背後からのノックに、小姫は一瞬びくっとなる。
「……俺だ」
それが知った声であることに安堵し、入室の許可を告げる。
「どうだ、彼女の様子は?」
開口一番、友人の安否を聞いてくる。当然といえば当然だが、自分のことは心配してくれないのか。小姫、心の隅でそう思い、すぐに振り払う。
「…ようやく落ち着いたところですわ。先ほどまで眠っていても泣いているようで…」
見ていていたたまれなかった。大切な友人が辛い思いをしているのに、何も出来ない自分に苛立ってもいた。
「……俺だ」
それが知った声であることに安堵し、入室の許可を告げる。
「どうだ、彼女の様子は?」
開口一番、友人の安否を聞いてくる。当然といえば当然だが、自分のことは心配してくれないのか。小姫、心の隅でそう思い、すぐに振り払う。
「…ようやく落ち着いたところですわ。先ほどまで眠っていても泣いているようで…」
見ていていたたまれなかった。大切な友人が辛い思いをしているのに、何も出来ない自分に苛立ってもいた。
「……郁人」
「なんだ?」
「なんだ?」
否、出来ないで済まさない。
少しずつ乾いていく梢の涙のあとを見ながら固めていた決意を、紐解く。
少しずつ乾いていく梢の涙のあとを見ながら固めていた決意を、紐解く。
「犯人を、見つけましょう」
「却下」
「却下」
「!!!」
郁人は無表情に言い放つ。対照的に小姫の顔が紅く激昂に染まる。
「事は俺たちが手を出せる問題じゃない。後は警察に任せろ」
「でもっ…」
「でもじゃない」
「でもっ…」
「でもじゃない」
郁人の目が鋭く小姫を見据える。
「…いいか。実際に人が殺されてる。これはフィクションじゃないんだ。推理物好きのお嬢さんが面白半分に首を突っ込んでいいもんじゃ…」
「面白半分じゃありませんわ!!!」
「…いいか。実際に人が殺されてる。これはフィクションじゃないんだ。推理物好きのお嬢さんが面白半分に首を突っ込んでいいもんじゃ…」
「面白半分じゃありませんわ!!!」
郁人の言葉をさえぎり、小姫の声が跳ねる。
「力に…なりたいのっ。梢の…大切なお友達の…」
その白い頬を、涙が伝う。
その白い頬を、涙が伝う。
「この子…いつも底抜けに明るくて…私にないもの…いっぱい持ってて…。
そんな子が、こんなに目、真っ赤に腫らせて、泣いてるなんて…私には耐えられませんの」
犯人を見つけたからといって、それで彼女の笑顔が戻るとは限らない。
そんなことは解っている。解りすぎるほどに。
そんな子が、こんなに目、真っ赤に腫らせて、泣いてるなんて…私には耐えられませんの」
犯人を見つけたからといって、それで彼女の笑顔が戻るとは限らない。
そんなことは解っている。解りすぎるほどに。
「多分…私にできることは、これくらいしかないから……」
手の甲で涙を拭い、凛とした瞳を…少し赤く腫れてはいたが…郁人に向ける。
手の甲で涙を拭い、凛とした瞳を…少し赤く腫れてはいたが…郁人に向ける。
「………ったく」
なんて真っ直ぐな目をしてやがる。
強い視線を受け止めきれず、郁人は目を逸らし溜息をついた。
なんて真っ直ぐな目をしてやがる。
強い視線を受け止めきれず、郁人は目を逸らし溜息をついた。
「わかったよ。…ただし」
「?」
「俺も協力する。ここに来てる刑事に知り合いがいてな。頼めば現場にも入れてくれるだろ」
恐らく彼にはいらない苦労をかけてしまうだろうが。
学生時代の、困った顔を浮かべる友人の顔を思い出し、軽く苦笑する。
「?」
「俺も協力する。ここに来てる刑事に知り合いがいてな。頼めば現場にも入れてくれるだろ」
恐らく彼にはいらない苦労をかけてしまうだろうが。
学生時代の、困った顔を浮かべる友人の顔を思い出し、軽く苦笑する。
「それに……」
「それに?」
「それに?」
「俺も彼女の……ファンの為に、何かしてやりたくてな」
そう言いつつ、郁人は懐のシガレットケースから、シナモンスティックを抜き取る。
そう言いつつ、郁人は懐のシガレットケースから、シナモンスティックを抜き取る。
「……やるぞ。折角の誕生日を台無しにしたヤツを、俺たちで見つけ出す」
かりっと小気味いい音をたてて、咥えられたシナモンが軋んだ。
-つづく-
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ひさびさー。
思えば、あの一件後初の更新になるわけで。
いやまあ、だからどーだってやつですけどね(トオイメ
いやまあ、だからどーだってやつですけどね(トオイメ
少なくとも表層ではフツーっぽいし、まあなんとかなるのかな?
…なんとかして欲しいところですが。