炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【なのは】NOVELS大戦VIVIDNESS/プロローグ:1【ウィザード】

「魔導師の連続不審死?」 

 穏やかではないその一報を<八神はやて>が耳にしたのは、穏やかな午後にささやかなティーブレイクをとっている最中のことであった。 

『ええ。何者かと交戦をした形跡があったから、違法魔導師による襲撃と思われていたんだけど……』 

 と、その報せを届けた<フェイト・T・ハラウオン>執務官は言葉尻を濁す。 

「ん?」 
『あの……驚かないで聞いてね?』 

 申し訳なさそうな表情をモニター越しに向ける友人に、はやては微苦笑して応えた。 

「フェイトちゃん。いくら私が地球出身でも、魔法が跳躍跋扈しとる日常におるんよ。今更何を驚くん?」 
『そ、そうなんだけど……ええと』 

 はやてに諭され、フェイトは一呼吸おいて一連の事件の“被害者”の共通事項を述べた。 

『被害者の遺体……そのすべてから、<リンカーコア>が抜き取られていたの』 

 かたん、と。 
 少々派手な音を立ててティーカップがソーサーと衝突した。 


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 かつて、<闇の書>と呼ばれたロストロギアがあった。 

 もともとは膨大な魔法を収集するために作られたデバイス・システムであったが、長い時と多くの持ち主を渡り歩くうちにそれはいつしか呪われし遺物へと変化していった。 

 闇の書には。それを守護するプログラムが存在し、名を<ヴォルケンリッター>と言った。 
 “彼女ら”は主の求むままに動き、魔力を奪っていった。 
 その果てに待っているのが。絶望であると知らず。 

 しかし。それもようやく終焉の時を迎えた。 
 “最後の夜天の主”八神はやて。 
 当時わずか八歳にして、彼女は(友達の友達の力を借りてではあるが)闇の書の闇を砕き、すべてを救ったのである。 


 ほんの少しだけの悲しみを残して。 


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「……“闇の書事件”の再来、か……」 
「シグナムっ!」 

 はやてから話を聞いた、ヴォルケンリッターが将、<シグナム>の呟きに、傍らにいた小柄な少女が激昂した。 

「お前の言いたいことはわかる、ヴィータ」 

 <ヴィータ>と呼ばれた少女は、いら立ちを隠すことなく表情にあらわす。その震える肩を金髪の女性がやさしく抑えた。 

「夜天の……というより、“闇の書”のようなものが、そう何冊も存在してほしくはないけれど……」
「もともとは大容量のストレージデバイスだからな。類似品や模造品の類もなくはないだろうが」 

 金髪の女性……<シャマル>がそう呟けば、その隣で座る蒼い毛なみの狼……<ザフィーラ>が口を開く。 

「……いずれにせよ憶測の域は出んよ。犯人を捕まえない限りはな」 
「だから私らが……っ」 

 模造品によるものか、あるいは模倣犯・愉快犯の類か。いずれにせよ自分たちの過去を玩具にされていることに憤慨するヴィータであったが、彼女の……というより、“ヴォルケンリッターによる捜査”を止めたのはほかならぬはやて自身であった。 

「主はやては、自らが囮になると言われた。ならば我らはそれに従うまで」 
「なのはもフェイトも、あいつらなんで止めねえんだよ。友達だってのにさ」 
「友だちだからこそ、ですよ」 

 ヴィータの疑問に答えたのは、はやての相棒ともいえる融合騎<リインフォース・ツヴァイ>であった。 
 その言葉に、他の面々も深くうなづく。 

「はやて――むちゃすんなよ」 

 主を守ることを許されぬ鉄槌の騎士は……いや、彼女を含めた夜天の騎士全員が……その無事を祈るほかなかった。 

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「……さて、囮をかっては出たものの……」 

 一方、はやては管理局の制服……厳密には、一般隊士のものだが……を身にまとい、夜の摩天楼にその姿をさらしていた。 

「どないやったらええもんかな……?」 

 相手がある程度の魔力を持った魔道士を狙ってきているのは間違いないだろう。リンカーコアの蒐集を目的としているのならばなおさらだ。 
 というわけで、はやては自身の魔力を全身から滲み出させ、“撒き餌”を振りまいている最中であった。 

「さすがに露骨すぎるやろか?」 

 犯人に警戒されてしまえば、この行動自体が無駄に終わってしまう。これ以上被害を出したくないはやてにとって、それは避けるべき事態だ。 

「……まぁ、可能な限りやってみよ……ん?」 

 再び歩き出したはやての感覚が、魔力の流動をとらえた。振り返ると、眼前の空間に突如として魔法陣が浮かび上がったではないか。 

「なんやこれ……? ミッドともベルカとも違うけど……?」 

 魔法陣に近づくと、不意に陣の中央からぬっと人の手が現れた 

「な!?」 

 その“手”は何度か何かを探るように動くと、やがて引っ込んだ。 

「あ、魔法陣……」 

 手と同時に消えた魔法陣に、何かの手掛かりを感じたはやては、意識を集中して先ほどの魔法陣が現れた際の魔力の波動を探る。 

「――おった!」 

 足元に“気配”を感じ、視線を下に向ける。と―― 

「……え?」 

 先ほどと同じ魔法陣から、青年が顔を出していた。 

「……白?」 
「――!!!」 

 ふと聞こえた青年の声の意図することが分かった刹那、はやての足がその顔面を蹴りぬいた。




     魔法少女×仮面ライダー/NANOHA & WIZARD 
     NOVELS大戦 VIVIDNESS-ヴィヴィッドネス- 




 

 これは、魔法使いと魔法使いのお話。 

 最後の希望と不屈の心が重なるとき、物語は鮮やかに色をつける――! 


 ッてな感じで。 

 ウィザードとなのはのクロスオーバー。 

 リリカルマジカル、ショータイムだ! 


 時系列的にはウィザードが11~12話ごろ。ハリケーンドラゴンまで発動可。 
 なのはが「ViVid」のDSAA開始直前あたり(ヴィヴィオ組がミウラやヴィクターとの面識がない頃) 

 ・・・・・・の予定。展開次第で変えるかも(いいかげん 

 次回はもっかいプロローグ。ウィザード側です。


※2013年3月21日mixi日記初出