『チキューに住まう全ての人間に告ぐ』
──それは蒼天の霹靂であった。
『我が【ゴッカン】は、本日現時刻を以って…残るすべての国に対し、宣戦を布告する』
僻地ゆえの画質の荒い映像と雑音交じりのその声は、しかしはっきりとそう伝えた。
「どういうこと…?」
チキュー6王国がひとつ、【シュゴッタム】の若き王、ギラは慌てて通信端末・キングスホットラインでゴッカンの王であるリタ・カニスカに連絡を取るが…
『通じねえぜ。さっきっから俺も鬼電してんだがうんともすんともいわねえ』
ふわりと謁見の間に通信用のモニターデミシュゴットが現れ、【ンコソパ】の王、総長ヤンマ・ガストがそう告げる。次いでほかの国からの通信を、同型のデミシュゴットが届けにきた。
『進軍…と言っていいのかはわからないけど、実際にこっち方面に向かってる人の流れは確認しているわ。ゴッカンに軍はないはずだから…まさかとは思うけど』
【イシャバーナ】の女王ヒメノ・ランが険しい表情を見せると、彼女の懸念を汲んで隣のモニターから男の声が響く。【トウフ】の王殿たるカグラギ・ディボウスキである。
『恐らく、ゴッカンに収容されている囚人を解き放ったのでしょう。まぁ言ってみれば烏合の衆、さして脅威にはなりますまいが…』
とはいえゴッカンに収容されている罪人の数は、一国の人口に匹敵するとも言われている。その罪状も大なり小なりとはいえ、荒くれものと言っていい種類の人間が他国へ侵入しようものなら…
『つーわけでだギラ、シュゴッタムの王様ならもう知ってると思うが…』
「うん、防衛出動の要請…だよね」
ゴッカンと同様、ンコソパ、イシャバーナ、トウフにも軍隊は存在しない。そのため有事の際にはシュゴッタムから兵力を派遣するという約定が存在するのだ。
『早急にお願いするわね』
『バグナラクとの戦いが終わり1年…よもや久しぶりの要請が、チキューの民同士の戦いになりますとはなぁ…』
カグラギの少々わざとらしい嘆きを最後に緊急のオンライン会談は終了し、モニターデミシュゴットたちは所定の位置に戻っていった。それを見届けて、ギラは傍らの側近へと声をかける。
「ドゥーガさん、防衛出動の準備を!」
「承知致しました。では軍の編成と各国への派遣を…」
「…おおっと…そういうわけにはいかねえなァ」
ギラとドゥーガしかいないはずの謁見の間に、第三者の声がこだまする。
「誰だ!?」
声のした方へ振り返る…ギラが座っていた玉座…その裏側から、ぬらりと人影が現れた。
「ギラ様…!」
ドゥーガが剣を構え、ギラを守るように前に出る。玉座の影に隠れていたそれは、照明に照らされ追々そのシルエットを明らかにした。
「この国の兵は、たった今から…この俺が使うんでな。よそになんざくれてやる余裕は…ないッ!」
一足跳びに飛び込んだ影は、手にした刃のその切っ先を真っ直ぐに向け──
「王鎧武装!」
転瞬、従者をかばう王の剣に阻まれた。
「…ハッ、判断に迷いがないな。さすが、若造でも王は王…シュゴッタムの王冠を頂くだけのことはあるってェことか」
「何を…っ!」
オージャカリバーを振り抜き、その勢いのまま相手を押し出すと、ギラ…クワガタオージャーは改めて賊と対峙する。
漆黒の体躯に、顔には鮮血を被ったかのような真紅に染まった狐面。それはギラが知るどんな戦士とも異なるいでたちであった。
「…お前、何者だ!?」
「仮面ライダー…エクスギーツ。この国の…いや、この惑星の…王となる男だ」
・
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・
──宇宙の片隅の惑星、チキュー。
6つの王国が収めるこの惑星に、新たな脅威が迫っていた…!
これは平和を守護する王たちの物語。そして…
──仮面ライダーと呼ばれる者たちの物語である。
王様戦隊キングオージャー✕仮面ライダーギーツ
HEROES EXCEED!-キングスゲーム-
始まりはこのツイート…いや、ポストからでした。
ツムリ「今回のデザグラは『王様ゲーム』です」
— 炎部(ほむらべ)紅蓮@ときドル文章部 (@h_GREN) 2023年8月6日
英寿「…なんて?」 https://t.co/Ao4yMEBLBQ
甲子園で放送なかった日ですねー。このクッソしょーもないポスから始まり、あれやらこれやらネタを考えてるうちにギーツが最終回を迎え―のキングオがまさかの第一部完!をやるのが決定しーので色々整合性を合わせつつ(面倒なところは「スペシャルやしな!」で片づけつつ)、とりあえず形にはなってきたので(とはいえ2割ほど未定部分ありますが)もう書いちゃろ!となりました。
一応、各作品の時系列としてはそれぞれギーツ最終回及びキングオ第1部の後日談(26話から約1年後)ということにしてます。王様たちのビジュアルは1部時と変わらずってことでひとつ。
突如宣戦布告したゴッカンの真意とは? ギラの前に現れた紅いギーツの正体は?
導入は、まだもう少し続きます…とさ♪