「お、お願いしますっ!管理人さんを探しに行ってください!」
地下牢獄の探索を切り上げ、竜姫亭に戻ると、血相を変えたピーネに飛びつかれた。ちょっと落ち着きなさいなピーネ、何があったの?
「管理人さんが帰ってこないんです…っ。お昼には戻ってくるって言ってたのに…!」
ピーネが言うには、彼女は“妖精の隠れ里”なる場所まで出かけたらしい。
「妖精の隠れ里って言えば、“星樹のとばり”の一番奥だね」
そういえば、森の奥に門で閉じられた場所があったわね。え、あれ開くの?
「管理人さん、鍵持ってるので…」
そこに出かけるために、閉まっておいたらしい鍵を探していたとのことなので、少なくともそこまで行ったのは間違いなさそうだ。
「…まぁ、しゃあねえな…なぁ、城から戻ってきてすぐのとこ悪いがひとっ走り、その隠れ里とやらに行って来てくれねえか?」
「管理人さんのこと、お願いしますっ!」
武器屋とピーネに頼まれ、わたしたちは再び館の門をくぐることになったのだった。
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…ねぇ、リーダーは…管理人のこと、どう思ってるの?
星樹のとばりの道中、ふと、そんな問いかけが口をついて出てきた。
「どうって?」
あ、いや…深い意味じゃなくてね? なんとなく…知りたくなっただけって言うか…
「うーん、そうだな…恩人、かな?」
恩人?
「うん。化け物だった僕を、一人の人間として迎え入れてくれたし。まぁそれはローナもだけどさ」
そっか…ふぅん。
「なんだよ、聞いといて素っ気ないなぁ…」
少なくとも、ローナさんにむけていたような感情を、今は管理人さんへ向けてはいなさそうだ。
…少しだけ、ほっとした。
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「ありゃりゃ、またお客だ」
開け放たれた門の先で、ピクシーが目を丸くしてわたしたちを見る。
リーダーが管理人さんを探しにきたことを告げると、ピクシーは一枚の紙を投げよこした。
「最近ブッソウだからねー。入れる人をゲンセンしてるの」
言われるままにサインをした紙を返す。曰く、人間とエルフとミグミィとドワーフ、それからネイはこの先には入れないらしいのだが…
「入れるのはあなただけね」
と引っ張られたのはリーダーだけだった。
「いや〜、彼も正直怪しかったんだけどさ…まぁフツーの人間じゃないっぽいし、ギリオッケーみたいな?」
フワッとしてるわねぇ…まぁリーダーが普通の人間じゃないのは事実だけど。
どうしてもついて行こうとする双子を諌めながら、リーダーは奥へと進んでいった。
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「おや、デモンゲイザーのお仲間達ですか」
リーダーを待っていると、奥の方からルルが現れた。どうしてここに?
「たまにくるのですよ。静かで考え事をするにはいい場所ですからね」
たまに来るって、ここ鍵かかってるんじゃ…?
「それより、管理人が迷子とか?」
あ、うん…見てないかしら?
「いえ、ルルは会ってないですよ」
ではこれで。とルルは帰還の鏡で森を出ていった。
…って、人間はこの先入れない筈よね?
「え?そうだけど…あれ?そういえばなんであたし、あの子通したんだっけ…?」
ピクシーが首を傾げていた。
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『…遅い』
『お父様に何かあったのでは…!』
ルルが去ってしばらく経ったが、管理人はおろかリーダーも帰ってくる気配がない。痺れを切らした双子達が武器を握り締め出した。
「…あの、ピクシーさん。私たちここで待っていますので、おふたりを探しに行ってもらえませんか?」
ビアンカの提案に、ピクシーは「でも…あたし門番だし…」と躊躇いを見せる。
『探しに…』
『行きなさい…!』
クリスとクレアが刃をピクシーの首元に向けた。
「はっはい〜っ!!」
…これが原因で妖精界隈とこじれなきゃいいけど。
ほどなくして、ピクシーが取って返してきた。二人とも、奥で落とし穴にハマって出られなくなっていたらしい。
「流石にあたしだけじゃ助けられないからね〜。今回は特別!みんな、力を貸して!」
ピクシーに連れられた先、大きな落とし穴の底で、リーダーと、なぜか下着姿の管理人がいた。…何してたのリーダー?
「なっ、何もしてないよっ!」
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無事に竜姫亭に戻り、一息つく。
件の落とし穴については、誰が作ったかは結局分からずじまいだった。妖精達は総じて悪戯好きな種族だが、あの規模の落とし穴を作るにはあまりにも体が小さすぎるのだ。
「それに、悪戯にしちゃ殺意マシマシだしなぁ…」
武器屋がしみじみとつぶやいた。
「はい、出来たわよ」
と、管理人が厨房から何やら持ってきた。香ばしい香り…これはパイ焼き包みかしら?
「受け取って頂戴。ほら、いつか私のこと、看病してくれたでしょう?…ちょっと遅くなったけど、そのお礼よ」
美味しそうではあるが、ちょっと薬臭い匂いも…もしかして、隠れ里まで出てた理由って…その材料集めだったの?
「そうよ…悪い?」
いや、悪いとは言わないけど…意外と律儀なのね。少し見直したわ。
「意外とは余計よ、もぅ…」
「はは…ありがとうフラン。大事に食べさせてもらうよ」
「…うん」
パイを受け取るリーダーと、管理人の視線がつぶさに合い…
お互いに耳を赤くして目を逸らしたのを、わたしは見てしまった。
−つづく−
急にイベントが来たので(ぇ
フランとゲイザーくんの急接近といえるシーンだけど、ちょいちょい不穏な要素もありあり…な感じで。
プレイヤー視点ではなくあえてヒロイン視点でヤキモキさせてみました(鬼
そろそろマイコも押さないと負けるぜ?w