帰宅しても、夕食中にも、達也の様子はあまり変わった様子は無かった。
結花の学校での話題にもそれなりに返し、エイジにも話を振る。
エイジが返答に困って口をつぐむと、兄妹そろって笑う。そんな光景を見ていると、本当はあれを見ていないんじゃないのか、とすら思えてしまうのだ。
エイジが返答に困って口をつぐむと、兄妹そろって笑う。そんな光景を見ていると、本当はあれを見ていないんじゃないのか、とすら思えてしまうのだ。
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「あ、後片付け、手伝うよ」
「おう、悪いな」
「おう、悪いな」
夕食後。宿題を片付けるべく自室に引っ込んだ結花のかわりに皿洗いをかって出る。
「まぁ、一応にも居候だしな。手伝えることはなるべくしたいんだよ」
「そーいうことなら、なるべく家事振るかな」
鍋を擦りながら、達也がにんまりと笑った。
「そーいうことなら、なるべく家事振るかな」
鍋を擦りながら、達也がにんまりと笑った。
「……なぁ、その……」
「ん?」
「ん?」
言いかけて、口ごもる。
シンクにたたきつけられるシャワーの水音が、いやに大きく聞こえた。
「さっきの……こと……なんだが……」
「んあ? ああ、結花のガッコの話か? お前のコトが話題になってるって。まぁいいんじゃねえの? お前イケメンだからよ、モテるぜ~?」
「や、それじゃなく…」
「んあ? ああ、結花のガッコの話か? お前のコトが話題になってるって。まぁいいんじゃねえの? お前イケメンだからよ、モテるぜ~?」
「や、それじゃなく…」
先ほどもその話題でさんざんいじられたことを思い出し、エイジが渋い顔をする。無論、本題はそれではなく、先般の廃ビルでの出来事だ。
「……なんだよ、モテるこたぁ悪いことじゃないんだからそう邪険にするこたぁねーだろ?」
エイジの真意は、達也にも伝わっているはずである。それでもなお、話題を変えないのは違和感以外のなにものでもなかった。
「だから……!」
思わず力を入れてしまったエイジの手の中で、グラスが粉々に砕け散った。
「うお! …お、おい大丈夫かエイジ?」
達也の言葉に、はっとなって手を見る。鋭利な刃物と化したガラスの破片が、いくつも手に刺さり、真っ赤な擬似血液が水に流されていた。
「あ、いや…だ、大丈夫だ」
「どこかだよ…手ぇ血だらけじゃねえか。ええとちりとりちりとり……」
「どこかだよ…手ぇ血だらけじゃねえか。ええとちりとりちりとり……」
慌てて砕けたグラスの片付けに走る達也を尻目に、エイジはすばやく手に刺さった破片を取り除くと、そばにあったビニール袋に放り込み、手の中に残った擬似血液を洗い流す。もう傷はふさがっていた。
「…あ、おいどこ行くんだよ? 手当てしねえと」
「大丈夫だ。…その、すまん。グラス…」
「いいんだよ、安モンだし、長いこと使ってたからな。脆くなってたんだろうさ」
「大丈夫だ。…その、すまん。グラス…」
「いいんだよ、安モンだし、長いこと使ってたからな。脆くなってたんだろうさ」
それが嘘であることは明らかだった。エイジのジェノサイドロイドとしてのメカニズムが、あのグラスの強度を誰よりも知っていたからだ。
……少なくとも、常人の握力でどうにかなるレベルではないことくらいは。
「……それでも、すまん。…あの、ちょっと気分が悪くなった。部屋で、休む……」
「そう、か……」
「そう、か……」
怪訝そうな表情を向ける達也を見ないようにしながら、エイジは階段へと向かった。
-つづく-
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ブランデーグラスとかだと握りつぶす悪役はザラにいますがw
いわゆるフツーの「ガラスコップ」的なグラスだと、ちょっとやそっと力加えたくらいじゃ割れません…よね?
いわゆるフツーの「ガラスコップ」的なグラスだと、ちょっとやそっと力加えたくらいじゃ割れません…よね?
わりと分厚く造ってますし。
ちなみに当方、握力はかなり低いほうです。学生時代の体力測定でも、毎回毎回握力は平均値下回ってた記憶がorz
二桁とかだせるわけがねー!