「…はっ!」
一瞬の摺り足から地を蹴り、一気に肉迫する。
「っ!」
腹に気合を溜め、正拳突きを見舞う。七弥にとっては普段よりすこし力を込めた程度だったが、イクサシステムによって増幅されたソレは、分厚い鉄板ですら大穴を明ける破壊力を持つのだ。
しかし、それですらファンガイアには脅威になりえない。
多少のダメージを与え、退がらせることはできるが、決定打にはならないのだ。
一瞬の摺り足から地を蹴り、一気に肉迫する。
「っ!」
腹に気合を溜め、正拳突きを見舞う。七弥にとっては普段よりすこし力を込めた程度だったが、イクサシステムによって増幅されたソレは、分厚い鉄板ですら大穴を明ける破壊力を持つのだ。
しかし、それですらファンガイアには脅威になりえない。
多少のダメージを与え、退がらせることはできるが、決定打にはならないのだ。
「…よし」
七弥はおもむろに左腰のホルダーからフエッスルを取り出し、ベルトのリーダーに差し込んだ。
七弥はおもむろに左腰のホルダーからフエッスルを取り出し、ベルトのリーダーに差し込んだ。
-I・X・A・K・N・U・C・K・L・E R・I・S・E・U・P-
特殊兵装のロックが外され、攻撃モードに転じたイクサナックルの先端がスパークする。
「<ブロウクン・ファング>だっ!」
強力なエネルギー弾がファンガイアめがけ飛ぶ。その威力は、ロールアウト直後でさえファンガイアを撃破したという記録を持つ折り紙つきだ。
「<ブロウクン・ファング>だっ!」
強力なエネルギー弾がファンガイアめがけ飛ぶ。その威力は、ロールアウト直後でさえファンガイアを撃破したという記録を持つ折り紙つきだ。
バチィッ!
「何!?」
しかしそのエネルギー弾は強固な皮膚に阻まれ、届きすらしなかった。
「グルゥ……」
どうだ、といわんばかりに唸り声が笑う。
「な、なら!」
もう一度ナックルフエッスルを装填し、イクサナックルにエネルギーを送り込む。
「イクサナックルごと叩き込むまでだッ!」
間合いを詰め、エネルギー弾をイクサナックルに固定したまま打撃を繰り出す。
「そりゃあぁっ!!!」
ファンガイアの胸元に、正拳のスピードと重さがのった<ブロウクン・ファング>が突き刺さる。
しかしそのエネルギー弾は強固な皮膚に阻まれ、届きすらしなかった。
「グルゥ……」
どうだ、といわんばかりに唸り声が笑う。
「な、なら!」
もう一度ナックルフエッスルを装填し、イクサナックルにエネルギーを送り込む。
「イクサナックルごと叩き込むまでだッ!」
間合いを詰め、エネルギー弾をイクサナックルに固定したまま打撃を繰り出す。
「そりゃあぁっ!!!」
ファンガイアの胸元に、正拳のスピードと重さがのった<ブロウクン・ファング>が突き刺さる。
しかし。
「効い、てない!?」
行き場を失ったエネルギーがバチバチとスパークし、目の前のファンガイアは何事も無かったかのように平然としていた。
「バカな…!?」
11年前のプロトタイプでさえ、装着者に負担をかけるという弱点こそあったものの、対ファンガイアに対しての有効手段であった。事実、“協力者”の支援があったとはいえ、チェックメイトフォーと呼ばれる上位種を退けたという経歴もあるのだ。
だが、それが今、封じられたも同然の状態であった。
現時点におけるイクサの特殊兵装は、<ブロウクン・ファング>をおいて他に無い。これが効かなければ、イクサシステムは、ただ常人より強いだけの強化服に成り下がってしまうのだ。
「…くそ、ここまでなのか…」
そして、対抗手段が無い今、遅かれ早かれ、七弥は目の前の怪物に喰われるのを待つだけとなった。
死の恐怖に、思わず目を閉じる。
行き場を失ったエネルギーがバチバチとスパークし、目の前のファンガイアは何事も無かったかのように平然としていた。
「バカな…!?」
11年前のプロトタイプでさえ、装着者に負担をかけるという弱点こそあったものの、対ファンガイアに対しての有効手段であった。事実、“協力者”の支援があったとはいえ、チェックメイトフォーと呼ばれる上位種を退けたという経歴もあるのだ。
だが、それが今、封じられたも同然の状態であった。
現時点におけるイクサの特殊兵装は、<ブロウクン・ファング>をおいて他に無い。これが効かなければ、イクサシステムは、ただ常人より強いだけの強化服に成り下がってしまうのだ。
「…くそ、ここまでなのか…」
そして、対抗手段が無い今、遅かれ早かれ、七弥は目の前の怪物に喰われるのを待つだけとなった。
死の恐怖に、思わず目を閉じる。
…が、いつまでたっても、ファンガイアの“牙”が七弥の首に突き刺さることは無かった。
「…?」
おそるおそる目を開く。と、イクサのハンティング・グラスにファンガイアの姿は映っていなかった。
おそるおそる目を開く。と、イクサのハンティング・グラスにファンガイアの姿は映っていなかった。
「しまった!」
恐怖に負け、ファンガイアの逃走を許してしまったことに舌打ちし、七弥は周辺を見回す。既にファンガイアの姿は目視できる範囲には無く、システムに備えられたセンサーも、ファンガイアの反応を見つけることは出来なかった。
