炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【掌編】きみとぼくの☆のくたーん【桜藤祭/みなみ】

 ―――せ~のっ


「「お誕生日、おめでとうっ!」」

 クラッカーが二つ、乾いた音を弾けさせ、リボンが数本、ふわりと舞う。

「……あ、ありがとう……」
 その先には、恥ずかしげに照れ笑いを浮かべる少女の姿。

 彼女は、岩崎みなみ
 俺の、世界で一番大切な人。




   きみとぼくの☆のくたーん




 みなみちゃんのお母さんに誕生日会に誘われたのは昨日のことだった。
 本音を言えば、二人きりで過ごしたかったのだけれど………

 まぁ、これも楽しいからいいや。



「ゆうきくん、ゆっくり楽しんでいってね。……ふふ、いっぱい食べてくれる男の子がいると、お料理も作り甲斐があるわね~」
 とはお母さんの弁。

 …というか、これじゃどっちが主賓なんだかわからないなぁ。


  ―――わふっ

「?」
 ふと、鼻息交じりの鳴き声。振り向くと、チェリーがテーブルの上にアゴを乗せてじっと俺を見ていた。
「??」

 ……どうやら、正確には俺の手の中にあるフライドチキンを見ているようだ。
「欲しいの?」
 さっきと同じ、気の抜けた鳴き声で返事。肯定らしい。
「…ふむ」
 断る理由も無いので、フライドチキンをそっと近づける。
「あ……先輩、だめ」
 と、それを制止するみなみちゃんの声。
「油ものは…犬にはだめなんです」
「あ、そうなんだ。…ごめん、知らなくて」
 慌てて手を引っ込める。しゅんとなるチェリー。
 知らなかったとはいえ、ちょっと可愛そうだ。

「ふふふ。チェリー、こっちにいらっしゃいな」
 別の食べ物を見せながら、お母さんがチェリーを手招きしていた。


   *


「楽しかったよ。女の子の誕生日パーティなんて来たの初めてだったけどさ」
「……ちょっと、恥ずかしいです」
 耳まで真っ赤になりながら、みなみちゃんが俯く。

 岩崎邸の庭で、俺たち二人は夜風に当たっていた。
 まだ残暑の名残が、風をほんのり暖めていたが、決して不快じゃなく、むしろ心地いい。

「……今日は、来てくれてありがとうございます」
 繋いだ手をきゅっと握り締めて、俺に寄りかかる。
「当然。恋人の誕生日だもの。何をおいても駆けつけるさ」
 俺がそう言うと、みなみちゃんはちょっとはにかんで、心から嬉しそうに微笑んだ。

「あ、そうだ」
 このタイミングなら丁度いい。

 足元に転がしていたバッグから、ライトグリーンの包装を取り出す。
「はい、これ」
 いかにも大量生産された金ピカシールには「Present for you」の文字が躍る。
 緩んだ表情をさらに綻ばせながら、空けてもいいですか? と尋ねる彼女に頷いて、俺はその包みが解けるのを見守る。

「…あ」
 ちょっと大きめの冊子が顔を覗かせる。ピアノの楽譜本だ。
「ピアノ、好きだよね」
 俺は中々聞く機会に恵まれないのだけど、みゆきさんたちがそんなことを言ってたのを思い出す。
「もしも持ってるヤツだったら申し訳ないけどさ」
 それが一番キツい。
 と、みなみちゃんが首をふるふると横に振る。カブってはなかったようだ。
「その本、俺の好きな作曲家のでさ。ぜひ、みなみちゃんの演奏で聞いてみたくって」
 プレゼントで俺のわがまま聞いてもらうのも、なんかヘンだけどね。
 苦笑しながらそういうと、みなみちゃんは「…ヘンじゃないです」と言ってくれた。

「これなら、少し練習すれば……すぐひける様になると思います。そうしたら……」



 一番最初に、聞いてくれますか?


 照れながら、そう問いかける彼女に、俺はもちろん、とうなづいてみせた。 




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ギリギリセーフ! …あぶねーあぶねー、日付変わるトコだったぜ(汗

てなわけでみなみちゃん誕生日おめー!

12日であることをギリギリまで気付かず、おかげで構想も30分で練り上げた全力でスピード仕事(汗

まぁ、一度誕生日を確認したときに大まかな展開を妄想してたからまだマシだけどねw

しかし、そろそろ桜藤祭脳が劣化し始めてきた感が。
再プレイをせねば!

次回の誕生日は…えと、誰だっけ?(ぉ


http://webclap.simplecgi.com/clap.php?id=homurabe
 ↑web拍手です。 作者の仕事が遅くてごめんなさい(平伏