秘伝スパイスの力で声を取り戻したマフティフに感激しきりなペパーを二人(?)きりにしてあげようと、先に洞窟を出る。
少し歩いて鉱山の町・ピケタウンで一休み。ここに【そらをとぶタクシー】の発着場があるんだなぁ…いつもお世話になってます。
アイスクリームを食べながらマップを調べていると…どうやら近くにスター団のアジトがあるようだ。位置情報をハッキングしたらしいカシオペアからもメッセージが来ていたし、そろそろ行ってみようか。
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ゲートまで近づくと、なにやらもめごとが起きているみたい。近づいてみると、もめてるのは団員同士じゃあなさそうだけど…?
「だーかーらー!団員以外入っちゃダメなんだっつーの!帰れって!」
「やだ!どく組ボスのシュウメイ殿に会いたいんだ!」
ゲートを守っているしたっぱ団員と…小さな男の子だ。制服を着てるから、アカデミーの生徒なのは間違いなさそうだ。何か訳ありのような感じで…
「ねぇ、どうしたの?」
と、つい声をかけてしまう。まぁ、ぼくはスター団にたてつく指名手配者として顔と名前が割れてるから、今更コソコソする必要もないのだけれど。
「あなたは…ヒイロさん!」
とはいえスター団に関係なさそう(?)なこの子にまで名前を知られているのはちょっとびっくりした。
「したっぱさん!ここは僕に任せて、仲間を呼んでください!」
「はあ!?なんでオマエが仕切んの?」
「アジトがむぼーびだと、シュウメイ殿も危ないんでしょう?ぼくの恩人であり、同胞たるあの人を守るため…万難を排し、はせ参じるが道理なんだい!」
…齢のわりにエラく古風な言葉遣いの子供だ。ともかく、どうやら勝負を挑まれたらしい。ここは受けなければ引き下がってはくれなさそうだ。
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どうやらぼくよりも長くアカデミーにいるらしい彼…ヒロノブと名乗った…は意外な実力者だった。勝負を収めてから改めて話を聞くと、やっぱりというか彼はスター団ではなかったのだけど…
「シュウメイ殿は僕の同胞!どうしても会わなきゃいけないんだ!」
との一点張りだ。
「…なにやらワケありみてーだな?」
と、後ろから校ちょ…もといネルケがやってきた。ぼくがゲートにいるのを見かけて、様子をうかがっていたらしい。
事情を聴きたい、というネルケにヒロノブくんを任せて、ぼくはゲートのゴングを鳴らした。
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いつも通りしたっぱの繰り出す30体のポケモンとの乱取りを制し、ついにボスのお出ましだ。猛烈な爆音でやってきたのは、これまたおなじみのスターモービル。その上に鎮座するのは…
『彼がスター団どく組ボス、チーム・シーのシュウメイだ』
事前にカシオペアに言われてはいたけど、た…確かに独特な雰囲気の人だ。
「ユーがヒイロか。スター団に仇なす不届き者…わがポイズンにて蝕んでくれよう」
推して参る!と先ほどのヒロノブくんのような言い回しでモンスターボールを振りかざす。
「出でませい、スカタンク!」
「相手がどくタイプなら…お願い、ゼイユ!」
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得意のじめん技で次々と倒し切る。素の状態のブロロロームとマトモに戦うのは今回が初めて。穴を掘っても猛スピードで逃げ回っていくから追跡が大変だった…
「ポイズン食らわば皿まで!シュウメイ、この命…最期まで!!」
スターモービルのブロロロームを呼び覚まし、まるで忍者が飛び乗る大きなガマガエルのようにその巨体が立ちはだかった。
「かすっただけで、どくる技も多数ある…我が妙技にて、蝕まれる恐怖におびえよ!」
「だったらぼくは…蝕む前に蝕み返す!」
「なに!?」
キタカミのコトワザに曰く、”毒を以て毒を制す”!
