そして、月曜日。
家庭科・調理実習の当日である。
「おはー、瑞…きっ!?」
いつものように声をかけた縁の顔が凍りついた。
「あ~…おはー、ゆか」
振り返った瑞樹は、傍目でもすぐ判るほどにやつれ、形容しがたいオーラを身に纏っていた。
「ど、どうしたのよ? 寝不足? もしくは気分悪いの?」
「どっちかといえば前者だけど、後者もちょっと当てはまるかも」
訊くに、昨日一日使ってクッキー作りの特訓をしていたらしい。
回数を重ねるごとに、完成度は上がっていったらしいが、その後の厨房は見るも無残な光景になったとかならなかったとか。
「でも、これでクッキーならなんとかなるわ。…ありがとね、ゆかちゃん」
「何言ってんのよ。努力したのは瑞樹でしょ」
憔悴しきった顔が、穏やかに笑った。
*
「では、今日の実習ですが…カップケーキをつくります」
メタボ一歩手前…というかもはやストライクゾーンなおばさん教師がにこやかにそう言った。
「…………ぇ」
縁の視界に、ギギギ…と振り返り、恨みがましい視線を向ける瑞樹の姿が映る。
(いや、自分で次はクッキーだって言ってたじゃないの)
そんな目ぇされても、とアイコンタクトを送る。
どうやら瑞樹、ページを勘違いしていたらしい。
ちなみに縁は、調理実習の内容に関しては殆ど気にせず、事前情報はスルーしている。大抵のものは作れるからだ。
「ど、どうしようゆかぁ~…」
実習開始と同時に縁にくっつき、すがる。
「ま、まぁ大まかな流れはクッキー作るのとあんま変わんないからさ。あとは分量とか、焼き加減に気をつければ大丈夫よ」
「自信ない~。ゆか、手伝ってよぉ」
「班違うんだから無茶言わないの」
瑞樹が、涙目になりながらすごすごと自分の班へと戻る。
彼女が属する班にも、お菓子作りが得意なコはいたはずだから、なんとかなるだろう。
そうたかをくくる縁だったが…。
「ちょ、ちょっと杠葉さんっ、生地跳ねてる。跳ねてるからっ!」
「わぁっ、流し込みすぎた!?」
「うそっ、オーブンの中が大変なことになってるんだけどっ!!」
瑞樹やクラスメイトの悲鳴が途絶えることは、当分なかった。
-つづく-
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大変長らくお待たせいたしましたーm(_ _)m
てゆーかカップケーキって高校の調理実習でするのかな?
ウチの学校(工業高校)はお菓子系を作った記憶は無いなァ…
まぁ、家庭科の授業に午後からの3時間をまるまる当てる時間割だと、お菓子作っただけじゃ余裕で余るもんなw
うん、ぶっちゃけ記憶が曖昧なんだ。
http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=homurabe
↑web拍手です。てめー執筆遅いんだよゴルァ! な突っ込みは…あんまりしないで(逃