「ほうほう…こいつがデモンスレインか…」
オヤカタと交わした約束を果たすべく、聖剣を携えて武器屋へ顔を出す。
「ソルの鍵と融合して、さらに管理人殿…ドラゴンの娘御の力を得たっちゅうんじゃろう?いやはや…なんとも…」
何度も何度もため息をつきながら、オヤカタが刀身を舐め回すように見つめる。
「まさか“盟約の聖剣”をこの目にする日がくるとは…いや、長生きはするもんじゃて…」
そんなにすごいの?
「若、お前さん知らんと使うとるのか?勿体無いぞい!ドラゴンとの盟約の証なぞ、この世の長きにわたる歴史の中でも数えるほどしか存在せんのだぞ?」
少し長くなるが、話してやろう。
そういってオヤカタはどっかりと腰掛ける。
「そも、ドラゴンとグマ…もとい、人間との絆は今日に始まったものじゃない。遠い遠い昔…それこそ“空の叙事詩”に謳われる時代のもっと先にまでにまで遡る…」
先代の竜王である、黄金竜オブリス…つまりフランの祖父にあたる…は、神歴と呼ばれた時代、アルダ大陸のグロムバルク王家の祖と盟約を結び、その証を一振りの剣とした。
「その名を…“聖剣クラゼリオス”。ほれ、部屋に飾っとる、大地に突き立った剣の絵があるじゃろ。アレじゃよアレ」
その剣は、代々グロムバルク家に受け継がれていたが、空の叙事詩によると、一時期喪失していたのだという。
「もっとも、後の円卓の騎士が見つけ出し、魔王オル=オーマとの戦いではその力が一助になったと聞くがな」
へぇ…今もあるのかな?
「さてのぅ…今なお円卓の長たる光の騎士が携えているのか、それとも他の“シュバリエユース”同様にどこかへ消えてしもうとるか…」
シュバリエユースって?
「うむ、神歴の時代において、光の精霊神により託された武具のことじゃ。クラゼリオスもその中に含まれておる。じゃが、永き時代を経るに連れてその多くが散逸し、空の叙事詩の時代では、クラゼリオスともうひとつ、“クランナリン”という杖を残すのみだったそうじゃがな」
クランナリンは、エルフの巫女が代々継承するという星の杖だ。かの魔王オーマの魅了の力“オーマの波動”にも耐えうる力を持つらしい。
「こいつも今となっちゃあ所在は知れんが…まぁ、継承者がエルフなんだ。案外当時の継承者が今も持っておるかもな」
喋りすぎて喉が渇いた、と言ってオヤカタが水を一杯かっくらう。
「っと、話が逸れたの。まぁ、記録されとる歴史の中でも、ドラゴンとの盟約で生まれた剣なぞクラゼリオスしか存在せんかったのだ。そこへ、このダール地方の片隅に、新たな盟約の聖剣が生まれた…こいつは、ちょっとした“歴史”じゃぞい」
その聖剣、ゆめゆめ大切にせいよ?
そう言ってオヤカタはガハハと笑って見せた。
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「そういえば、まだまだ探索が続くらしいの?敵さんの元締めを倒したっちゅうのに難儀なことじゃ」
はは…まあね。
「ま、ワシとしちゃあ珍しい武器がまだまだ見れそうで楽しみが増えるがの。そうそう、シュバリエユースほどじゃあないが、伝説に謳われる武具は他にもあるぞい。例えば…“村正”とかな」
あ、前に似たようなの見つけたことあったよね。刀だっけ?
「…ありゃ“村止”な。別もんじゃ別もん」
なんでも、血に飢えた呪われし魔性の妖刀…とかなんとか。
「魔界には妖刀を打ち続けている一族が居るとかまことしやかに語られたもんじゃが…ま、眉唾じゃな」
まぁ、見つけたらまた見せに来るよ。
「はは、気長に待っとるぞい。しかし、お前さんらが冒険を辞めてしもうたら、さすがに武器との出会いは望み薄じゃろうな…その時は諦めて郷里(さと)へ帰るかのう?」
「えーっ、そ、そりゃ困るだよオヤカタさんよぉ…」
と、武器屋の戸が開き、賞金稼ぎのコンビが顔を出す。
「ホントだべさ。オヤカタさんがオラたちの武器さ整えてくれるようになってから、稼ぎも調子いんだよ。もうオラたち、オヤカタさんなしじゃ生きられねっぺさ」
「控えめに言って気持ち悪いぞお主ら…。というか、いつまでもワシに頼っとらんで、もう少しいい武器の出るサークルまで出張らんかい。こっちはナマクラを少しでもよく研ごうと要らん苦労を強いられとるんじゃぞ?」
武器のメンテナンスだって絶対ではない。何度も何度も研いでいれば、並の剣ではすぐに目減りしてしまうだろう。
「もうデモンの出現に怯える必要もないんじゃ。ここらで一発ドカンとやってこんかい!!」
一喝して賞金稼ぎたちを追い出し、再び呵呵大笑していると…
「オヤカタ!客追い出してんじゃねえよ!」
店主に怒鳴られたオヤカタはペロリと舌を出していた。
−つづく−
久々にオヤカタ登場。せっかくなので盟約の聖剣とかレア武器の話。
村正は「蒼き翼のシュバリエ」で見つけたきり、ほかのチームラゲーではお目にかかったことがないですねぇ…
村止を見つけたのは実話ですw
そういえば、攻略サイトの考察で「レジェンドロッド=クランナリンでは?」ってのがあったけど、2で当のクランナリン出ちゃったんだよねぇ…💧
さすがに2の時代まで来たらあの子も天寿を全うしてる可能性はあるけど…サークルに横流しちゃダメだと思うの(