炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【まる♡あんSS】覚夜と茶紗の受難と役得?(前編)【覚夜×茶紗】

 放課後の杏樹学園。

 橙に煌く陽光を窓越しに浴びながら、一人机の上に置かれたカートリッジとにらめっこをする少女。

 ―――否、彼女は…もとい、“彼”は、女ではない。

 姿こそ、女子制服……そもそも、この杏樹学園自体が女子校なのだからさもありなん、なのだが……で、長い髪をリボンで結んでいる、かなりの美少女なのだが……

 名を、伽峨覚夜。

 現在、ここ杏樹学園において、唯一在学を許されている男子学生である。

「…ふぅ」

 そんな“彼女”…いやいや“彼”が、ひとつ溜息をつく。妙に憂いを帯びたその表情はやはり少女のそれにしか見えない。

 もう一度言おう。“彼”は、“男”である。




    まるごと♡杏樹学園
    覚夜と茶紗の受難と役得?




「……あら?」

 と、戸が開く音。覚夜が振り返ると、少女―――クラスメイトの佳良茶紗の姿。

「あ、茶紗」
「まだ残ってらしたんですね?」
「ああ、うん。ちょっといろいろ調べごとがあってさ」

 茶紗が、机に載せられていたいくつかのカートリッジに気付く。
「これ、確か…」
「そう、他校との主従戦に向けて、みんなから分けてもらった妖力のカートリッジだよ」
 杏樹学園は、世にも珍しい妖怪の学校である。
 覚夜以外の全校生徒が妖怪であり、茶紗も<からかさ>と呼ばれる妖怪なのだ。

 と、クラスメイトの名前が刻まれているその中に、自らの名前を見つける茶紗。
「…でも、ネネさんや巴さんならともかく、私の妖力じゃあんまりお役に立てないかもしれませんよ?」
「そんなことないよ」
 茶紗の妖力が込められたカートリッジを、自分の短刀に装填する覚夜。
「なにも攻撃に転化するだけが妖力じゃない。たとえば、茶紗はからかさでしょ? だったら、妖力をこう…」

 頭の中でイメージしながら、短刀のトリガーを引く。

「―――秘剣が唐傘の型・伽峨流“封化防陣弾”!!!」


 刀身から解き放たれた妖気が、光の傘となって覚夜を守るように展開する。


「わぁ……」

 目を丸くする茶紗。目の前に光るのは、確かに自分の妖力の産物である。おちこぼれの自分の力が、役に立てている…その事実に、知らず胸が熱くなった。

「まぁ、初めてだし、こんなものかな。使いようで、もっと広い範囲にも広げられるだろうし、うまくすれば、巴の妖気の直撃でもびくともしないようなのが出来るかもよ」

「すごい…すごいです!」

 熱っぽい視線で、茶紗が光の傘に近づく。

「…あ、ちょっと待って! まだ初めてで出力が安定してないから触っちゃ……」

 覚夜の注意は、少し遅かった。

 茶紗が触れた刹那、本人の中にある妖力と、傘の妖力が互いを活性化させ―――


 次の瞬間、光と爆煙が、教室を支配した。


 ・
 ・
 ・


「…けっほ、けほっ」
「こほっ…こほっ」

 視界の効かない中、どうにか教室の窓を開け、にごった空気を逃がす。思いのほか爆発自体に力は無く、机や椅子がいくつか爆風で転がっただけで済んだらしい。

「だ、大丈夫…茶紗?」
「は、はい…なんとか…」

 ようやく煙が晴れ、お互いの無事を確認する。覚夜も茶紗も爆風で、顔も制服もドロドロだ。

「こりゃ、帰ったらお風呂だね…」
「そうですね……って、あれ?」
 ふと、ほこりを払っている覚夜の姿に違和感を覚え、茶紗が首をかしげる

「どうかした?」
「ええっと、その…覚夜さんって、そんなに胸、ありましたっけ?」
「いやいや、僕男なんだよ? 何を……」
 と言いながら、ふと胸に重みを感じた覚夜が、視線を下に向け―――絶句した。

「………あ、あれ?」

 制服のブラウスを、はちきれんばかりにひっぱっているのは、まぎれもなく…乳房。
 やがて、耐え切れなくなったボタンが、ひとつ跳んでいく。

「…………」

 おそるおそる、胸に手を近づける。触れた瞬間、“それ”は、たゆん、と弾んだ。




「…………な」


  なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?


 驚愕の叫び声が、放課後の校舎を震わせた。



  -つづく-



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 今回の元ネタは天津冴「まるごと♡杏樹学園」
 現在、角川コミックスAで全三巻が、好評発売中。読め(何故か上から目線

 テーマは、本編でもありそうでなかったトランスジェンダー…いわゆる性転換ネタ。
 まぁ、そんなんなくとも覚夜は可愛いからなぁ…

 いやいや。

 一方、パートナーに選ばれたのはネネでもなく巴でもなく、茶紗嬢。


 何を隠そう、初登場で一目ぼれになったのは覚夜ではなく彼女なのだ!

 …その後、まさかの腐属性もちに戦慄はしたものの、今でも大好きですw


 さて、思わず前後編で書くハメになってしまった本作品。当然と言うか後編からが本番です。

 もう百合ます。百合ん百合んです(何語だ


 というか、百合初挑戦なハズなのだが俺。
 ちゃんと書けるのかなァ…? 今から地味に不安だわ……