―――俺は、何者なんだ?
蟷螂を模した怪人と互角以上に渡り合う身体能力。皮膚の向こう側で走る鋼鉄の組織。
そして、何より―――あの姿。
そして、何より―――あの姿。
あの蟷螂男は、<ジェノサイドロイド>だの<初號体>だのと呼んでいた。
それが、俺の本当の名なのか?
いや、名前すら忘れていた自分にとっては、その名が本当の名であるかどうかも解らないのだ。
いよいよもって、自分自身がわからなくなる。
「……」
ごろり、と寝返りを打つ。アスファルトの大地に大の字に寝転んだエイジの目に、淡い春色の空が映る。
さて、どうしようか。
差し当たっては、もう少し眠って体力を回復させてから、動き出すことにしよう。
幸いにして、この裏路地は人気がないようであった。怪しまれることは無いだろう。
幸いにして、この裏路地は人気がないようであった。怪しまれることは無いだろう。
そう思い、エイジはひと眠りするべく、目を閉じようとした。
と、エイジの視界が急に暗くなる。それが、誰かが自分の顔を覗きこんだからだと気付くのに、しばしの時間を要した。
「…おい、ンな所で寝てると風邪引くぞ?」
聞き覚えのある声に、沈みかけていた意識が一気に引っ張り出された。
*
「やれやれ、ついこないだ行き倒れた奴が宛ても無くふらふら出歩いてるからだ」
肩を貸して歩く達也が、溜息混じりに呟いてみせる。
「……いつまでも、あんたの世話になるわけにはいかないと思ったからさ」
「それにしたって、書置きすら残さんと出て行ったら心配もするだろうが」
肩を貸して歩く達也が、溜息混じりに呟いてみせる。
「……いつまでも、あんたの世話になるわけにはいかないと思ったからさ」
「それにしたって、書置きすら残さんと出て行ったら心配もするだろうが」
その言葉に、知らず胸が熱くなる。
「…心配、してくれた、のか?」
「あったりまえだ」
「あったりまえだ」
バカ野郎、と軽く頭を小突く。
「お前はもう俺のダチなんだよ。ダチのこと心配しねー奴ァいねえだろうが」
「…そう、か」
「おう」
「おう」
見知らぬ自分を、であったばかりの自分を、友と呼んでくれる。
達也の篤さに、エイジは嬉しさを隠せなかった。
「よし、帰ったら朝飯だ。目玉焼きは固焼きか? それとも半熟か?」
「……半熟で頼む」
「まかせとけ!」
「……半熟で頼む」
「まかせとけ!」
が、それ以上に。
自分の正体が知れたときの、彼の拒絶が……
なによりも、怖くなった。
-つづく-
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こちらは、プロットの段階では序幕の予定でした。
達也のとあるセリフが、第1話の序幕とリンクしてているのはその名残です。
達也のとあるセリフが、第1話の序幕とリンクしてているのはその名残です。
さて、これからのストーリーがちょっと詰まってるなァ…どーしよ(ぇ