炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

仮面ライダーBLOOD:第2幕/序幕

「はぁ…はぁ……っく」

 薄暗い通路を、足を引きずりながら人影が進む。

 ボロボロになった体は、ところどころから火花が散り、また、その頭の形状は、それが<人ならざるモノ>であることを示していた。

「…があ」

 蟷螂のそれに似た口が、喀血するように大きく開かれた。
 が、人たる証である血を持たぬゆえに、口から吐き出されるのはにごった空気のみであった。

「……こ、この私としたことが…少々予定外でしたね……」

 <ジェノサイドロイド>初號体の捕獲の任を与えられた<彼>は、反抗したジェノサイドロイドに手痛い打撃を受け、命からがら<基地>に戻ってきていた。

「しかし、ヤツが<変わる>ことが出来ることを、報告せねば…」

 そして、自らの身体を直さねば。

 ただ生き延びたい、その本能だけが、満身創痍の彼を突き動かしていた。

 生き物から逸脱した存在である彼も、死という恐怖は持っていたらしい。

「…あらぁ?」

 と、彼の行く手に、もう一つ人影が現れる。
 そのしなやかな肢体と艶かしげな声が、それを女性だと示していた。

「お、おお…!」
 その姿を見た彼が、思わず表情をほころばせる。
「随分手ひどくやられちゃったわねぇ…ああ、右腕なんて千切れちゃって…」
 心配そうな面持ちで近づいて来た彼女が、そっと彼を抱きしめる。
「フフ…ちょっと想定外な事があってな。…すまんが、司令室まで連れて行ってくれ。今回の報告をせねばならんからな」

「あら、その必要はないわよ?」

 彼女のその言葉に、彼が首をかしげる。突っ張った人工筋が軋んだ。

「<初號体>の捕獲任務、私が引き継いだから。あとはあなたから詳細を<もらう>だけ…」

 ぺろり、と彼女が舌なめずりした。その言葉の意味に気付き、彼が戦慄する……

 が、遅かった。

「いただきまぁす」

 彼が最後に見た光景は、大きく開かれた彼女の紅い紅い口腔であった。


 ・
 ・
 ・


「…ふぅん」

 蟷螂の怪人…一人分の身体を丸ごと喰らい、ゲップをひとつした<彼女>が、その記憶を読み取り、紅い唇をにやりと哂わせる。

「フフフ……美味しそうな仔……」

 さぁ、どう楽しみましょうか?

 女が享楽に笑う。床を這う彼女の影は……


 蟷螂の、それであった。






  ―――そのき血を炎と燃やせ、『正義』の名の下に!






   仮面ライダーBLOOD-MASKED RIDER BLOOD-
   第2幕:悪食女郎と仮面騎士<アクジキジョロウ ト カメンキシ>




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 さて、そんなわけでBLOOD、再始動です!

 このシーン、実は最初期のプロットでは1幕のラストシーンの予定でした。まあいろいろあってこっちのがいいかな、的な。

 でも次のシーンもアバンタイトルっぽいつくりになるんだよな…
 ま、どうにかしますか。


 そろそろ他のオリジナルも再始動させなきゃなー…

(初出:2009年07月10日00:33 mixi日記)