果たしてツムリの招集を受け、新デザイアグランプリ(仮)のプレイヤーがサロンに集結した。
「久しぶり、英寿!」
「ああ。配信がんばってるみたいだな、ナーゴ」
仮面ライダーナーゴこと、鞍馬祢音だ。
「最近はチャンネル登録者数も爆上がりだよ!お父様とお母様が赤スパチャ連発してくるのがちょ〜っと恥ずかしいけど…」
「はは。キューンのプロデュースが功を奏したようだな」
「ちょっ!べ、べつにそれだけが理由じゃないもん!」
顔を真っ赤にして、祢音が反論した。
「ようギーツ。お前が化けて出てきたってことは…また厄介事か?」
「神様捕まえて厄ネタ扱いするんじゃあないよ…否定できないのがなんとも言えないがな」
仮面ライダーバッファこと吾妻道長が皮肉を向けて、英寿が苦笑交じりに肩をすくめる。
「ま、頼りにさせてもらうぞバッファ」
「仕方ねえな…あとで旨い肉奢れよ?」
せっかくだからA5ランクでも食わせてもらおうか。と笑ってみせた。
「英寿、元気だった?」
「神様だからな。病気もなんにもないさ。タイクーンも元気そうだな」
仮面ライダータイクーン・桜井景和が握手を求め、英寿がそれに応える。
「そういえば警察官目指してるんだって?順調か?」
「始めたばかりだからなんともね…でも、やりがいはあるよ!」
応援してるぞ。という英寿の言葉に、景和は心から嬉しそうに頷いた。
「…この流れで僕が出てくるの、ものすごく場違い感ないかな…?」
和やかな再会ムードを壊さないようにとおっかなびっくり顔を出すのは、仮面ライダーナッジスパロウこと五十鈴大智である。
「はっは、気にすんな。まァお前を推薦したのはオレだけどな」
「君がかい?パンクジャック」
怪訝な視線を向ける大智に、ウィンが頷く。
「今回オレは裏方に専念することに決めたからな。その代役…っつーとちょっち言い方悪いけども…まぁ他にも理由があってな」
「というと?」
大智の問いかけに、「こいつを見てくれ」とウィンが持っていたタブレット端末を操作する。サロンに大型のモニターが浮かび上がり、その画面に青い惑星が映し出された。
「これは…地球?」
「ああ。ただ、地球は地球でも、俺等が住んでる地球じゃあねえ。こことは別の世界に存在する“チキュー”だ」
ウィンによると、この自分たちの世界によく似ているが全く異なるこの惑星で、何者かによるデザイアグランプリの開催が検知されたのだという。
「まだ始まったばっかでどういうゲームが進行してんのかはわからねぇ。だが、”こっち”のデザグラと同じなら、そう遅くねえうちにジャマトが出現する可能性が高い」
それがどういうことを指すのか、この場で最もジャマトという存在に詳しい大智が表情を硬くした。
「ジャマトは、言ってしまえば意思を持ったミントやドクダミ、葛の類…爆発的な繁殖力を持った植物だ。万一その場に根付いてしまえば…」
「俺たちの時代の地球…いや、君たちの未来と同じ歴史をたどりかねない」
現在こちらで行われている新デザイアグランプリ(仮)も、繁殖を続けるジャマトの駆除を兼ねてのものである。ジーンたちのいる時代が滅びた遠因とされるジャマトが、いつ地球に現れたのかは定かではない。だが放っておけばその未来につながるのは間違いないだろう。そしてそれは、この異世界のチキューも同様だ。
「身も蓋もないことを言えば、この異世界に俺たちは縁もゆかりもない。だが俺たちは知っている。デザイアグランプリがもたらしてきた悲劇を」
英寿の言葉にサロンが静まり返る。友を、家族を、愛情を奪われてきた仲間たちが、じっとモニター越しの、知らないはずの母星を見据えた。
「だが俺は…助けたい。呼んどいてなんだが、嫌だって言うなら降りたっていい。俺のデザグラと違って、安全は保障できないしな」
この星でもデザイアグランプリが行われているなら、人…それが自分たちと同じ人類種とは限らないが…はいるだろう。そして彼らにも、自分たちと同じように日々を、友や家族と、愛に囲まれながら生きているはずなのだ。
「…そんなこと、言うわけないだろ?」
くしゃっとした表情で、景和が笑いかける。
「英寿はわたしたちの世界を守ってくれた。今度はわたしたちがあっちの世界を守る番!」
「ま、神様に恩売っときゃご利益得られそうだしな」
