炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【らき☆すた掌編】おーたむ☆ぶらいど【桜藤祭/つかさ】

 高い高い、青い秋晴れの空。

 暑くも寒くも無い、穏やかな気候である今このときは、読書や運動に最も適した季節とされ、○○の秋、などとよく称される。

 そんなひとつに、結婚があるそうだ。

 なんでも、6月のジューンブライドにつぐ需要があるとか無いとか。



「ごめん、おまたせ」
「おはよう、ゆうきくん。…あ、ネクタイ曲がってるよ」

 つかさがとてとてと俺に近づいてネクタイを直してくれる。

「はいはい、朝から仲良しオーラ見せなくていいから。早く行きましょ」
 あきれたように呟くかがみさんに促されて、俺たちはそろってタクシーへと乗り込む。


 今日は、柊姉妹の長姉・いのりさんの友人の結婚式だ。招待されたのはいのりさんを含む柊家ご一行。それに何故部外者である俺がついていっているかと問われれば、つかさ曰く

「お父さんがどうしても外せない用事でね。そしたら、『彼を誘ったらどうだい?』って」

 …とのこと。

 いや、懐が深いのかあんまり深く考えてないのか。




    おーたむ☆ぶらいど





 結婚式は小さな教会であげられた。参加者は、親族や新郎新婦の友人と、こじんまりしているが、その分なんというか、アットホームな雰囲気を感じた。

 ……いつか、俺が結婚式をあげるようなことがあれば、こういうスタイルも悪くないかもな。

「……どうしたのゆうきくん? にこにこして」
「え? あ、いや…なんでも」

 隣で首をかしげる恋人に悟られないように、平静を装ってみる。

 まぁ、まだまだ先の話ってやつだな。



 滞りなく式は終わり、ほどなく教会そばの公園で2次会がスタートした。


 新郎新婦の友人たちが、入れ替わり立ち代り二人に近づき、祝いの言葉をかけたり、のろけ話を聞いてあきれたりしている。


「…ふふっ、お嫁さん幸せそうだなぁ~」
「そうねぇ…」

 花嫁を憧れのまなざしでみつめるつかさとかがみさん。

「その幸せをこっちにも分けて欲しいものだわ…」
「同感…」

 やや斜に構えて呟くのはその姉たち。
 とはいえ、やっかみのたぐいではないのは、その優しげな表情を見れば一目瞭然だ。

 一方、俺はというと新郎のほうを観察してみる。仲間達の言葉に、時に照れ、時にあせりながらも、しっかりと花嫁の隣をキープし、その肩をやさしく抱いているその笑顔は、花嫁同様、心から幸せそうに見えた。
 やっぱり、好きな人とずっと一緒にいられるってのは、それだけで幸せなんだなと思う。

 …そりゃ、それ以前に乗り越えなければならないことがたくさんあるってことくらいは、いち学生に過ぎない俺だって分かっているつもりだけどさ。




「あ、ブーケトス始まるよ! ブーケトス!」


 誰かの声に、急に周囲…主に女性陣が…色めき立つ。



 ブーケを手にした花嫁を前に、たくさんの女性が集まっていく。まつりさんといのりさんも中にいるようだ。


「それじゃ…いきますよ~っ」

 満面の笑みの花嫁さんが、 後ろを向いて、ブーケを放り投げる。これを一番最初に手にした未婚女性は、次の花嫁になれる……ってヤツだ。


 舞い上がるウェディングブーケ。黄色い声が、少し離れた場所にいる俺の耳にも届くほどだ。

「必死だねぇ……」

 当人達が聞いたらにらまれそうな呟きを、オレンジジュースと一緒に飲み込む。

 と、不意に強い風が吹く。それにあおられたブーケは、まるで羽根が生えたかのようにその飛距離を伸ばし……

「…え?」

 なぜかこっちに飛んできた。

「わっ、たっ、ととと…」

 そして思わず捕まえてしまう俺。

 ……うわ、女性陣の視線が怖い……

「あ、あーっと……」

 とりあえずこの視線から逃れるために。

「…はい!」

 隣にいたつかさに突き出した。


「……あ」

 きょとんとするつかさに、今度は責めの視線が一気に和らぎ、ほほえましいものを見るかのようなそれに変わった。


「……案外やるわね、ゆうきくんって」
 ぼそっと呟くかがみさん。

「え? ……あ」


 自分の行動を思い出し、顔から火が出そうになった。


「あ、あの……ゆうきくん?」

 それはつかさも同じようで、耳まで真っ赤にして俺を見ている。
 参加者達も興味津々と俺達を見ていた。


「……」

 覚悟を決めなければならなそうだった。


「……ええと」

 改めてブーケを持ち直し、ささげるように、つかさに差し出す。


「……これからも、よろしく」

「……うんっ。ずっと……ね」

 満面の笑みで応えたつかさが、ブーケを受け取ってくれた。とたんに喝采に沸く広場。

「あらあら、祝福されまくりね。どっちが主役なんだか」

 微苦笑するみきさんに、俺も照れ笑いで返す。

「お父さんがいなくてよかったかもね。この瞬間見てたら卒倒してたかも」

 かがみさんが意地悪く笑ってそう言った。

「まぁ、いたらいたで、ちゃんと言うよ。娘さんをくださいっ…くらいは」
「お、よく言った! それじゃ早速言いにいこうか!」

 まつりさんががしっと俺の腕を掴んで引っ張っていく。

「えぇ!? や、ちょ、それはなんと言いますか心の準備というものがですねぇ!?」
 慌てる俺の様子に、周囲がどっと笑う。

 その場にいた人たちは、みんな笑顔で。

 俺も、もちろんつかさも、笑顔で。



 そんな、晴れた秋の空の下。
 つかさの胸に抱かれたウェディングブーケの香りが、胸いっぱいに広がっていた。



   -fin-




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 ちょっと筆休め的なノリでらき☆すたをひさびさに。

 オータムブライドってのが最近人気らしいですね。いや詳しくは知らんのですが。

 ウェディングドレスといえば、かつてコンプエースの付録でこなたやかがみんが披露していますが、個人的には主要メンバーで一番似合うのはつかさだと思うのです。次の付録に期待しているぜ角川さんよ…(ニヤリ

 さておき。結婚式の風物詩であるブーケトス。

 実は、男性が投げるバージョンも存在したり。
 もっとも、投げるのはブーケではなく花嫁さんのガーター。つまり靴下止め。

 口でとめ具をはずすのがルールだそうなのですが、それってつまり花嫁のスカートの下にもぐりこむ…というかなりおマヌケかつエロスいことこの上ない状況に。

 なので、1次会ではまずやらないイベントかとw



 …まぁ、どっちにしろ今の俺様には全力で縁のないモノですがねっ(蝶トオイメ