炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】番外編:自己紹介をしよう!

「自己紹介を〜、しましょ〜♪」

 

朝食に頼んだ生姜焼き定食(何の肉かは聞かないでおいた)に舌鼓を打っていると、ディーネがそんなことを言い出した。

 

「折角ご縁があって仲間になったのですから〜親睦を深めるためにも〜相互理解は必要ですよ〜」

 

仲間になった覚えはないがな。あくまで協力関係だ。

 

「んも〜、またそう言うこと言う…イジワル言ったらメッ、ですよ〜」

「まぁ実際、互いを知るのはいいことだな。なんだかんだ、アタシらもここで会ったのが最初だし」

 

え、お前ら全員初対面だったのかよ? その割には随分と仲良さそうに見えたが…はー、女子特有の距離感って奴かねぇ…。

 

「じゃーアタシからな!」

 

ブゥン!と金棒を振り回して構える。危ねえ!

 

「やあやあ遠からん者は音にも聞け、近くば寄って目にも見よっ!」

 


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「アタシはキリク!誇り高き”百鬼族”が最強の勇者、族長カーンの娘・戦士キリクだ!」

 

決して狭くはない勇者ギルドの建物内によく通る声で名乗りを上げる。他の隊の勇者どもが何事かとこちらをうかがうが、キリクの姿を目の当たりにしたとたん、慌てて視線をそらす。

 

「わかったからもうちょい声のトーン落とせ…」

「…コホン」

 

 自分もちょっと恥ずかしくなったのか、おずおずと椅子に座りなおす。なんでやったし。

 

「まぁ…さっき言った通り、アタシの親父様は百鬼族で勇者って呼ばれた歴戦の戦士でさ。アタシはそんな親父様に憧れて…いつか、同じ勇者になりたいって、ずっと思ってたんだ」

 

そこへ降ってわいた妖精の国からの招へいと勇者の銘である。そりゃあ張り切りもするだろうな。

 

「もちろん、これは終わりじゃなくて始まりだ。女王様の期待に応えて、竜王の塔を支配してるっつー魔王どもを全員ブッとばす!そうすればアタシは晴れて本当の意味で勇者になれるって信じてる」

 

なるほど、それがキリクの目的というやつか。

一片の曇りのない瞳で、夢を語るその姿は、どうにも俺にはまぶしすぎた。

 

 

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今度は言いだしっぺのディーネが手を上げる。

 


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「わたくしはディーネ。クラスは魔法使いよ~。もともとはただの精霊…スライムだったんだけど~、あることがキッカケで~こうやってヒトに近い姿と力を手に入れたの~」

 

見た目同様、随分と特殊な出自のようだ。

 

「どうしてかっていうのは、話すとちょ~っと長くなっちゃうから。また今度ねぇ~」

 

キリクと違って、目的も特にはっきり言わずに座りなおす。まぁ、胸に秘めておきたいこともあるんだろう。

 

「んふふ〜…女性は秘密を纏うほど美しくなるものなのよ〜」

 

ノリかい。

 

「もともと魔法生命だから~魔法はお手の物よ~。後方支援はまかせてねぇ~♪」

 

そういや、水っぽい見た目のわりに撃ってる魔法は火の魔法だったな?

 

「ふふふ~実際水系統の魔法の方が得意なんだけどね~まぁ、それもいずれね〜」

 

 

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「…わたし、ナナシ。一応、忍者」

 

続いてディーネが指名したナナシは、言葉少なに名乗る。

 

「こう見えて、不死族アンデッド。こっちに呼ばれる前に目覚めた記憶があるから…多分、死にたてホヤホヤ」

 

…そんなホヤホヤは嫌だ。というかこう見えてもなにも、どう見てもゾンビっぽい見た目だし。

 

「だからかはわからないけど、死ぬ前の記憶が無くて…ナナシって名前も、名前思い出せないって言ったら、キリクがつけてくれた」

 

なるほど。自分の記憶を取り戻したいってのが目的ってとこか。

 

「…あなた、エスパー?」

 

ナナシが目を輝かせて詰め寄る。んなわけあるかい。

 

「そう、わたしは死ぬ前のわたしのことが知りたい。忍者としての技術は体が覚えていたから、きっと生前も忍者だったんだと思うけど…」

 

死体となってもなおその身に染み付いた忍者の技能を使い続けていれば、それがきっかけで記憶を取り戻せるかもしれない…と、彼女は考えているようだ。

 

 

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「ほら~、次はイヅナちゃんですよ~?」

「ひっ…!」

 

 ディーネに促されたイヅナが、飛び上がらんばかりに立ち上がる。途端にオレたちや、ほかの勇者たちの視線に晒され、見る間に汗だくになっていく。

 


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「そ、そそそそそ、それがし…イヅ、イイイイイイヅナと申すすすっ」

 

…噛んだ。

 

「ええと…アタシらはほら、こんなナリしてるだろ?だからほかの勇者連中にも敬遠された挙句にあぶれちまったんだけどさ。イヅナの場合は…まぁ、こういうこと」

 

いわゆるコミュ障ってヤツか。誰にも話しかけられないまま…あるいは話しかけられても会話が続かないうちに離れられたってとこかね。見た目だけなら悪くないというか、引く手あまたっぽい容姿はしてるんだがなぁ…狐族だっけ?

