――“それ”は、緩やかな“死”を迎えようとしていた。
「……エネトロン残量も……あと僅か……ですか」
つぶやいた言葉は、流れる水の中で気泡と化すのみである。
「突然マジェスティからのリンクが途絶えてから数か月……所詮私も<アバター>。不要となれば切り捨てられるのは道理でしょう……」
幾何学模様の描かれた白いコート。同様のデザインがあしらわれた奇妙なゴーグル。
それらはいくつかの戦いを経て傷つき……時折0と1の羅列がほどけた繊維のように散っていく。
“それ”の名は<エンター>
人々が<ヴァグラス>と名付けた異空間からの侵略者の偵察者である。
――否、“であった”と称すべきか。
大本であるはずの巨大コンピューターウイルスにして、ヴァグラスの首魁・メサイアからのリンクを、あるとき予告なく遮断され、“切り捨てられた”幾人も作り出されていたアバター・エンターのうちの一体が、“それ”である。
いわば<ロスト・エンター>とでも呼べる“それ”は、刻一刻と近づく消滅という名の死に対し、それでもなお抗おうとしていた。
同じように切り捨てられた他のエンターたちを倒し、そのエネトロンを吸収し生きながらえてきたロスト・エンターであったが、脚部パーツに大きな損傷を受け、さまよううちに川底へと落ち、沈んでいったのだ。
「ノン……私は……“生きる”……死ぬわけには……いかない!」
リンクを解かれた影響か、はたまた同族殺しゆえか。
オリジンのエンターが見れば“バグを起こした”と称するであろうほどの生存本能が、ロスト・エンターの身体を支配していた。
何かにすがろうと必死に手を伸ばした先……その指先に、何かが触れた。
「?」
手繰り寄せ、手につかむ。それは、小さな“スイッチ”であった。
「……トレビアン。とても強いエネルギーを感じます。エネトロンとは違う……しかし……」
とても興味深い。
そう言って、ロスト・エンターは親指をスイッチにかざす。
そこに逡巡も躊躇もない。
カチリ。と小さな音が水底でいやに響いた。
・
・
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エネルギー管理局・特命部が不可思議な異常エネルギー反応を感知したのは、そのすぐ後のことである。
「エネトロンの異常流出じゃないの?」
「いえ。エネトロンは確かに検出されていますが……それ以上に別種のエネルギー反応を確認しています。これは……まるでエネトロンとそのエネルギーが混ざり合ってるかのようで……」
黄色いジャケットの少女……<宇佐見ヨーコ>の問いに、特命部のオペレーター・森下が答える。
「混ざり合ってる、ってのが気になるね。エネトロンは存外排他的なエネルギーだ。他のエネルギーとの相性は悪いはずなんだけど……」
「とにかく行ってみましょう。森下さん、場所は?」
「はい。美星(みほし)地区――天ノ川学園都市です」
「よし……ゴーバスターズ、出動!」
特命部司令官・黒木の声が飛び、3人がぐっと左手をサムズアップの要領で握り、胸元に掲げた。
――了解!
凛とした声が重なり、3人の若者たちがシューターに飛び込んだ。
――新西暦2013年。
人々の生活を支える巨大エネルギー<エネトロン>。
それを狙い人類を脅かす存在……<ヴァグラス>。
<ゴーバスターズ>とは、人々を守る特命を帯びて戦う若者たちのことである!!!
NOVELS大戦 OVERDRIVE-オーバードライブ-
Q.ゴーバスの世界観ってパラレルワールドじゃなかったっけ?
A.公式で既に吹っ飛ばした設定です(ぇ
まぁ「スーパーヒーロー大戦」やってるしねー(トオイメ
それはともかく、企画していたNOVELS大戦シリーズ、これにて全てスタート出揃いました。
今仕事ですったもんだ(?)してるのでまたペース落ちそうです。
……といいつつ、コレ含めこれから投下する数作、仕事中に書いてますが(←コラ店長
まぁ、ぼちぼちすすめていけれたらいいなー
ちなみに。
天高の所在地を「美星地区」としましたが公式ではありません。
ゴーバスでは敵メタロイドや主題に関連する単語を知名に使ってたのでそれにあやかりまして。
つか美星だったら岡山やん天高wwww
※2013年4月9日mixi日記初出