「…新型のドライバー?」
王様たちが収めるチキューへと通じる次元の裂け目を、その収縮を抑え込みながら仮面ライダーギーツナイン…こと浮世英寿が聞き返した。
「ああ。まぁ新型っつーかデザイアドライバーの改良型ってのが正しいけどな」
その情報をもたらしたウィン曰く、ペーパープラン止まりで実装にまでは至らなかったという。その実態は、本体に増設された特殊なシステムにより、変身者の感情の昂ぶりに応じて出力が強化される…というものらしい。
「その感情の向きはプラスだろうがマイナスだろうが、怒りじゃなくても悲しみでだって際限なく強くなれる。極論を言やぁ、小型バックルの装備で大型バックル相手に逆転も不可能じゃねえ…ってのはさすがに言い過ぎかもしれねえがな」
「随分なシロモノだな…もぐもぐ…だが、感情の昂ぶりで強化されるんじゃあ、ゲームとしてはどうかと思うが」
「そだな。改良型の開発を止めたのはギロリらしいが…まぁあのおっさんの考え方ならさもありなん、だわ」
しかし、新型ではなく改良型ゆえ加工が容易なことから少数が生産された…という記録が残っている、とウィンが語る。
「神殺し事件のメラ…クロスギーツもな、あのアホみてーな強さもその改良型を使ったんじゃねーか…って思ってな。いくらギーツの創世の力を奪って得た力っつっても、バッファとブジンソードのタイクーンを相手にフルボッコにしちまうなんて、さすがに規格外が過ぎんだろ?」
「確かにな…あむ」
「まぁ、ヤツが捕まった後の取り調べ内容とかこっちに降りてくるわきゃねーから、結局推測でしかねーけどよ。もしそんなのが、あっちの世界のデザグラで使われてたら…ちょっとやべーことになりそうじゃね?」
まぁ使われてるかどうかは知んねーけど…と肩をすくめて、ふとウィンが英寿に視線を向けなおした。
「…つかよ、おめーさっきからなにやってんの?」
「見てわからないか?食事だ。ほら姉さん、もう一口」
次元の裂け目を抑えるために両手が塞がる英寿が、ひな鳥のように口を開けて見せる。促されたツムリが「姉さんじゃありません!」と突っ込みながら、切り分けたチーズケーキを英寿の口元へと運んだ。
「創世の力を維持するにもカロリーを消費するからな…あむあむ…はい一口」
「なんて羨ましい…」
「うらやましがらないでくださいウィン様…」
ボヤきながら残ったチーズケーキの切れ端をまとめて英寿の口に押し込むと、ツムリはお茶を淹れるためにサロンのカウンターへと引っ込んでいった。
「…まぁ、仮にその改良型とやらが使われたとしても…」
押し込められたチーズケーキを飲み込んで、英寿がにやりと笑って見せる。
「あいつらなら大丈夫だ」
「それは、神様としてカンかい?」
「いや…仲間としての、さ」
その屈託ない言い分に、ジーンが膝を打って破顔する。
「皆さん!大智様から連絡がきました!」
と、カウンターの奥からスパイダーフォンをかかげてツムリが飛び込んできた。
-つづく-
幕間、ではありますが黒幕組ではなく、サロンでお留守番中のメンバーによるお喋り。
叡智編でちょこっと語られていた、プレイヤーたちが奪った王様戦隊の装備の出力が上がったことへの(一応の)アンサー的な感じですね。もちろんクロスギーツが使ってたかも疑惑含めて二次設定なのですが。
感情なら何でもありなので、コバルギーツことメーガみたいなちょっと鬱屈してるような感じの奴でも出力は上がるようです。人間である以上何かしらの感情はありますしねー。そらギロリも使うのを嫌がる。
次回から再び本編。2番手はどこの国でだーれだ?