炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

スーパー特撮大戦200X:第6話/シーン1

 ――時を同じくして、都内某所の石切り場。
 あらかたの資源を取りつくし打ち捨てられた廃墟で、一人たたずむ異様な雰囲気を纏う老紳士の姿……その立体映像があった。

 秘密結社ショッカーが最高幹部・死神博士その人である。


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 遡ること数刻前。

「儂に秘匿通信が入っているだと?」

 ショッカーの日本支部にて、大幹部専用の回線……本来は大首領とのホットラインに使用される……に介入があり、死神博士を名指しで呼び出しがあったのだ。
 正体不明の通信主は、しかし過去にも死神博士に通信を送ってきていたものであると、彼の記憶は知らせていた。

「あのマシンのデータを送り込んできた者か……」

 ちらりと視線の端に捉えるは、今やショッカーの主力のひとつとなった細胞増殖クローニング装置。
 しかし、その恩恵をもたらしたのは死神博士ではない。ある日突然送り込まれてきたデータを、彼がその手で再現しただけにすぎないのだ。

 天才科学者と自負していながら、あれだけの技術を、ただ模倣することしかできなかったことに強い憤りを覚えたことを思い出す。

「……面白い」

 ショッカーの、自分の前に現われるというのなら見(まみ)えてやろう。

「回線を繋げ! 儂自ら相手をしよう……」

 “死神”のプライドに疵をつけた代償、安く済むと思うな……!

 老いとは無縁な力強い眼光が、まだ見ぬ人物を射抜かんとギラついた。


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『……むっ?』

 足音をマイクが拾い、死神博士のヴィジョンが振り返る。ガスマスク姿の雑兵が一人、所在なく立ちすくんでいた。
 その姿に見覚えがある。ショッカーと同じく世界征服をたくらむ組織……新人類帝国のファントム兵士だ。
 と、俄かにその輪郭がブレ始める。カメラ越しにファントム兵士はその姿を新人類帝国の首魁……帝王バンバに変えた。バンバの超能力で、その思念をファントム兵士を媒介に実体化させた……憑霊(サイコ・ポゼッション)である。

『ほう、これはこれは……悪名高き新人類帝国の帝王バンバ殿……』
『うん? 我々以外にも通信して来ているものがおったのか……ショッカーの大幹部・死神博士とは』

 先の通信の主がバンバではないことは死神博士も先刻承知だ。そしてそれは、バンバも同じであろう。

『この私に直接テレパシーを送ってきた者が居てな……恐れ知らずもいたものだと、こうやってわざわざ見に来てやったのよ』
『なるほど、貴方もだったか……とはいえさしあたり、相手の見当はついておるようですが?』
『フフ……さすがは大幹部、察しが良いな』

 不敵に笑いあう、二人の重鎮。
 その前に、ゆらりと影が浮かび上がり、形を成した。

『噂をすれば……か』

 死神博士の視線が、“影”を睨みつける。

死神博士、そして帝王バンバ様……お二人をお呼び立てしましたのは、この……“私たち”でございます」

 影が二つに分かたれる。一人は男。そしてもう一人は、女であった。

『先に問わせてもらおう。わがショッカーにあのマシンをもたらしたのは……貴様たちだな?』

 死神博士の問いに、口元をマスクで覆い隠した男が「その通りでございます」と恭しくうなづいた。

『女、この私にテレパシーを送ったのはお前だろう?』

 今度はバンバが問い、それには妖艶ないでたちの女が口元を薄く微笑ませて首肯する。

「私は、<戦闘船団国家ナガー>からの使者……邪学者・アプファロンと申します」
「同じく闘姫(とうき)・アテファリナと申しますわ……」

 男女が呟いた名は、死神博士とバンバには聞きなれぬものであった。

『ナガーだと? 知らぬ名だな。それで……そのナガーとやらが一体何の用だ?』
『返答次第では、生かしては帰さんぞ』

 バンバの掌がすっと二人の前にかざされる。ナガーからの使者を名乗る二人は、恐れることなくそれぞれ死神博士とバンバのヴィジョンの前に跪いた。

「実は、侵略兵器の売り込みに参りました」
「我々ナガーは、宇宙の星々を渡り歩き、独自に開発した兵器を商う一族にございます」

 その技術力は既に、あなた方に提供したとあるマシンで証明させていただいている次第……と二人が笑っているとは到底思えぬ笑みで告げる。

『確かにな。あの細胞クローニング技術は、今のショッカーの技術力では再現不可能だ……腹立たしいほどにな』

 死神博士が歯噛みしながらつぶやく。

「ご理解いただいているのならばお話は早い……!」
「是非、貴方様方の世界征服のために、我がナガーの兵器をお役立ていただきたく……こうしてお願いに上がった次第でございます」

 自分たちの数段上を行く技術力の持ち主が、頭を垂れる。その異様な光景に、死神博士は訝しげに眉根を寄せた。

(奴らめ……何をたくらんでいる……)

 訝しげに二人を見やる死神博士とは対照的に、帝王バンバは不敵に笑い、二人の使者に声をかける。

『面白い! 見せてもらおうか、その兵器とやらを……!』

 その言葉に、アプファロンとアテファリナは互いに小さくうなづきあう。

「それでは……」
「我が兵力を、存分にご覧ください……」

 おもむろに立ち上がったアプファロンが指を鳴らす。次の瞬間、音もなく不気味なフォルムの巨大戦闘機が上空に出現した。


   -つづく-




 さて、ルシファードが連行されているさなかに密かに進行する悪の会談。

 これまでは名前しか出て来なかった「ナガー」が表舞台にようやく降臨。


 死神博士と帝王バンバに商談を持ちかけるのはゲーム版と同じ展開ですが、この時点では彼らはナガーの存在に気づいていなかったのがホントのところ。
 ノベライズ版においては先んじてナガー御謹製の再生怪人製造マシン(違)を送り込んでおり、その存在にうすうすながら察していたということになっています。
 なのでバンバはともかく死神博士の彼らへの第一印象がゲーム版とはちょっと変わってます。

 ……まぁやることは変わらないんですけどね(

 ゲーム版では、前回のあとがきの通り、選択肢で登場するナガー幹部が異なり、一人ずつ登場しますがそこはそれ、ノベライズ版なんでしっかり両方とも出させていただいています。
 とはいえ、シナリオ自体は「邪学者」メインなのでアテファリナの方が割を食ってしまうのは否めませんが。
「闘姫」のシナリオについては、ぜひゲーム版で確かみて見ろ!ってことでひとつ(現在入手難度がどうなってるか知らんとですが←


 さて次回。
 上空を埋め尽くさんばかりに出現した謎の巨大戦闘機。急行するアミーゴ隊とユニコーン機関のジャイアントロボ
 惜しみなく兵力を投入するナガーの、その真の目的はなんなのか……?