祢音が英寿の手を取り、皮肉っぽくいう道長もどこか優しそうなまなざしを向けて。
「…ここで僕だけ乗らないっていったら悪者みたいじゃないか」
眼鏡を直しつつ、大智がため息交じりにつぶやいた。
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「…で、異世界のチキュー?ってどうやって行くの?いつもだとデザイア神殿から転送するけど」
祢音が当然の疑問を口にする。
「さすがに異世界に転送する技術はこっちのデザグラには無ェからなァ…むしろアッチがどうやって異世界でデザグラやってんのか見当もつかねえ」
「俺のいた時代では、マルチバースやパラレルワールド…要は異世界の研究をしていた科学者もいたらしいけどね」
ジーンいわく、道楽の延長線上だったらしく、それらの成果が結実したとかそういう話は聞かなかったらしいが。
「まぁ、どうするかと言うか…」
-DYNAMITE BOOST!-
ギーツナインへと変身した英寿が、専用の拡張装備…ギーツバスターQB9を構え、一息に何もない空間に逆袈裟に斬り上げる。
斬り裂いた中空に斬撃が残り、光り輝く亀裂にギーツがおもむろに手を突っ込む。ぐぐっ…と力を入れると、亀裂は広がっていき…それは大きな裂け目になった。
「…こんなもんかな」
「神様のくせに思いっきり力技だな…」
ふぅ、と息をつくギーツにジト目の道長がツッコむ。
「俺はあくまでこの世界の神でしかないからな。別世界にまで直接干渉はできないさ」
もっともらしいことを言って見せるギーツである。
「いやいや、別世界につなぐ道を繋ぐだけでもとんでもないからね…」
「さすが神様…」
素直に評価する景和と祢音に「ありがとな」と返し、続いて「じゃあ早く入ってくれ」と促す。
「入るのはいいけど…これ”向こう”のどこに通じてるのさ?」
「…さぁ?」
「いや、さぁって…」
「仕方ないだろ。さっきも言った通り別世界そのものに干渉ができないんだから。場所までは指定できないんだよ」
「えぇ…?」
流石に宇宙のど真ん中、とまではいかないようにしてるから。と安心させるように言うギーツだが、さっきまで褒めていた景和はちょっと尻込みしてしまう。
「…仕方ないな。じゃあ僕が最初に行こう」
そう言って手を挙げたのは大智であった。
「僕が呼び出された理由がわかったよ。あっちの世界へのジャマトの繁殖対策…だね」
「そゆこと。頼りにしてるぜ、元ジャマ神さんよ?」
「ハハ…その称号はバッファに譲っておくよ」
「いや俺ももういらねーからな」
ああそうだ…とウィンに一言二言耳打ちし、彼の首肯を確認すると大智は眼鏡の位置を直してから裂け目へと足を踏み入れた。
「どこに行くかはわからないが、俺はこの裂け目を通じて向こうの住人の願いを聞こうとしている。誰かの強い願いがあれば、そいつをアンテナにチキューのどこかにたどり着けるはずだ」
「信じるよ、神様」
ギーツの言葉にそう返して、大智は裂け目の向こうへ消えた。
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その後、景和たちも裂け目を通し異世界…チキューへと送り込む。
「じゃああとは俺だけだな…パンクジャック、フォロー頼むぞ」
「おう、任せ…って、おい英寿後ろ!」
ウィンが慌てて背後を指す。振り返るギーツの眼前で、空間の裂け目…異世界への入り口が縮まりつつあったのだ。
「うおっと!?」
縮小する裂け目を両手で抑え込む。ぐぐ…っと力を込めると今一度広げることはできたが、力を緩めると再び縮まろうとしていく。
「まいったな…万一閉じてしまったら、タイクーンたちが帰ってこれなくなるぞ」
「はぁ?じゃあ英寿はこのまんま動けねーってのか!?」
おいおいおいおいマジか…と頭をかくウィンの前で、白狐の神様は無防備な背中をさらすことしかできなかった。
-つづく-
というわけでギーツサイドでした。こっちものっけからギーツが地味にピンチ。
今回の参加プレイヤーは、いつメン4人に五十鈴大智を加えた5人。劇場版メンバーとの差別化を図りたかったのが一番。あと単純に大智を出したかったってのもw
なので今作においてはちょっと優遇するかもです、ナッジスパロウ。
ここからちょろっと敵サイドをはさみ、遂に両陣営が接触…!