探索帰りに持ち帰ったドクロを受け取ったプロメスに誘われるまま、ドクロ磨きの手伝いをすることになった。
「その後、双子のご様子は如何ですか?」
まぁ、ぼちぼち…っていうか、本人達を前にして聞く?すぐ隣で一緒にドクロ磨いてるじゃない…
「まぁ、是非お父様からの意見を伺おうかと」
君までお父様呼ばわりするのか…
そうだね…ノアルの見立て通り、元々戦闘用として生み出されたっていうのは間違いないと思う。二人一組っていう戦闘スタイルだけど、センスは並の賞金稼ぎを軽く上回ってる。
「なるほど」
ただ、まぁ起動して…いや生まれて間もないからか経験が不足してるのと、僕たちとの連携がちょっとまだ危ういんだよね。
基本的に、お父様…つまり僕を守ろうとすることを優先してしまうので、自分の防御が疎かになってしまうことがままあるのだ。
まぁマイコの幻影術やビアンカの光の盾でフォローできてはいるんだけど。
「ふむふむ…」
まぁ、現状僕にベッタリだからねぇ…とはいえみんなもみんなで気遣ってくれてるし、この子達もそれに対して別に邪険に扱ったりはしてないから、そのへんは時間が解決してくれるかな…とは。
「…いいお父様とお仲間に巡り会えたようですね、御二方は」
『?』
クリスとクレアが揃って首を傾げた。
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そういえば、プロメスは神様について詳しいの?
「…まぁ、嗜む程度には?」
神様って嗜みなのか…いや、シャーク様を“新しい神”って言ってたでしょ?だから、いわゆるところの“古い神様”のことも詳しいのかなって。
「ふむ…そうですね。ちょうどいい機会ですので、神様についてお勉強といたしましょうか」
ドクロ磨きの道具を仕舞うプロメスに誘われれるまま、僕たちは地下室を出た。
「さて、まずは神様についてご存知のことは?」
あんまり…ああ、ビアンカやシャーク教団の人が精霊神のことを話してるのは聞いたことあるけど。
「では、その精霊神のことから説明していきましょう」
プロメス曰く、この世界には光と闇の精霊神がいるのだという。遥か昔…“空の叙事詩”なる伝承に語られる時代から、人々はその神を畏れ、崇拝してきたのだ。
「彼らが精霊神と言うのは、主に光の精霊神のことを指します。その名を──フェニックス」
光と再生を司る神。ビアンカたちヒーラーは、このフェニックスへの信仰心が癒しの力に繋がるのだろう。
「…とはいえ、信仰の対象は必ずしもこの神でなければならない…というわけでもないのですが」
そうなの?
「数百年ほど前に、こことは別の地で大量に異邦人…別世界からの人間が転移してきたことがありまして。彼らは当然この地の神など知る由もありませんが、癒しの力を操るものは確かにいたと聞きます」
ふぅん…
「そしてもう一方が、闇の精霊神…“魔王”という二つ名の方が通りがいいですが…その名を──オーマ」
死と破壊をもたらす闇の魔王。強大なる魅了の力・オーマの波動を以って、人々を支配するのだという。
「この二柱は、幾度となく戦いを繰り広げてきました。光と闇は、相容れないものですから」
そして、その戦いを時に見守り、ときに介入して、光と闇にバランスをもたらす存在があった。それが…
「竜神…つまり、ドラゴンですね」
不滅の精霊神とは異なり、永くとも定命の存在である竜は、神の中で唯一代替わりを行うという。
「現在の竜神様は、ペイデという方です」
「この三柱が、この世界に存在する…所謂ところの古い神様、というわけですね」
なるほど…でも神話に語られるほどの神様なら、今回の事態にも対処できたんじゃない?今回悪さしてるのは、闇の大天使でしょ?つまり光の精霊神の出番だ。
「ところがそうもいかないのです」
プロメスが紅茶を一口すする。
「フェニックスとオーマは、空の叙事詩の時代における戦いで、大きな傷を負ってしまったのです。そしてそれは…幾星霜を経た今もなお、癒えてはいません」
さらに、永い時を経たことで人々の考えにも変化が生じ、彼らへの信仰心が弱まってしまった。それが、光と闇の精霊神が力を大きく削がれた要因なのだろう。じゃあ、ドラゴンは?
「竜神は中立の神なので、積極的に関わることはありません。光と闇の天秤が大きく傾くことがあれば介入することもありますが…現状は非干渉を貫いているご様子」
神様ってのも万能じゃないんだなぁ…
「いえ、万能であるが故に軽々しく力を揮えないのです。乞われるまま力を与えていては、人は成長することなく世界は停滞してしまうでしょう」
焼きたてのスコーンが届き、プロメスは言葉を止めた。
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ところで、ソルが新たな魔王になりうる危険があるって前にフランが言ってたけど、オーマが力を失ってることと関係があるの?
「はい、おおありです。闇の勢力は、魔王を筆頭に猛者がひしめく群雄割拠。ソルをはじめ力に覚えのある者たちが常に下剋上を狙っているのです」
プロメス曰く、空の叙事詩…魔歴の時代からそうであったらしく、光の騎士たちによってオーマが打倒されたすぐ後に新たな魔王として君臨しようと企んだ者がいるらしい。
「まぁ、その者も最終的に円卓の騎士により倒されたのですが…」
ですが?
「かのものは不滅なので…今なお諦めず、魔王の座を虎視眈々と狙っていることでしょう」
えぇ…ソル以外にもそんな厄介な敵がいるの?
「まぁ、最後に存在が確認されたのが何百年も前の話なので…それに、伝承によれば星海の向こう側…宇宙の果てまで放逐されたとのことですし、出くわす事はないと思いますが」
そうあって欲しいね…と身震いしながら、僕は冷めかけた紅茶を飲み干した。
−つづく−
みんなあつまれー!『なぜなにデモンゲイズ』の時間だよー!
40日目ではありますが、プレイ内容ではなくちょっとした説明回に。
普段の倍量の文字数を「ちょっと」とは言わない。
「円卓の生徒(蒼き翼のシュバリエ)」から連なる世界観で共通する神様のお話ですね。
画像は今回、蒼翼から拝借しました。オーマは真の姿なので未プレイ勢からすればネタバレもいいとこですがw
しかしオーマ、このビジュアルを鑑みると次作「デモンゲイズ2」で◯◯◯がでてくるのも納得…?
次回、ヴィーナス本戦は、44日目頃を予定していますノシ