炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

Before GREEN/プロローグ

 暗闇に色とりどりの宝石をぶちまけたような宇宙の片隅を、真紅の帆船がゆっくりと進む。

 <ゴーカイガレオン>と名づけられたそれは、いわゆる<宇宙海賊>の根城であった。


「ふぅん……あたしも有名になったもんよねぇ」

 自分を指し示す手配書をつまんで揺らしながら、うれしそうに、あるいは面倒臭そうにつぶやくのは、最近ゴーカイガレオンの新たなクルーとなった<ルカ・ミルフィ>だ。

「でも30万ってのがちょーっと気に食わないわね。ザンギャックも見る目がないなー」

 チラリ、と横目で見る手配書は、彼女の<仲間>たる二人のものだ。150万ザギンと100万ザギンの手配書には、それぞれ<キャプテン・マーベラス>、<ジョー・ギブケン>と記されていた。

「ザンギャックの武器庫からエナジークリスタルを盗んだ程度でその額のほうが破格だ。……お前、あれが初犯じゃないだろ」

 腹筋をしながらジト目を向けるのは、100万の手配書の男……ジョーだ。

「まァ、ね」としれっと答えるルカが、皿の上の肉を頬張る。と、その表情がゆがんだ。

「うえ……不ッ味! ちょっと誰よ今日の食事担当!?」
マーベラスだな。というか、よくあいつがメシ作る気になったもんだ」
「次から絶対に作らせないようにしよ。というわけでジョーお願いね」

 断る。と腕立てに移行しながらジョーが切り捨てた。

「はぁ……コックでも雇わなきゃかしら」
 自分で作る、という選択肢をとっくに排除しているルカである。

 口直しにと酒瓶に手を伸ばした刹那、船体が大きく揺れた。哀れ、瓶は粉々に砕け、中身はルカの口に届く前に床を湿らせる。

「~~~~~~~っ」

 呑んでもいないのに顔を真っ赤にしたルカが、一直線に操舵室へと駆け込んだ。


    *


「ちょっとマーベラス!!?」
「……んあ?」

 スゴーミンも裸足で逃げ出すような、憤怒の形相で睨み付けるルカを、振り向いた船長兼操舵手……キャプテン・マーベラスは気だるそうに一瞥した。

「っっったく! 料理はマズいわ操縦荒いわ、あんたあたしに恨みでもあるの!!?」
 恨み節をまくし立てるのはルカの方である。マーベラスはというと早々に興味をなくし再び舵輪に向かっていた。

「どうした、こんな何もない宙域で艦を揺らすなんてお前らしくもない」
 ルカの肩越しにジョーが顔を出す。その問いにマーベラスが憮然とした表情で答えた。

「……エンジントラブルだ。あとガス欠もだな」
「はぁ!?」

 目を丸くするルカ。この艦に乗ってまだ日が浅い彼女でも、ガレオンが今までに乗った(密航含む)どんな艦より高性能であるのは十二分に理解していた。流石にメンテナンスフリーとまではいかないが、ちょっとやそっとでイカレるような代物ではないハズだ。

「エンジントラブルはともかく、なんでガス欠まで。ルカが盗んできたエナジークリスタル……アレ、この間つぎ込んだんじゃなかったか?」
「はぁぁ!? ちょっ、何ヒトの獲物勝手に……っ!?」

 わめくルカをはさんで会話するマーベラスとジョーの視界に、彼女は入っていないらしい。

「それが突っ込んだはいいんだが、どうにもエネルギーの変換効率が悪いらしくてな」

 メインモニターのステータス画面をあごでしゃくるマーベラス。エネルギー残量を示すメーターはエンプティ一歩手前。ゴーカイガレオンの船体のシルエットに記されたデータは、エンジントラブルだけにとどまらず、幾つかの箇所に故障があることが見て取れた。

「出航してから結構経つからな。一度オーバーホールしなきゃならねえか」
「……してなかったのか」

 ジョーが呆れ顔でつぶやいた。しかしオーバーホールと簡単に言うが行うは難しだ。一応にも賞金首である彼らはお尋ね者であり、そんな彼らを受け入れるドックなどあるはずもない。

「仮に受け入れられたとしても、ここから一番近いドックは20パーセクは先だぞ。ワープに耐え得るだけのエネルギーも無いんだろう?」
「ちょっと勘弁してよ! こんな宇宙の片隅で立ち往生とかシャレになんないわよ!?」

 詰め寄るルカを、マーベラスが不敵な笑みを浮かべて制した。

「心配すんな。ちょうどこのあたりの宙域だ」
「なにがよ?」


    ―――この<ゴーカイガレオン>はお前に預ける。もしこいつに何かあったら………



 かつて同じ道を歩んだ真紅の戦士の言葉を思い出すマーベラス。生きているとも死んでいるとも知れぬ彼の記憶を、人知れず脳裏へ追いやって……聞けと言わんばかりに口を開いた。


「……こいつを、造ったヤツがいるとこだ」




     海賊戦隊ゴーカイジャー/BEGINS
     EPISODE:Don Dogoiyer/Before GREEN






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 当方のゴーカイジャー初SSはハカセことドン・ドッゴイヤーをフューチャー。

 マーベラスをはじめザンギャック側にある程度知られているメンバーの中、「こいつはまあいいだろう」とうっちゃられるなど、味方のみならず敵側からも扱いが悪い彼。
 懸賞金も最初期100ザギンだもんなぁ。上がっても1000ザギンとかどこのトナカイだ。

 そんな彼が如何にして海賊戦隊の一員となったのか……を今作では捏造(ぉぃ

 つい先日ジョーの過去エピがあっさり明かされたので、おいおい彼も……と考えると気が気じゃないのですがw

 ちょっと前に妄想しながらtwitterでつぶやいたネタがが元。私をフォローしている方々には覚えてる人もいるかと。


 多くても4シーンくらいを予定。願わくば完結前に原作で過去エピやんないでー(ぉぃ