ちらほらと舞う粉雪。そんな空を仰ぎ見ながら、冬だなーなどと今更に呟いてみる。
ふわりと浮かぶ白い息を見送って、オレは隣の家の呼び鈴を押す。
―――ややあって。
軽やか…とはちょっと言いがたい、慌てた足音が置くから聞こえて、はたと止まる。
「……いらっしゃい」
「うん」
「うん」
柔らかな黒髪をポニーテールでまとめた少女が、笑顔で出迎えてくれる。
オレの幼馴染で、腐れ縁で……
大切な、恋人。
「あ、あんまりじろじろ見ないでね。掃除してないのばれるじゃない」
困ったような笑みを浮かべる都子が「ちょっと待っててね」と部屋を後にする。とりあえずベッドに腰掛けてみると、机の上にちょこんと乗っかるウサギのぬいぐるみと目が合った。
「……む?」
なんか見張られているような気がして、そっと目をそらす。
(…クスクス)
「!?」
……空耳、だよな?
聞こえたような気がする笑い声はとりあえず全力でスルーすることに決めた。
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「お待たせ」
満面の笑みでおいしそうな匂いとともに現れた都子に、こっそり安堵する。ちゃぶ台をはさんで向かい側に腰掛ける彼女が、てきぱきと料理を乗せていく。
「うわあ…豪勢だね」
「ふふ、ちょっと張り切ってみました」
「ふふ、ちょっと張り切ってみました」
ぺろりと舌を出して、得意げに笑ってみせる。暖かな想いを、オレ一人だけが独占している。それが、すごく嬉しいんだ。
「はい、あーん…」
…でも、さすがにこれは恥ずかしい…いくら二人きりとはいっても。
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都子のお手製料理もいつしかなくなり、ケーキをつつきながらのんびりとすごす。
「あ、クリームついてるよ。…ううん、そこじゃなくて、ここ」
口元についた生クリームをひょいと指ですくい、ぺろりと舐める。
「……おいし。あなたの味だね」
「なんかその発言えっちぃなぁ」
「え、えっちくないわよぅ……」
「なんかその発言えっちぃなぁ」
「え、えっちくないわよぅ……」
顔を真っ赤にして反論する都子がおかしくて、軽く吹き出す。
「も、もぉ……」
頬を膨らませた都子だったが、その口がぽかりと開き、あくびが漏れる。
「…ん、寝不足?」
「ちょっと。今日のために、朝早くから仕込みしてたから」
なんともなしに言ってのける。気合入ってるというか…オレのためなんだよなぁ、と改めて思う。
「寝ちゃう?」
「や。せっかく二人きりなんだもん。いろいろお話したいの」
「いつもしてるじゃない」
「クリスマスだもん……」
「ちょっと。今日のために、朝早くから仕込みしてたから」
なんともなしに言ってのける。気合入ってるというか…オレのためなんだよなぁ、と改めて思う。
「寝ちゃう?」
「や。せっかく二人きりなんだもん。いろいろお話したいの」
「いつもしてるじゃない」
「クリスマスだもん……」
理由になっているようななっていないような。
それでも、満ち足りたおなかと、空調の効いた穏やかな室温に、都子はこくり、こくりと船を漕ぎ出す。
「眠いんじゃん」
「んー…ねーむーくーなーいー」
「んー…ねーむーくーなーいー」
ぐしぐし、とオレの腕に顔をこすり付ける。猫みたいなヤツだ。
「ねー……」
「ん?」
「ん?」
ぽやん、とした表情でこっちを見る。
「……しゅき……」
「……うん、オレも」
「……うん、オレも」
寄りかかる都子の髪を撫でる。とろけそうな笑顔の彼女は、心から幸せそうで。
それを見るオレも、ものすごく幸せで。
二人きりのクリスマスイヴは、ただただ穏やかに過ぎていった。
-fin-
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ハッピー・メリー・クリムゾンスマッシュ!(ベタ
イブはもう過ぎちまったがそんなこまけえこたあいいんだよ。
まぁとりあえずクリスマスなので書いてみた。
いや…マジな話ね。
「3年目のクリスマスは二人きりのイベントがある…と思っていた時期が俺にもありました」的な。
今トータルで6人ほどクリアしたけど、一部除いて全部クリスマスパーティーで3年目終わっちゃったよチクショウ。
特に都子はあのセリフからすると3年目はそーいうイベントがあるとかんぐりたくもなるはず。クリアした諸兄、お分かりいただけるだろう?
さて、既に25日ではありますが、よきクリスマスを~