったんだよォ!」
下卑た笑い声とともに、ルナが次元を超えて様々な武器を飛ばしてくる。それをミスリルの大槌でかわし、マルスの鍵を空に掲げる…オープンデモン!
「おうおう、また兄弟喧嘩かデモンゲイザー?」
そんな可愛いもんじゃないよ…全力で行くよ、着いてこい!
「っしゃあ!」
鎖から解き放たれたマルスが、炎の大剣を振りかざす。僕の怒りが乗った真紅の一撃が、ルナの体を一息で薙いだ。
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「ぐはっ!」
元の姿に戻ったルナ…ルルが時計台に叩きつけられる。しかし、やはりというかデモンだけあってそれは致命傷には至らない。
「て、てめぇ…わかってんのか?」
呪詛のような声色は、僕ではなくフランに向けられている。
「こいつは闇と光の戦いだ…トカゲどもが…ドラゴンが手ぇ出すのは、千古の昔からのご法度だろうが!」
「そ、そっちが汚い手を使うからでしょう!?彼はもうデモンじゃない…歴とした人間なのよ」
二度と闇の手に落ちることはない。フランがそう言って、僕の手を強く握る。
「ははっ、お熱いことで」
ルルが大げさにため息をついて見せる。
「おい兄弟。騙されてんのは、てめえも同じだぞ。もし、デモンを全て倒したら…」
倒したら?
「はッ…それ以上は、そこの女に聞いてみな。なぁ、フラン・ペンドールさんよォ」
軋む様な嗤い声を残して、ルルの姿はかききえた。
−つづく−
いろいろネタバレ満載なので折りたたみ。とはいえアプリやスマホだと効果なくて意味なし💧
結構アレンジ入れまくってますね。特にパーティーメンバーがほぼ会話に絡まないので、マイコがちょいちょい引っ掻き回してくれてます。
ルナ2戦目は3ターンクリア…デバインウエポン強すぎでは?