炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#ポケモンSV】ぼくの冒険レポート:番外編⑧~ゼイユと通信対戦!【#ポケモンと生活】

今日は約束していた、ゼイユとの通信対戦の日だ。

『ルールはフラット!対戦方式はダブルバトル!異論ないわね?』
『おっけー!いつでもいいよ!』

【ポケポータル】というスマホロトムに搭載されたアプリで、ボックス機能を介することでデータ化したポケモンたちを電脳世界に投影することができる。さらにスマホロトム同士をつなぐことで、遠くイッシュ地方にいる彼女との対戦も可能になるのだ。

ちなみにぼくたちはゴーグル状に変形したスマホロトムを目元にかざすことで、電脳世界に入り込む形をとっている。

…科学の力ってすげー。

『そんじゃ行くわよ…グラエナ、ヤバソチャ!』
『お願いね…エルダマスカーニャぽにこオーガポン!』

自分たちそっくりのアバターがお互いに向き合って、モンスターボールを投げた。

 

 

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『あーあ…まーたあたしの負け!相変わらず強いんだから…ヒイロは』

半ば呆れたように微笑むゼイユのアバターが拍手を送ってくれる。電脳世界の無機質なバトルコートから切り替わり、サロンと呼ばれる待合エリアに移っている。ここでは通信対戦の感想を言いあったり、フリーの対戦相手を探すアバターたちが数人いた。

『いや、今回はちょっと危なかったよ。正直ぽにこの仮面のチョイス失敗したと思ったもん』
『前にキタカミで勝負したときもかまどの面使ってたから、対策してたんだけどねぇ…やっぱチャンピオンは違うわ』

ま、次は勝つけど!とカラっと切り替えが早いのはゼイユの良い所だ。多分ぼくが負けたらしばらく立ち直れないだろう。

『って、あれ?そういえば、ぼくチャンピオンになったって言ったっけ?』
『あっきれた…!あんた知らないの?それぞれの地方でチャンピオンが決まるってのは結構な大ニュースになるのよ?それにブルーベリー学園はオレンジアカデミーとの姉妹校だし、生徒が何か凄いことをやったらすぐ共有されるのよ』

そうなのか…え、っていうことはチャンピオンぼくに挑戦しようとする他のプレイヤーに話しかけられたりしないかな?有名人なんでしょ?

『ちょーしに乗んないの。まぁ、それもあるかもって思ったから、いまあたしたちはプライベートモードに設定してるわ。せっかくこうやって顔を合わせて話せるんだもの。邪魔されたくないじゃない?』

アバターとはいえ、そんなことを言われるとドキっとなってしまうわけで…

『そういえば、ブルーベリー学園のコト少し調べたんだけど、学内にポケモンリーグみたいなのがあるんだって?』
『ああうん、ブルベリーグっていうの』

生徒間のバトルの強さをランキングにしており、その上位にはパルデアや他地方のように四天王を擁しているという。

『まぁ、細かいことは実際に来てのお楽しみにってことで』
『ゼイユのランクは?』
『…それもナイショよ』

すぐもっと上に行っちゃうからね。とゼイユが不敵な笑みを浮かべた。

 

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『そっか…そろそろ行くのね、パルデアの大穴』
『うん。多分あっちだと、スマホロトムでの通信も難しくなっちゃうから…しばらくはこうやってお話できなくなっちゃうと思う』
『それはちょっと…寂しいわね』

ゼイユがちょっと意外なことを言う。向こうにだっておしゃべりする友人とかいるだろうに。

『それはそれ、これはこれよ。あんたとおしゃべりするのだって、あたしにとっては大切な時間だもの』
『そ、そう…ま、まぁすぐに帰ってくるよ。オーリム博士の手伝い?とかするだけだし』
『あんたの夢なんでしょ?大穴の冒険。すぐ帰ってきたらもったいないじゃない』
『それは…そう、だけど』

隣にいたゼイユのアバターの手が、ふわっと浮かんでぼくの頭に触れた…ように見えた。

『…しょうがないけど、やっぱり触れないわね。フリができるだけ』

わかってたけど、と笑うゼイユの表情は、アバター上はただの笑顔にしかならないけれど、どことなく寂しさのようなニュアンスを感じた。

『…会いたいなぁ、ヒイロに』

いつもの元気な…というか元気すぎるくらいなゼイユからは想像がつかないくらいの小さな声が、スピーカー越しに聞こえる。

『…会えるよ』
『え?』
『大穴の…エリアゼロでの用事が終わったら、すぐ戻る。そしたらアカデミーに言って、交換留学生に志願するよ』

志願が通るかはわからないけど…でも何とかなるとは思う。仮にもパルデアチャンピオンになったわけだし。いざとなったら…

『いやなにする気よ怖いわね…』
『あはは!』

悪い顔をするぼくに、ゼイユが少しばかり調子を取り戻したようだった。

『…会いに行くよ。いろいろ終わったらさ。エリアゼロの冒険は、それからだって遅くないもの』
『…あんた、いつの間にそんな生意気なこと言うようになったのよ?』

ふふっと笑って、ゼイユがアバターのぼくのほっぺをつまんで引っ張る。やっぱりというか、痛みはないし、アバター含めて実際に引っ張られるわけでもない。

『…じゃ、待ってるからね』
『うん、待ってて』

今度はぼくがゼイユのアバターの頬に触れる。

そこに彼女のぬくもりはなくとも…ぼくがそうしたかったから。

 

 

   -つづく-

 

 


通信対戦についてと後編「藍の円盤」に向けての準備回のようなものです。どうやらエリアゼロではポケポータルに入れないようなので、ゼイ主回も後編開始までおあずけですなー。

通信対戦となると、ちょっとストーリーからは離れてしまいがちなのですが、アカデミーのバトル学の授業において講義にもなったので、あの世界ではわりとフツーに組み込まれているものと解釈した次第。さすがにスマホロトムのゴーグル変形とか、ポケポータルのサロン空間かそういうVRメタバースじみたギミックは本作オリジナルですが。
いずれ今後の作品でストーリー中にリモートバトルとかあったらいいなぁ…

僕個人は通信対戦にあんまり興味はないんですけどね(台なし

ゼイ主としては、自分で書いといてなんですがだいぶ近づけてきた感がありますね。これ以上は後編のシナリオを待たないとですが。これでまだ付き合ってないとかうせやろおまいら…?