放課後の杏樹学園。
橙に煌く陽光を窓越しに浴びながら、一人机の上に置かれたカートリッジとにらめっこをする少女。
―――否、彼女は…もとい、“彼”は、女ではない。
姿こそ、女子制服……そもそも、この杏樹学園自体が女子校なのだからさもありなん、なのだが……で、長い髪をリボンで結んでいる、かなりの美少女なのだが……
名を、伽峨覚夜。
現在、ここ杏樹学園において、唯一在学を許されている男子学生である。
「…ふぅ」
そんな“彼女”…いやいや“彼”が、ひとつ溜息をつく。妙に憂いを帯びたその表情はやはり少女のそれにしか見えない。
もう一度言おう。“彼”は、“男”である。
まるごと♡杏樹学園
覚夜と茶紗の受難と役得?
覚夜と茶紗の受難と役得?
「……あら?」
と、戸が開く音。覚夜が振り返ると、少女―――クラスメイトの佳良茶紗の姿。
「あ、茶紗」
「まだ残ってらしたんですね?」
「ああ、うん。ちょっといろいろ調べごとがあってさ」
「まだ残ってらしたんですね?」
「ああ、うん。ちょっといろいろ調べごとがあってさ」
茶紗が、机に載せられていたいくつかのカートリッジに気付く。
「これ、確か…」
「そう、他校との主従戦に向けて、みんなから分けてもらった妖力のカートリッジだよ」
杏樹学園は、世にも珍しい妖怪の学校である。
覚夜以外の全校生徒が妖怪であり、茶紗も<からかさ>と呼ばれる妖怪なのだ。
「これ、確か…」
「そう、他校との主従戦に向けて、みんなから分けてもらった妖力のカートリッジだよ」
杏樹学園は、世にも珍しい妖怪の学校である。
覚夜以外の全校生徒が妖怪であり、茶紗も<からかさ>と呼ばれる妖怪なのだ。
と、クラスメイトの名前が刻まれているその中に、自らの名前を見つける茶紗。
「…でも、ネネさんや巴さんならともかく、私の妖力じゃあんまりお役に立てないかもしれませんよ?」
「そんなことないよ」
茶紗の妖力が込められたカートリッジを、自分の短刀に装填する覚夜。
「なにも攻撃に転化するだけが妖力じゃない。たとえば、茶紗はからかさでしょ? だったら、妖力をこう…」
「…でも、ネネさんや巴さんならともかく、私の妖力じゃあんまりお役に立てないかもしれませんよ?」
「そんなことないよ」
茶紗の妖力が込められたカートリッジを、自分の短刀に装填する覚夜。
「なにも攻撃に転化するだけが妖力じゃない。たとえば、茶紗はからかさでしょ? だったら、妖力をこう…」
頭の中でイメージしながら、短刀のトリガーを引く。
「―――秘剣が唐傘の型・伽峨流“封化防陣弾”!!!」
刀身から解き放たれた妖気が、光の傘となって覚夜を守るように展開する。
「わぁ……」
目を丸くする茶紗。目の前に光るのは、確かに自分の妖力の産物である。おちこぼれの自分の力が、役に立てている…その事実に、知らず胸が熱くなった。
「まぁ、初めてだし、こんなものかな。使いようで、もっと広い範囲にも広げられるだろうし、うまくすれば、巴の妖気の直撃でもびくともしないようなのが出来るかもよ」
「すごい…すごいです!」
熱っぽい視線で、茶紗が光の傘に近づく。
「…あ、ちょっと待って! まだ初めてで出力が安定してないから触っちゃ……」
覚夜の注意は、少し遅かった。
茶紗が触れた刹那、本人の中にある妖力と、傘の妖力が互いを活性化させ―――
次の瞬間、光と爆煙が、教室を支配した。
・
・
・
・
・
「…けっほ、けほっ」
「こほっ…こほっ」
「こほっ…こほっ」
視界の効かない中、どうにか教室の窓を開け、にごった空気を逃がす。思いのほか爆発自体に力は無く、机や椅子がいくつか爆風で転がっただけで済んだらしい。
「だ、大丈夫…茶紗?」
「は、はい…なんとか…」
「は、はい…なんとか…」
ようやく煙が晴れ、お互いの無事を確認する。覚夜も茶紗も爆風で、顔も制服もドロドロだ。
「どうかした?」
「ええっと、その…覚夜さんって、そんなに胸、ありましたっけ?」
「いやいや、僕男なんだよ? 何を……」
と言いながら、ふと胸に重みを感じた覚夜が、視線を下に向け―――絶句した。
「ええっと、その…覚夜さんって、そんなに胸、ありましたっけ?」
「いやいや、僕男なんだよ? 何を……」
と言いながら、ふと胸に重みを感じた覚夜が、視線を下に向け―――絶句した。
「………あ、あれ?」
制服のブラウスを、はちきれんばかりにひっぱっているのは、まぎれもなく…乳房。
やがて、耐え切れなくなったボタンが、ひとつ跳んでいく。
やがて、耐え切れなくなったボタンが、ひとつ跳んでいく。
「…………」
おそるおそる、胸に手を近づける。触れた瞬間、“それ”は、たゆん、と弾んだ。
「…………な」
なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?
驚愕の叫び声が、放課後の校舎を震わせた。
-つづく-
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いやいや。
一方、パートナーに選ばれたのはネネでもなく巴でもなく、茶紗嬢。
何を隠そう、初登場で一目ぼれになったのは覚夜ではなく彼女なのだ!
…その後、まさかの腐属性もちに戦慄はしたものの、今でも大好きですw
さて、思わず前後編で書くハメになってしまった本作品。当然と言うか後編からが本番です。
もう百合ます。百合ん百合んです(何語だ
というか、百合初挑戦なハズなのだが俺。
ちゃんと書けるのかなァ…? 今から地味に不安だわ……
ちゃんと書けるのかなァ…? 今から地味に不安だわ……