「淀んだ輝きをまとえ…テラスタル!」
どくタイプのテラスタルを開放したゼイユがブロロロームに負けない咆哮を放った。
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「全身全霊とてあらがえぬが定め…定めは掟…」
そう呟いて、スターモービルから降りたシュウメイさんは、深々と一礼してぼくにボスバッジを預けてくれた。
「ヒイロと言ったか…恨み辛みも浮かばぬほど、鮮やかな完敗でござった…」
「そんな、ぼくの方こそ…強かったです、シュウメイさん」
そう。そしてそんな強くも清々しい戦いをしていたスター団のボスが、どうしてこんなことをしているのか…それがとても気になった。
「シュウメイ殿!」
と、ぼくたちの戦いが終わったのを見計らったように、ネルケがヒロノブくんを連れてやってきた。どうやら彼は、シュウメイさんが退学にならないようにとアカデミーに連れ戻しに来たらしい。
「いじめられっこだった僕たちが今、学校に通えてるのは…シュウメイ殿たちスター団が頑張ってくれた、あの大作戦のおかげ!そんな人たちが退学になるなんて…僕はいやだ!」
涙ぐみながらも必死に訴えるヒロノブくん。でもシュウメイさんは首を横に振るだけで…
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彼らがアジトに留まる理由は、マジボスと呼ばれる人物の帰還を待っているから…とシュウメイさんは言っていた。しかし、そのマジボスなる人物がどんな人なのかは彼らにもわからないらしい。
「シュウメイさんは、いじめが原因で引きこもっていた人らしいって言ってたけど…」
一年以上前に起きていたいじめやそれが原因で起きた不登校…その事実を改めて知ることになったネルケ…いや、もう既に校長に戻っていたけれど…は、まったく気づけていなかったと反省するようにつぶやいていた。
「スター団はボスたちにとって宝物なのは間違いないけど…きっとそれだけじゃないよね」
ほのお組のメロコさんにはボウタロウがいたし、シュウメイさんにもヒロノブくんという同胞がいた。きっと他のリーダーたちにも…
『…そう、かもな』
カチコミが終わり、そうカシオペアへの報告をまとめると、スマホロトム越しの声は少し震えているようにも聞こえた。
『…すまない、いろいろと思うところがあってな』
少しの無言のあと、何事もなかったかのような口調で返す。残るアジトも2つに迫った今、この大作戦の最終目的を教えてくれるようだ。
『5人のボスを集め、スター団を作った真の黒幕…【マジボス】を倒すことだ。ヤツを倒し、解散を宣言させれば…スター団は完璧に終わる』
ボスたちからも何度か聞いていたその名を、カシオペアが言うということは、間違いなく実在するのだろう。そのカシオペアですら、正体には迫れていないというけれど。
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「う、うーっす…ヒイロ」
「やぁ、ボタン」
カシオペアからの補給班としてボタンに会うのも3度目だ。もうアカデミーで会うよりこっちの方が多いかもしれない。
「アギャス!」
「わっ!また!?」
彼女の気配に気づき、コライドンがボールから勝手に出てくる。なんだかに気に入られたらしい。しばらくもみくちゃにされているのを見守ってると「た、助けてよ!」と怒られてしまった。
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「黒幕…マジボスのことは、うちもカシオペアから聞いてる」
よだれまみれになってしまった顔を濡れタオルで拭きながら、ボタンが呟く。
「スター団の創始者…諸悪の根源…そいつを倒さないと、うちの宝は…失われちゃう…」
ボタンの…宝?そういえばボタンがこうやってぼくたちを手伝ってるの、課外授業って言ってたけど…
「あ、いや、えと…あ、ほ、報酬!わ、忘れないうちに…!」
何かをごまかすように、わざマシン用の素材をぼくに押し付ける。そのまま背を向けて帰ろうとして…
「ヒイロ…負けないで」
少しだけぼくに顔を向けて、ぽつりとボタンがそう言った。
-つづく-
スタスト3枠目はどく組でしたニンニン。
まぁ回想シーン(作中では端折ってますが)とか見るに、不良グループではないよねこの子ら…言い方悪いけど、スクールカーストぶっ壊そうとして下剋上事件起こすトラッシュ生徒の集まりのような(
まぁ銃の代わりにポケモン使ってるから平和平和(平和とは
したっぱ連中はかなりイキがってる感じあるけど、こいつらも元いじめられっ子が虚勢張ってるだけなのか、比較的最近加入した連中(結成の発端を知らない世代)の中にはガチ不良(いじめっ子側)も加入してそうなのがな…
一方しれっとゼイユ(グラエナの方)のテラスタイプをお披露目。実はレイド発の子なのであった。毒テラスってバレたら本人に怒られそうだよなぁ…いや、綺麗なバラにはなんとやら的な解釈して許すかも?w
ちょっとスターモービル戦でやられかけたので、そろそろキタカミブーストでごり押しするのも大変かな…しばらくジム巡り優先して強化した方が良さそうですね。
次回はまた番外編!