炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

そのよん/しーん2

 バスでの移動から、康助は既に舞い上がっていた。
 いつも学校では二言三言会話できればいいほうで。
 だが、今日はかなりの頻度で会話をしている。

 …と言っても、瑞希からの質問に応えているのが主なのだが。

(それでも、メアドとか誕生日とか聞いて来たのは、脈アリとか思っていいのかな…)

 <よろしくね♪>と送られてきたメールに保護をかけて、心の中でにんまりと笑う。
「気が向いたらメール頂戴ね?」
「うん。あ、でも俺、用件がないとメール送れないタチなんだよなぁ」
「あ、実は私もー」

 などと他愛の無い会話が続く。一瞬、このままバスに乗りっぱなしでも悪くないなぁ、とか思う康助であったが、本日のメインイベントはこれではない。
「あ、もうすぐ着くみたいだね」
 瑞希が窓の外を指差す。目的地たる<フェアリー・テイル・ランド>の、現実離れした景観が広がっていた。

 バスを降りた二人は、さっそく入り口で入場の手続きをとる。優待券で割引された入場料は、康助が払うつもりだったが、瑞希がそれに異を唱えた。
「自分の分は自分で払うよ」
「いいって。今回は俺が誘ったんだし」
「そういうわけにもいかないよ」
 意外に頑として譲らない瑞希。とはいえ康助とて引き下がれない。妙なにらみ合いが窓口の前で繰り広げられ、受付のお姉さんは少し困惑顔だ。
「…じゃ、じゃあこうしよう。次回は割り勘でいいから、今回は俺に払わせて」
 次回、などと妙に都合のいい発言ではあるが、康助がそう提案する。
 すると、それに納得したのか、瑞希が大きく頷いた。
「ん、じゃあ、次ね」
 その言葉に、内心心踊る康助。
(次か…次誘ってもOKってこと…だよな?)
 意気揚々とお金と入園チケット…ここではパスポート型の小冊子になっている…を交換し、康助は瑞希とともにゲートをくぐるのであった。

 『ようこそ、<フェアリー・テイル・ランドへ>!!!』


「ね、ね。なにから乗る?」
「そうだなぁ…」
「私、あれに乗りたいなぁ~」
 にこにこしながら瑞希が指差すのは…
「…え゛?」
 古めかしい暴走機関車をモチーフにしたジェットコースターだった。
「ほらほらっ、早く行こうよ~」
 有無を言わせぬ笑顔の瑞希に、康助は引きつりながらも頷くしかなかった。


   -つづく-


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 なんかいろいろ書いてたらこっちがおろそかになっていた件。
 3ヶ月ぶりだぜ。わはは(笑いごっちゃない

 フェアリー・テイル・ランド全体のイメージモチーフは閉園しちまった倉敷チボリ公園暴走機関車型ジェットコースターは某ネズミーな遊園地のアレです。

 いつも一番最初に読んでもらっている某女史より、とある部分で突っ込みをいただき、なるほどそうかと思い立って修正。うん。なんかそれっぽくなった。