 

「ま、そのおかげで腕の立つサムライを仲間にできたってのは大きいけどな」

「つか、塔の中だともう少しマシに会話できてなかったか?」

「せ、戦場であれば…多少は…マシに…」

 

ディーネに背中をさすられながら呼吸を整えて、当のイヅナが応える。

 

「ご、ごごごご迷惑をおかけするやもしれませぬが…何卒よろしくお頼み申す…っ」

「ほら落ち着いて~ひっひっふ~」

 

ディーネからなんか違う呼吸法のレクチャーを受けながら、ようやく自己紹介を終えてイヅナが突っ伏した。

 

 

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「さて次は…ウール?」

「…ぐぅ」

「やっぱり寝とんのかいっ!」

 

丸まって寝息をたてる白い毛の塊に、キリクが金棒のフルスイングを打ち込む。「みゃん!」と奇妙な鳴き声?を上げた件の羊娘は、頭を上げて寝ぼけ眼をしばたたかせた。

 

「容赦ねえなオイ…」

「この子、見た目の割に頑丈でさ…これくらいしないと起きないのよ」

「ほぼ初対面っつったのに詳しいのな」

「その短い間に四、五回叩き起すハメになったら、そりゃ詳しくもなるわ…」

「お、おう…」

 

ふわわ、と大きなあくびをひとつして、ウールがちょこんと会釈する。

 


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「私、ウール。お仕事はー、僧侶クレリックー…おやすみー」

「いや寝んなよ!」

「…いひゃい。えー、他に言うことーないよー?」

 

まあ、ないならないで構わんけども。

 

 

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「じゃ、最後はアンタね」

「おう…」

 

オレの名前…は…

 

「…アノン。クラスは銃使いガンナーだ」

 

そう名乗ったオレをキリクは一瞥し、ややあって「…嘘だろ、その名前」と呟いた。

 

「なんでわかる?」

「アタシら百鬼族は、嘘を見抜く力があんだよ。まあ、全部が全部見抜けるわけじゃねーけどな。今みたく、アンタ自身が嘘だって自覚してる程度のモンなら簡単に見破れるね」

 

さいですか。

 

「まあ、偽名みてーなもんじゃあるがな。だが、別に本名名乗ろうが偽名名乗ろうが関係ねーだろ。オレはお前みたいに嘘は見抜けねーから、お前や他の連中が偽名かどうかはわからんし」

 

…ナナシはともかく。

 

「フン…まあいいや。少なくともガンナーだっつーことは嘘じゃあねーし、今はアノンって呼んどいてやる」

「…そいつはどうも。まあ協力する以上は、それ以外のことは出し惜しみはしねーよ。いくら復活するってもポンポン死ぬのは御免だからな」

「ああ、それでいいぜ」

 

少しばかり納得いかなそうな表情で、それでもキリクが頷いた。

 

 

   ‐つづく‐

 

 


 

完全誰得な、うちの子紹介パート。まあ簡単なキャラシだと思ってくだされ(ぇ

時系列的には、前話である1日目のダンジョンアタックの手前。

地の文での“食事と簡単な自己紹介を〜”のとこね。

どのへんが簡単なんじゃい、とか言わない(

 

各メンバーの名前のネタ元などメタ的なあれやらこれやらは、Twitterの方でちょこちょこボヤいてるので、興味がありましたら。

 

ちなみに主人公ことアノンの絵が無いのは、基本的にアノンがプレイヤー、すなわち僕のアバターであり、挿スクショの画面は原則プレイヤーの視界という理由のもとです。

とはいえ彼もれっきとしたPCなので、ちゃんとアバターはありますよーってことで。


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…ね、オッサン呼ばわりされるでしょ?(ひでえ

三十代半ばをイメージしてますが、の割に言動がちょいちょい若い気もしますね。

まあ、意図的なんですが(ぇ

 

さて、とりあえずプレイそのものと執筆についてはデミヘイムクリアするとこまでは一旦進めたいかなと。そっからはまたデモンゲイズ2に戻りますので、併せてお楽しみに

 

ノシ