炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【#モン勇】幕間:勇者ミツテルと奇妙な苛立ち

魔王フレイを討伐して、一晩が過ぎた。
オレは次なる界層に挑む準備のため、朝食がてら装備の手入れを行っている。

 

チュッケ「食べるか弄るかどっちかにしようよお行儀悪いねェ…」

 

「食べるか弄るかどっちかにしようよお行儀悪いねェ…」

チュッケが渋い顔をしているが、時間は有効に使うのがオレの流儀である。

今回の魔王討伐で、秘宝【ミョルニル】の力を得たオレたちだったが、その力ではオレの目的である元の世界に戻ることは叶わなかった。

「女王を問い詰めても、どの魔王がどの秘宝を持っているかなどわからねーっつーしなァ…」

残る魔王は6人、奪われた秘宝も後6つ。最悪、全ての魔王を倒すまでは帰れない可能性も…

「…ちょっといいかな?」
「あん?」

不意にかけられた声に我に帰ると、いかにも勇者といったいでたちの青年が佇んでいた。オレたちと同じ、勇者としてこの国に招かれた一人だろうか。

「はじめまして。君が、魔王討伐第一号となったっていう、アノン隊のリーダーさんかな?」
「…魔王討伐の件はそうだがアノン隊じゃあねーよ。キリクの奴に聞かれたらぶっとばされんぞ?」

一応、オレらの隊は(本人の強い要望(ゴリ押し) で)【キリク隊】として勇者ギルドには登録してある。オレとしちゃ誰がリーダーでもやる事は変わらんからどうでもいい事だが。

「ああ、そうなんだ?君の隊、人間が君一人しかいないからてっきり…」
「どー言う意味だそりゃ?つーかお前誰だよ?」

オレの指摘に、勇者コスの男は「おっと失敬」と気障りに返す。

 

ミツテル「僕は勇者ミツテル。気軽にミッチー⭐︎とでも呼んでくれたまえ」

 

「僕は勇者ミツテル。気軽にミッチー⭐︎とでも呼んでくれたまえ」
「で、そのミツテルさんとやらがオレに何の用だ?」
「…いやなに、数ある勇者隊の中で最も早く魔王討伐を達成した(クラン)がどんな人たちか気になって…ね」

と言ってミツテルが不躾に顔を近づける。野郎にジロジロ見られる趣味はないんだがな。

「ふうん…アノンさんだっけ?君、“異邦人”かい?」
「イホウジン?」

聞き慣れない単語をオウム返しすると、ミツテルがやたら懇切丁寧に説明してくれた。
曰く、異邦人というのは別の世界から妖精の国が存在するこの世界へと転移してきた…あるいは転移させられた人間のことを指すらしい。
だがその理屈だと、勇者として召集された連中の殆どが異邦人ってことにならねーか?

「いや、異邦人というのは、そういう転移者の中でも特に『魔法などの超常現象が存在しない世界』から転移してきた『人間』のことを指すのさ」
「何だよそのピンポイントな設定は…」
「異邦人が飛ばされてくるのは、場所や時代を問わないらしい。例えば僕は、2020年代の日本という国からやってきたのだけれど…」

そう言って、ミツテルがまたオレをジロジロと見回した。

「君は…そうだね、着ているものなどからして…19世紀…西部開拓時代のアメリカ人とみた!」

どう?当たりかな?と厭に人懐っこく突っ込んでくるミツテルに対し、オレは「さぁな」と返しておく。

「またまた〜。隠さなくてもいいのに。同じ異邦人…勇者なんだからさ」
「隠すもなにも確証がねーんでな。こっちくる前の記憶がどうにも曖昧でよ」

誤魔化してもよかったが、要らない詮索をされそうなので先んじて言っておく。

アノン(anonymous)なんてのも、名前すら覚束ねえから仮で名乗ってるだけだしな」
「…なるほどねぇ。ま、そういうことならそれでいいや」

屈託のなさそうな笑みを浮かべて、ミツテルはどっかと向かいの席に座る。

「ところで、君たちアノン隊…いや、キリク隊だっけ?君以外のメンバーは随分個性的だよね?鬼に、スライムに…アンデッドもいたっけ」
「ま、そうだな」

ふと、初めて話した時のことを思い出す。多少の差異はあれど、あいつらはその特異な容姿を主な理由に、他の隊に加われなかったのだ。つまり、目の前にいるこいつも…だろう。

「いやぁ、あんな連中が魔王を倒せる実力があったなんて恐れ入るよ」

 

  ──イラッ

 

「手懐けるの、大変だったんじゃない?あ、それとも調教の賜物って奴?いずれにしてもアノンさん、いい拾い物したよホント」

 

  ──ムカっ

 

「あーあ、こんなことなら最初売り込みに来たとき仲間に引き込んどきゃ良かっ…」

叩いていた軽口は、ミツテルの頬を掠めた銃弾によって止められた。

「な、何…!?」
「ああ、悪い。手入れしてる最中だったからな。ちょい手が滑った」
「手が滑った、って…!」

引き攣りながらも抗議の声を上げるミツテルの鼻先に、熱を帯びたままの銃口を突きつける。

「よく知らねえ癖に、あいつらんこと適当言ってんじゃあねーよ。これ以上口滑らせんなら…」

カチリ、と撃鉄の音が厭に響く。

「またぞろ手が滑るかもだぜ…?」

ミツテルの顔中から吹き出した汗の一滴が、テーブルを濡らした。

「ちょっと!何やってんの!?勇者ギルド内での揉め事はゴハットだヨ!!」
「揉め事じゃねえよ。銃の手入れしてたら暴発しただけさ。だーれも怪我なんてしてねえぜ…な、ミッチー⭐︎?」
「…あ、ああ…うん」

当事者二人から否定され、「ならいいけど…」とチュッケが引っ込む。

「というか、食事しながら手入れなんかするからだヨ?気をつけるよーに!」
「へーへ」

ギルドの主人の小言を聞き流しているうちに、ミツテルは姿を消していた。何がしたかったんだアイツ?

「ふわわ…おはよー」
「うお!ウールか…見てたのか?」
「なーにーがー?」
「…いや、なんでも」

見てねーならいいや…

「あのひとー、わたしー、あんまりすきじゃー…ないなー」
「あの人って、さっきの勇者コスプレのヤツか?」

こくんとうなづく。見てんじゃねえか…

「あのひとー、わたしの毛ー、嫌だって言ってるのにー…触ろうとしたからー」

ちなみにその時は一緒にいたキリクが連れ出して無事だったらしい。距離感バグってんのかあいつは…

「ま、誰しも触れられたくねーもんはあるわな。オレも気をつけるわ」

 

ウール「…アノンくんならー…べつにー…」

 

「…アノンくんならー…べつにー…」

ウールの最後の呟きは、冷めた目玉焼きを一飲みするオレには届いていなかった。

 

 

   -つづく-

 

 


さて、地獄の夏休みシフトも無事終わったんで、モン勇リプレイ再開しますわよと。

とは言え今回はいつもの二次創作パート。ライバルパーティの顔見せ回。一応6人設定してますが、本筋に絡んでくるのはリーダーのミッチー⭐︎だけになります。多分。

けっこう意図的にアレな感じのキャラにしてますが、うまい具合にヘイト集まるかな?(ぉぃ

 

次回からは久々のリアルプレイ。また地図を書くお仕事が始まるよ…