本格的な探索は翌日からと言うことになり、ミュゼはラッキーに休むよう促した。
そして一夜明け、支配人室に赴いたラッキーは当面の行動指針を受け取る。
「まず、1日の予定を決めておいて」
ラッキーが禁域で攫われてしまった理由の一つに、他の革命団メンバーが彼がどこで探索活動をしていたのかを把握していなかった…つまり、情報不足だったことを挙げる。
「報告・連絡・相談って大事よねってことで」
「そりゃそーだ」
大きく、朝・昼・夜と分割されたコルクボードに、禁域探索と書いたメモを貼り付けて、支配人室を後にした。
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「おはよー、お兄ちゃん!」
2階に降りて、ペガサスと合流する。彼女にあてがわれた部屋はいわゆる相部屋で、いくつかの二段ベッドが置かれているのだ。
「どのベッドで寝ようか迷っちゃった♪」
「ゼータクな悩みだな」
ペガサスを伴い、1階を通り抜け地下階へ。
「すぐ行かないの?」
「出る前に買い物な。色々準備だ」
ミュゼから活動資金をもらったので、カッスルの店へ。
「よう、ゆっくり見てけよ」
武器は取り扱いがあるものの、手持ちの額では手が届きそうにない。
「まぁ、お前らはサークルから武器を仕入れられるからそっちのがいいだろ。そうそう、昨日の探索やら戦闘やらでいくつか金目のモンも拾ってるだろ?買い取りもこっちでやってるから、足しにしときな」
カッスルの提案に頷き、さっそく余り物や金品の類を売っていく。それでもジェムを買うには心許ないので、ひとまずは回復用のアイテムをいくつかと、勧められた煙玉を買っていく。
「あぁ、あと…こいつを持っていきな」
と手渡されたのは、奇妙なデザインのメダリオンだった。
「そいつは神器っていってな。まぁマジックアイテムの一種なんだが…これの中には様々な叡智が封じ込められている…らしい」
出自やら由来やらは定かではないが、装備しておけば、神器に応じて様々なスキルを使えるようになるらしい。
「そいつは“狩人の目”っつースキルが使えるようになる。敵の体力が一眼でわかるようになるから、持っといて損はねえ」
「いいのか?貴重品なんだろ?」
「まぁ貴重じゃあるが…荒事に出張るやつがお前くらいしかいねえんじゃ、俺が持ってても宝の持ち腐れだからな。また何かでけえ買い物でもしてくれりゃ、チャラにしてやるよ」
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666番街は、相変わらず陰鬱とした街並みであった。立ち入り禁止とはいうが、普通の人間なら寄り付きもしないだろう。
「まずはサークルの制圧だね」
「だな」
カッスルによれば、この禁域では獣人が主に幅を利かせているらしい。脅威度としては一番低い分類とのことだが、回復役がペガサスしかいない現状、無理は禁物だろう。
「おう、ゲイザーのダンナじゃねえか」
と声をかけてきたのは、ステラ座の常連客の老剣士だった。
「ガリーのとっつあん、こんなとこで何やってンだ?」
「はっは。オレだって革命団の端くれさ。禁域探索の手伝いをな」
大丈夫?と心配そうに伺うペガサスに「まだまだ若ぇモンには負けねえよ」と細腕で力瘤を作ってみせる。
「探索に役立ちそうな情報を集めてんのさ。なにかわかったら…ほれ、こうやってメモを貼っとくからアテにしてくんな」
「そりゃ助かるな。ありがとよとっつあん」
「気をつけてね、おじーちゃん!」
他の禁域にも寄るというガリーを見送り、ラッキーたちは先へ進んだ。
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サークルを見つけ次第制圧していく。
これも例の少年から教わったことだ。禁域内にあるサークルという一種のパワースポットを攻略していくことで、デモンを炙り出せるのだと言う。
流石にどこにあるかまではわからないが、禁域内にいくつサークルがあるのかは何と無くわかる。これもデモンゲイズの力なのだろうか。
「…お兄ちゃん!」
と、ジェムを仕掛けていたサークルを観察していたペガサスが声を上げる。魔物とは違う気配…!
「罪深き者たちよ…現れましたね」
サークルから出現したのはエルフの少女だった。しかし、まとう気配はエルフのそれではない。
「お兄ちゃん、この子…デモンだよ!」
「ええ、私はライブラ。我が天秤にかけて、あなた方を裁きます!」
杖を振るい、放たれた魔力の奔流がラッキーを襲う。
「っだらあ!」
ギリギリで躱し、返す刀で振り抜く。ライブラの杖とぶつかり合った刃が火花を散らした。
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「…まだ時ではない、ということですか」
何合かの打ち合いののち、ライブラは唐突に攻撃を止めた。
「いいでしょう、今は処分保留といたします。もちろん、ここで退いていただいても結構ですが…」
「退くようなタマに見えるか、オレがよ?」
「…あくまで裁きをお望みですか。であれば、この禁域の全てのサークルを制圧なさい。さすればまた、お相手いたしましょう」
そう言ってライブラは忽然と姿を消した。
「…逃した…いや、逃されたのはオレらの方、か」
緊張が解け、ラッキーは膝から崩れ落ちる。
「お兄ちゃん!大丈夫?今回復魔法を…」
「いや、いい…っつかお前も魔力切れてんだろ」
「あ…」
刀を杖代わりによろよろと立ち上がった所を、ペガサスに支えられる。
「あれがデモン…真の力も出してねえってのに強えったらねえぜ」
まだまだ実力不足だと言う事実を認識して、ラッキーは「一旦帰るぞ」と帰還魔法を唱えるのだった。
–つづく–
今回から本格的なダンジョンアタックへ。前作DGEXのリプレイのとき同様に、難易度「まるこげ」で挑戦してるのでそのまま流れでワンダーデモン戦に挑むとまぁ返り討ちにされかねんやつ💧
2ではさらに、「けしずみ」とかあるんですが、流石に無理…俺には無理…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
さて、冒頭で1日の予定を決めてということにまりますが、これは原作にはない要素。1日を朝昼晩の3パートに分けて、1日で最大3回のダンジョンアタックをできるようにしてます。
1と違って1日ごとの区切りがないのと、ダンジョン間の移動ができない仕様なので複数のダンジョンを1回のアタックで回るのが難しいためのリプレイ特別ルールとして設定。
※イベントとかで日が暮れたら強制終了です💧
多分こうでもしないとクリアまでの日数が酷いことになりそうな気がしたのでw