恐怖に負け、ファンガイアの逃走を許してしまったことに舌打ちし、七弥は周辺を見回す。既にファンガイアの姿は目視できる範囲には無く、システムに備えられたセンサーも、ファンガイアの反応を見つけることは出来なかった。
「…くそっ」
憤りながら変身を解く。
「……だけど、もしあいつが逃げなかったら…」
ひとりごちて、恐怖に知らず身体を震わせる。早急にラボに戻り、イクサの出力アップを図らなければ。
そう思いながら、バイクに跨ろうとする七弥の視界に、見覚えのある姿が飛び込んだ。
「ん…?」
「あ…」
“彼女”は、七弥の姿を確認すると弾んだように駆け寄って来た。
「あの時の…私を、助けてくれた方…ですよね?」
七弥が頷く。先日、怪物に襲われおびえていたところを助けた、あの少女だった。
「私、ナオっていいます。あの時は本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。七弥は驚き、慌てながら「気にしないで」とだけ答えた。
「いえ、だって、命の恩人ですし…。あ、そうだ!」
ぱっと顔を上げた少女……ナオが詰め寄る。顔が近づき、甘い匂いが七弥の鼻腔をくすぐった。
「これから、お時間ありますか?」
「え、あ、いや…」
答えあぐねていると、ナオは畳み掛けるように言葉を紡ぐ。
「それじゃ、お食事、ご一緒しませんか? この間のお礼に、ご馳走しちゃいます!」
「あ…昼、さっき食べたばっかりで」
「じゃ、夕食で」
どうあっても食事に誘いたいらしい。ナオの瞳が懐っこそうにくるりと回る。
「ダメ…ですか?」
と、その表情がとたんに沈んだ。
「いや……ダメ、じゃ…ない」
その表情を見るのがなぜだか辛く、七弥が同意を告げると、ナオの顔がふたたびぱぁっとはれやかなものになった。
「それじゃ、決まりですね! あ、でも夕食の時間までヒマになっちゃいますね? どこかで、時間つぶしませんか?」
憤りながら変身を解く。
「……だけど、もしあいつが逃げなかったら…」
ひとりごちて、恐怖に知らず身体を震わせる。早急にラボに戻り、イクサの出力アップを図らなければ。
そう思いながら、バイクに跨ろうとする七弥の視界に、見覚えのある姿が飛び込んだ。
「ん…?」
「あ…」
“彼女”は、七弥の姿を確認すると弾んだように駆け寄って来た。
「あの時の…私を、助けてくれた方…ですよね?」
七弥が頷く。先日、怪物に襲われおびえていたところを助けた、あの少女だった。
「私、ナオっていいます。あの時は本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる。七弥は驚き、慌てながら「気にしないで」とだけ答えた。
「いえ、だって、命の恩人ですし…。あ、そうだ!」
ぱっと顔を上げた少女……ナオが詰め寄る。顔が近づき、甘い匂いが七弥の鼻腔をくすぐった。
「これから、お時間ありますか?」
「え、あ、いや…」
答えあぐねていると、ナオは畳み掛けるように言葉を紡ぐ。
「それじゃ、お食事、ご一緒しませんか? この間のお礼に、ご馳走しちゃいます!」
「あ…昼、さっき食べたばっかりで」
「じゃ、夕食で」
どうあっても食事に誘いたいらしい。ナオの瞳が懐っこそうにくるりと回る。
「ダメ…ですか?」
と、その表情がとたんに沈んだ。
「いや……ダメ、じゃ…ない」
その表情を見るのがなぜだか辛く、七弥が同意を告げると、ナオの顔がふたたびぱぁっとはれやかなものになった。
「それじゃ、決まりですね! あ、でも夕食の時間までヒマになっちゃいますね? どこかで、時間つぶしませんか?」
明るく語りかけるナオに戸惑いながら、七弥は胸に広がる暖かいものを感じずに入られなかった。
-つづく-
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ヒロインきますた。
今回のサブタイは、イタリアの音楽用語で「再び」「改めて」などの意味を持ちます。
余談ながら、ジョジョネタではお約束ともいえる「ディ=モールト(非常に)」も音楽用語として用いられているようですね~。
今回のサブタイは、イタリアの音楽用語で「再び」「改めて」などの意味を持ちます。
余談ながら、ジョジョネタではお約束ともいえる「ディ=モールト(非常に)」も音楽用語として用いられているようですね~。
さて、今回の敵ファンガイア。ブロウクン・ファングを2発喰らってもなおピンピンしてやがります。
劇中でも述べましたが、次狼たちの協力があったとはいえ、チェックメイトフォーの一角であるルークを一度は倒すほどのスペックを持ち、さらに11年経ってスペックの底上げもされているはずのアレを阻むってどんだけ硬いんだよと突っ込みたくもなりますがw
まぁ、サンゲイザーファンガイアみたく防御に特化したヤツもいるので、そんくらいならフツーかなと(ぉ
劇中でも述べましたが、次狼たちの協力があったとはいえ、チェックメイトフォーの一角であるルークを一度は倒すほどのスペックを持ち、さらに11年経ってスペックの底上げもされているはずのアレを阻むってどんだけ硬いんだよと突っ込みたくもなりますがw
まぁ、サンゲイザーファンガイアみたく防御に特化したヤツもいるので、そんくらいならフツーかなと(ぉ
物語はまだ始まったばかり。はてさて…?