小柄な体がふたつ、同時に地を蹴る。
少年の方…クリスが槍で魔物の足元を薙ぎ、その隙をついて少女の方…クレアが刀を振るい首を落とす。一糸乱れぬ連携は、まさに“二人で一人”を体現しているかのようだ。
プロメスによれば、二人は一つ分の魂を共有している…らしい。ゆえに、彼らを含めた6人での探索行も、特に圧力やペナルティの類もなく行えているのだろう。
「いや、実に鮮やかなものだな…」
ノアルが感嘆の声をあげる。
「不満そうだな、大将?」
いや、不満っていうかさ。あの子たちを戦わせないようにしたいなって思ってたのに…って。
「だが、こうやって共に戦うことこそ彼らの望んだことなんだろう?子供たちの意思を尊重するのも“お父様”の役割だと、俺は思うね」
…お父様としては複雑な心境だけどね。
「早速親バカ炸裂してるわねぇ…」
マイコが呆れたように笑った。
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「機械人形…“マキナ”の最大の強みは、その汎用性だ」
成長…あるいはカスタマイズによって、戦闘スタイルを大きく変えることができるのだ。
「殆どの武器を扱える器用さと、持たせる神器の組み合わせで、オヤカタの穴を埋めるような前衛も、後方からの支援もお茶の子さいさいっていうやつだな」
まぁ、レゼルム氏からの受け売りなのだが…とノアルが苦笑する。
それを聞いて、彼らには後方支援をお願いしようとしたのだが…二人が手にしたのはガチガチの前衛武器であった。
『ぼく達はお父様とともに』
『私たちはお父様の剣であり、盾でありたいのです』
真っ直ぐに言われたのでは何も言い返せなかった。
「…俺様の見立てが正しければ」
ノアルがぽつりと呟く。
「あの双子…機械人形は“戦うため”に生み出された存在だ」
人を模しながら、その一挙手一投足が人以上に戦いに特化した存在。
「で、ここからは仮説になるが…あいつらの身体な、大将なら気づいてるはずだ。…“何に似ているか”」
…デモン、だね。
「ああ。宿ってる魂の性質が違うだけで、その肉体はデモンのそれに非常に近しい…まぁ、デモンの身体をじっくり調べたことがないからどこまで近いかはわからんがな」
彼らがデモンの雛形なのか、あるいはデモンが彼らのプロトタイプなのか…
「まぁ、順番はどうでもいい。兎に角あいつらは、戦うことこそが使命っつっても過言じゃない。あんまり戦い以外を望むのは酷ってもんじゃないかねぇ」
確かに、二人が十全に戦えるような手段を用意するのが僕の役目なんだろう。
それでも…
復讐に凝り固まった錬金術師ベルガーの心を一時でも癒したのは、あの子達の笑顔だったのも確かなのだ。
戦いだけしかない、なんて悲しいことは…あってほしくない。
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旧市街でのウォーミングアップもそこそこに、昨日進行を断念したグリモダール城の地下へと向かう。
魔物の強さは旧市街とは段違いだが、双子達は危なげなく斬り伏せていく。
そろそろか…二人とも!
『はい、お父様』
次のサークルでデモンが出てくる。気を抜くなよ!
「なぁにその目?」
現れたのは扇情的な衣装を身にまとった踊り子のようないでたちのデモンだ。
「胸ばかり見て…汚らわしいわね。まるでゴキブリよ」
「リーダー…」
見てないからね!っていうか、現状双子のことしか考えてないしっ!
「見てないって言い切られるのもそれはそれで腹立たしいわね…グチャグチャに潰したくなるわ!」
美のデモン・ヴィーナスが殺気を顕にする。クレア、クリス…行くよっ!
『さぁ。華麗に荒れましょう、お兄様』
『お父様に良いところを見せないとね、お姉様』
互いの手を繋いだ二人が、歌うように戦端に躍り出た。
−つづく−
というわけで、マキナの初陣回。
エクストラで新たに紡がれた物語の重要キャラではあるものの、結局のところそこまでキャラクターの肉付けされてないんですよねこの子達…
というわけで、ゲイザーくんへの呼称とか、お互いをどう呼んでるかを探り探り書いてます。
お互いの呼び方がヘンゼルとグレーテル(byブラックラグーン)じゃねえか!というツッコミは受け付けかねます
ここ最近のパターンだと、キリのいい日付で討伐に出るんですが、まだ双子のレベルが低いのでもうちょいかかるかな?