炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編小説】しょうねんスケッチ【二次創作】

 私立やまぶき高校の美術クラスは、やはりというか圧倒的に女子の人数が多い。
 それでも美術に情熱を注ぐ男子生徒がいないわけでもなく、クラスの3分の1は、そんな夢に向けて歩き出した“彼ら”なのだ。

「なぁ、お前らって好きな奴いんの?」

 …とはいえ、多感な年頃である。
 女子ほどではないにせよ、こーいった話題に花が咲くのもまた自然。

「けっこう可愛い子いるもんなァ。ウチのクラスだけじゃなくて、上の学年とかにもさ」
 ましてや自分の周りほとんどが女子である。


   *


「宮子とかどーよ? ああいう元気な奴、俺結構気に入ってんだよねー」
 スタイルも悪くないしな。とケラケラ笑う。
「んー、悪かないけどさ。付き合ったら食費だけで倒産しそうだぜ」
 以前学食で彼女を見かけたというクラスメイトがジト汗をかきながら呟く。
 特盛クラスのカツ丼を平然とたいらげて尚、午後の授業でお腹へったーと訴えていた彼女だ。迂闊にデートに誘ったら財布の中身が瞬時に彼女の胃袋に消えてしまいそうで怖い。
「いや、まさか…」
 と否定しきれない辺り、さらに怖い。


「オレは2年のヒロ先輩を推すね。なんて言うの? こう、包容力があるっつーかさ」
 言っている本人は褒め言葉のつもりなんだろうが、もしこの会話を本人が聞いていたらショックで1週間は食事制限に入りそうである。
「あのピンクのくせッ毛も柔らかそうでいいよなー」
 同意を示した友人に、同士!とばかりに熱い握手を交わす。


「いやいや、ここは同じ先輩でも沙英さんだね。知ってるか? あの人『月刊きらら』って雑誌で恋愛小説書いてんだよ。俺ファンなんだよな」
 それがどうした? とばかりに首をかしげる面々に、彼はちっちっち、と指をふる。
「考えても見ろ。恋愛小説だぞ恋愛小説。しかもかーなーりーリアル。これは経験豊富じゃねぇと書けないと見た。つまりだ…」
 一拍置いて

「…お姉さんの恋の手ほどきとか受けれるわけだよ!!!」

 お姉さん。
 恋の手ほどき

 甘美な響きに、男たちが色めきどよめく。


 …無知とは恐ろしいものである。



「ちょい待ち。手ほどきならもっと適任がいるじゃん」
 唐突に声を上げるクラスメイトの声に、放課後の教室に静寂が訪れる。

「…吉野家先生」
 担任の姿を思い浮かべる。まずは顔。
 そして―――その胸。

「…おっぱい星人め」
「にゃにおう!?」
 確信を突かれ、青少年が赤面ののち自爆した。

   *

「そーいや、お前はどうなんだよ。さっきから黙ってるけどさ」
「えぇっ?」
 友人に声をかけられ、一人の男子生徒が驚く。
 クラスメイトの中でも引っ込み思案なきらいのある彼は、頭に一人の少女を思い浮かべ、耳まで真っ赤になった。


 ちょこっと小柄で。
 なんかいつも眠そうで。
 笑顔が、とても柔らかで可愛い女の子。

 あの子が笑っただけで、今日一日が幸せ。
 …そんな、女の子。
 


「…お、もしかして好きな奴いるのかよ」
「へぇ、お前にねぇ~」
「折角だから白状しちゃえよっ!」
 周りからべしべしと叩かれ、想い人の名を告げるよう促される彼だが、あまりの恥ずかしさに声がうまく出せない。



    「…○○」


「…は?」
「誰?」
 やっとの思いで答えた名字に、仲間達は疑問符を浮かべる。

    「…同じ、クラスの」

 ヒントのように続ける彼の言葉に、ようやく合点がいった。

「あぁ、あのコか」
「髪にバッテンつけてるコだっけ?」
「あのちびっ子かぁ…盲点だったなぁ…」
 当人が聞いたら全力でショックを受けそうな発言が飛ぶ。

「……っ」
 赤面してうつむく少年の肩を、級友が軽く叩いた。
「いいじゃねえか。結構お似合いだと思うぜ?」
「…そう、かな?」
「自信、持てよ!」
 今度は盛大に背中をはたかれ、一瞬呼吸が止まった。

「まァ、まずは話しかけるところから、だな?」






  *

 翌朝。

「―――あ、あのっ…お、おはよう!」
 クラスメイトの男子生徒に声をかけられて。

「うん。おはよう、○○くん」
 ゆのは、柔らかな笑顔を彼に向けた。


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 はーい、2008年初の二次創作執筆ですよー

 えと、一応ですが「ひだまりスケッチ」の二次創作です。
 …誰一人原作キャラ出てませんね。すんません(蝶汗


 でも反省はしない(ぉ
 えー、だってだって、一応ゆのさん出てるよ?(ラスト2行で)

 今回のエピソード、どうしても書きたかったんです。
 理由は原作者の蒼樹先生のHPで見かけた絵。
 原作者とは別の方が描かれたものだったんですが、アレにインスピレーションを刺激されまして。

 劇中ではたまーにしか登場しないオトコノコたちは、彼女らのことをどう思ってるのかな…

 なんて想像(というか妄想)しながら書きました。

 今度書くときはちゃんとゆのっちたちを全面に出して書きたいものです。
 …ネタが浮かべば、ですがね(超トオイメ



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