炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【シンケンSS】閑話・高校生日記

「…お」

 ある日の午後。

 稽古の合間の昼休憩に志葉邸を出た千明が、ふと気がつくと、そこはかつて自分が通っていた高校の前であった。

「そーいや、シンケンジャーになったから卒業前にいなくなっちまったんだよなァ…」

 ふと、閉ざされた校門越しに校庭を見る。夏休みではあるが、運動部も特に活動をしていないのか、砂埃ひとつあがってはいなかった。

「…ふむ」

 ふと、悪戯心がわきあがってくる。この分なら、校舎内にいる教師も数は少ないだろう。

「…やってみますか」
「なにを?」
「どわあっ!!!」

 突然背後から声をかけられ、飛び上がる千明。振り向くと、ことはがきょとん、とした顔でこちらを見ていた。




   侍戦隊シンケンジャー・幕間
   閑話・高校生日記-こうこうせいにっき-




「…へぇ、ココ、千明が通うとった学校なんやね」
「ああ。…もっとも、卒業とかはしてねーんだけどな」
「何で?…って、ああ」
 シンケンジャーの面々が集まった時期を思い出し、「ごめん」と謝ることは。
「別に謝るこっちゃねえよ。…つか、ことはは学校とかどうしてたんだ?」
「ん…中学までは行ってたんやけどな。後は侍としての修行とか、実家のお手伝いとかしてて、高校にはあがってないねん」
 なるほどな、とうなづく千明。

「せやから、高校ってどないなとこなんか、興味あるな」
 と、ことはが校舎を眺めながらつぶやく。

「…じゃ、入ってみるか?」
「え?」

 いたずらっ子のように笑う千明に、ことはが首をかしげた。


   * * *


「…な、なぁ…ほんまに大丈夫なん?」
 といいながらことはが通っているのは、学校の敷地内を囲う、塀に開いていた大穴である。
「大丈夫大丈夫。俺、しょっちゅう遅刻しててさ。こっそりココ使って入ってたんだけど、誰にも見つかったことないんだぜ」
 自慢げに鼻を膨らませる千明。その様子がなんだか子供っぽくて、ことはがくす、と笑みをこぼす。
「…何?」
「ん、なんも」

 忍び込んだ二人は、千明の先導で、校舎の勝手口へと向かう。これまた千明が遅刻対策として当時から使っていたという針金で、苦もなく鍵を開けてみせ、無事進入に成功する。

「…なんか、悪いことしてるみたいやね」
「まぁ、いいことじゃねえわな。…やめるか?」
「んーん。なんか、ちょっとわくわくしてるわ」
 えへへ、とことはが顔を紅潮させて笑う。その様子に千明も楽しそうにうなづいた。
「じゃ、いっちょ行きますか」


   * * *


「…ここが、千明がおった教室なん?」
「おう」
 3年生のとある教室に入ってきた二人。
 ことはが、ものめずらしそうにいろいろなところを見て、触っていく。
「まぁ、あんまかわんねーだろ、中学のとさ」
「ううん、なんていうかこう…“高校”って感じ、する」
 なんだそりゃ…とつぶやきつつ、千明が机に座る。
「あ、千明お行儀悪い」
 それを見咎めることは。
「いーだろ別に。一応俺の机なんだし」
 “元”だけどな。と付け加えて、からからと笑う千明。
「そっか、そこ、千明の席やったんか…」
 少し考え込んで、ことはが一人うなづくと、ちょこん、とその隣の席に座った。

「…これで、千明のクラスメートやね」
「……そ、そうだな」
 不意に向けられた屈託のない笑顔に、思わず見とれてしまい、千明の声が上ずる。

「…あ、そうや」
「なんだ?」

「……考えてみたら、うち年下やったな。そしたら…」

 ぶつぶつとつぶやきながら、ぱたぱたと教室を出て行くことは。

「……?」

 と、しばらくして、閉じられた扉がからからと開かれ―――


「―――先輩」

 ふとかけられた声に、千明は言葉を失う。

「……一緒に、帰りませんか?」

 小首をかしげて、かばんを抱えるジェスチャーをしてみせることはの姿に、制服姿が重なって見え、千明は思わず目をこすった。

「…どしたん、千明?」
「あ、いや……なんでも、ない」

 そ、それより! とことはに近寄る千明。
「?」
「さっきの、もっかいやってくんね?」
「さっきの…?」
 ええと…と、いいにくそうにする千明。
「その、“先輩”っての。もっかい呼んでくれねえ?」
「……う、うん」
 なぜだか、ふと顔が熱くなって、ことはがうつむきながらうなづいた。

「……先輩」
「…も、もう一回」

「先輩」
「もう一回」

「せ、先輩…」
「わ、わんすもあ…」

 そんなやりとりが、幾度か続き。

 気づけば、稽古の時間を大幅に過ぎていた。



   * * *


「ばっっっっっっっっっかもんっ!!!」

 大遅刻した二人に、当然のように彦馬の雷が落ちる。
 二人をみる仲間たちの視線も心なしか痛い。
 …もっとも、その視線で見られているのは千明ばかりであったのだが。

(どーせ俺がことは誘って遅刻させたとか思ってるんだろうなァ…)

 間違ってないので否定はできない。

 ・
 ・
 ・

 数分後、ようやく開放された二人が、そろってため息をつく。
「やれやれ、久々にこってり絞られたぜ」
「ほんまやね~」
 疲れたような表情で、それでも笑顔を見せることは。
「…なんか、楽しそうだな」
「ん、実際楽しかったし」
 その笑顔に、ドキッとする千明。
「あ、そうや」
「ん?」


「…今日のこと、二人だけの秘密にしよな?」

 口元に人差し指を当てた“ないしょ”のポーズで、ことはが小さく笑った。


   -了-


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 突然思い浮かんだネタ。
 かっとなって書いた。特に後悔はしていない。
 公開はするけどな。

 ことはの学歴に関しては、劇中にそれっぽい描写がないのでてきとーぶっこいてます。
 ただ、おそらく年齢的に高校生なはずなので、それに関して休学とも退学とも言っていない(千明は言ってますが)ので、そもそも高校に入学していない、と考えるのがベターかなと。

 年齢的には高校1年~2年あたりだとは思うのです。なので千明先輩。
 おのれうらやましい…俺だってことはに先輩って呼ばれてぇ!(殴


 さて、何気に緑×黄ネタがあと2つほどストックに…w

 ほかに書くネタの当てがなかったら書きますw(ぉ