炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#DGEX】番外編VIII:消えた管理人

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「お、お願いしますっ!管理人さんを探しに行ってください!」

地下牢獄の探索を切り上げ、竜姫亭に戻ると、血相を変えたピーネに飛びつかれた。ちょっと落ち着きなさいなピーネ、何があったの?

「管理人さんが帰ってこないんです…っ。お昼には戻ってくるって言ってたのに…!」

ピーネが言うには、彼女は“妖精の隠れ里”なる場所まで出かけたらしい。

「妖精の隠れ里って言えば、“星樹のとばり”の一番奥だね」

そういえば、森の奥に門で閉じられた場所があったわね。え、あれ開くの?

「管理人さん、鍵持ってるので…」

そこに出かけるために、閉まっておいたらしい鍵を探していたとのことなので、少なくともそこまで行ったのは間違いなさそうだ。

「…まぁ、しゃあねえな…なぁ、城から戻ってきてすぐのとこ悪いがひとっ走り、その隠れ里とやらに行って来てくれねえか?」

「管理人さんのこと、お願いしますっ!」

武器屋とピーネに頼まれ、わたしたちは再び館の門をくぐることになったのだった。

 

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…ねぇ、リーダーは…管理人のこと、どう思ってるの?

星樹のとばりの道中、ふと、そんな問いかけが口をついて出てきた。

「どうって?」

あ、いや…深い意味じゃなくてね? なんとなく…知りたくなっただけって言うか…

「うーん、そうだな…恩人、かな?」

恩人?

「うん。化け物だった僕を、一人の人間として迎え入れてくれたし。まぁそれはローナもだけどさ」

そっか…ふぅん。

「なんだよ、聞いといて素っ気ないなぁ…」

少なくとも、ローナさんにむけていたような感情を、今は管理人さんへ向けてはいなさそうだ。

 

…少しだけ、ほっとした。

 

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「ありゃりゃ、またお客だ」

開け放たれた門の先で、ピクシーが目を丸くしてわたしたちを見る。

リーダーが管理人さんを探しにきたことを告げると、ピクシーは一枚の紙を投げよこした。

「最近ブッソウだからねー。入れる人をゲンセンしてるの」

言われるままにサインをした紙を返す。曰く、人間とエルフとミグミィとドワーフ、それからネイはこの先には入れないらしいのだが…

「入れるのはあなただけね」

と引っ張られたのはリーダーだけだった。

「いや〜、彼も正直怪しかったんだけどさ…まぁフツーの人間じゃないっぽいし、ギリオッケーみたいな?」

フワッとしてるわねぇ…まぁリーダーが普通の人間じゃないのは事実だけど。

どうしてもついて行こうとする双子を諌めながら、リーダーは奥へと進んでいった。

 

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「おや、デモンゲイザーのお仲間達ですか」

リーダーを待っていると、奥の方からルルが現れた。どうしてここに?

「たまにくるのですよ。静かで考え事をするにはいい場所ですからね」

たまに来るって、ここ鍵かかってるんじゃ…?

「それより、管理人が迷子とか?」

あ、うん…見てないかしら?

「いえ、ルルは会ってないですよ」

ではこれで。とルルは帰還の鏡で森を出ていった。

 

…って、人間はこの先入れない筈よね?

「え?そうだけど…あれ?そういえばなんであたし、あの子通したんだっけ…?」

ピクシーが首を傾げていた。

 

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『…遅い』

『お父様に何かあったのでは…!』

ルルが去ってしばらく経ったが、管理人はおろかリーダーも帰ってくる気配がない。痺れを切らした双子達が武器を握り締め出した。

「…あの、ピクシーさん。私たちここで待っていますので、おふたりを探しに行ってもらえませんか?」

ビアンカの提案に、ピクシーは「でも…あたし門番だし…」と躊躇いを見せる。

 

『探しに…』

『行きなさい…!』

クリスとクレアが刃をピクシーの首元に向けた。

「はっはい〜っ!!」

 

…これが原因で妖精界隈とこじれなきゃいいけど。

 

ほどなくして、ピクシーが取って返してきた。二人とも、奥で落とし穴にハマって出られなくなっていたらしい。

「流石にあたしだけじゃ助けられないからね〜。今回は特別!みんな、力を貸して!」

ピクシーに連れられた先、大きな落とし穴の底で、リーダーと、なぜか下着姿の管理人がいた。…何してたのリーダー?

「なっ、何もしてないよっ!」

 

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無事に竜姫亭に戻り、一息つく。

件の落とし穴については、誰が作ったかは結局分からずじまいだった。妖精達は総じて悪戯好きな種族だが、あの規模の落とし穴を作るにはあまりにも体が小さすぎるのだ。

「それに、悪戯にしちゃ殺意マシマシだしなぁ…」

武器屋がしみじみとつぶやいた。

 

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「はい、出来たわよ」

と、管理人が厨房から何やら持ってきた。香ばしい香り…これはパイ焼き包みかしら?

「受け取って頂戴。ほら、いつか私のこと、看病してくれたでしょう?…ちょっと遅くなったけど、そのお礼よ」

美味しそうではあるが、ちょっと薬臭い匂いも…もしかして、隠れ里まで出てた理由って…その材料集めだったの?

「そうよ…悪い?」

いや、悪いとは言わないけど…意外と律儀なのね。少し見直したわ。

「意外とは余計よ、もぅ…」

 

「はは…ありがとうフラン。大事に食べさせてもらうよ」

「…うん」

 

パイを受け取るリーダーと、管理人の視線がつぶさに合い…

お互いに耳を赤くして目を逸らしたのを、わたしは見てしまった。

 

   −つづく−

 


急にイベントが来たので(ぇ

フランとゲイザーくんの急接近といえるシーンだけど、ちょいちょい不穏な要素もありあり…な感じで。

プレイヤー視点ではなくあえてヒロイン視点でヤキモキさせてみました(鬼

そろそろマイコも押さないと負けるぜ?w