<注意!>
本シーンでは、原典「仮面ライダースカル メッセージforダブル」の核心に触れる場面がございます。ネタバレを是としない方には閲覧を推奨いたしません。ご了承ください。
↓
↓
↓
膨大な数の書架に、それに収まった夥しい数の本、本、本……。
街の規模に対しては少々過ぎた蔵書数を誇る風都図書館が、マツの“本棚”であった。
どこに何があるのか、得るべき情報に対して、どんな資料を呼び出せばいいのか。
恐らくマツは、ここで勤務するどんなベテランの司書よりも、この“本棚”について詳しいのだろう。
少なくともマツ自身はそれを自負していたし、敬愛する相棒も、そう信じて疑わなかった。
「資料なら完成済みだよ?」
いつもどおり、指をパチンと鳴らして、ちょうど訪れた荘吉に告げる。
完璧。と含み笑いを浮かべて言い切るマツの視線の先に、コルクボードに貼り付けられた幾人かの顔写真が張られている。依頼人であるメリッサを中心に、探偵事務所の二人、メリッサが所属する矢口芸能社の関係者たちのものが、いくつかの矢印で結ばれたそれは、簡単な人物相関図を形作っていた。
「表向きは芸能事務所の社長……」
そのうちのひとり、矢口孝三を指して説明するマツに、「裏は?」と荘吉が問う。それに応え、マツがコルクボードを“裏”返す。
中央に張られた新聞の切り抜きは、女性タレントの失踪事件を扱った記事であった。
「時たま所属タレントが原因不明の蒸発をするらしい」
見出しには「また」と書かれており、ある程度の連続性が窺える。かなりクロに近づいてきたと察し、荘吉が小さく頷いた。
「なるほど……流石だ、マツ」
荘吉の賛辞に、マツが肩をすくめて笑って見せる。
「調子いいなぁ。君、ホントに役得だよ?」
普段から振り回される役どころが多いが、彼の要請につい頑張ってしまうのだと、マツが言う。
「妻子もちだって野に美女が寄ってくるしさぁ……罪な男だ」
泣かした女も数知れず。そんなマドンナたちのフォローもマツの役割だったが、あまり報われたためしはない。
「あ、そうだ。たまには泣かした人間の数……数えてみたらどうだい?」
マツの軽口に荘吉が苦笑し、「今度数えとくよ」と言って図書館を後にした。
・
・
・
相棒の背中を見送り、それが消えたのを確認して、マツは眼鏡を外した。
その瞳に、それまでの人懐っこさは消えうせ、ありとあらゆる負の感情がないまぜになって濁っていた。
「ああ、そうだよ。ついつい頑張っちゃうんだよなぁ……」
そんな自分に虫唾が走る。と小さく呟き、奥歯がギリ、と鳴る。
「まぁ、うまいこと矢口のヤツに向くよう誘導させたし?」
無論彼が“蜘蛛男”ではないことは、マツ自身が一番良くわかっている。しかしクロはクロだ。少なくとも、所属タレントの蒸発にあの男が関わっているのは間違いないのだから。
嘘を信じ込ませるにはほんの少し真実を混ぜるだけでいい……と言ったのはどこのペテン師だったか、と脳内を検索しかけ、詮無いことだと肩をすくめる。
「もうしばらくは相棒ヅラさせといてやるよ……荘吉」
どこからともなく現れた蜘蛛を手の中で遊ばせながら、マツが低く哂った。
-つづく-
大体において二次創作でも敵キャラって独自に作る自分にとって、マツのようなタイプを描くのは初めてなので、これでいいのかな? と自問自答しながらやってます。
前回のシュラウドに続き、マツに対しても本作独自の追加シーン。映画では語られない「彼が何を思って荘吉にあの資料を作って見せたのか」を自分なりに提示してみましたが……どんなもんでしょ。
……とまぁ、常に自身がなさそうに言うのもどーかと思うんですけどね。
俺は自分に自信が持てないことを自信を持って言えるぞージョジョーッ!(阿呆
さておき。
そろそろシーンタイトルのネタがヤバくなってまいりました……本編書くより時間かかるぜ……
本末転倒になりそうですが、まぁこれも創作の一部なのできっちりやっておきますよ、ええ。