炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【オリジナル】ほしをみにいこう


「そーだ、星を見に行こう」
 などと、どこぞの古都にでも行こうみたいなノリで提案される。
「いいね」
 まぁ、断る理由なんて無いけど。
「いつ行く?」
「今夜!」
「早いな」
「善は急げってね」
 思い立ったがなんとやらだ。彼女らしい。
「今日はいい感じに残業になりそうだから、終わったら迎えに来て」
「ん」
 いい感じな残業って何だよ。
 
 
 
     ほしをみにいこう
 
 
 
「うわっ寒っ」
「ついこないだまで暑かったのにねぇ」
 10月の声を聞いたとたん、朝晩が一気に冷え込んだ気がする。小さくくしゃみする彼女に「こんなこともあろうかと」なんて呟きながら、車から毛布を引っ張り出す。
「おー、サービスいいねえ。これでお酒でもあればなおオッケー」
「はいはい」
 毛布に包まってご満悦の彼女を促して、僕も一緒に夜空を見る。少し遠出した先にある城址公園に、絶好の星見スポットと言うのを調べてきたらしく、乗り込むなりナビをする彼女は、とても残業明けとは思えない元気ぶりだった。
「あれ、もうオリオン座出てる?」
「そりゃこんな時間だもん」
 思いのほか彼女の残業が伸びてしまい、もう深夜。季節の星座として紹介されてるのは、大体夜8時に南中している連中なのだ。
「むー、せっかくだから見たかったんだけどな。あたしの星座」
「残念ながら、てんびん座は夏の星座だよ」
 嘘ぉ!? と言われても。
「星占いの星座は、その星座を太陽が通過する時期に当てはめてるの。太陽の傍にあっちゃ、いくらなんでも星は見えないでしょ?」
「初耳だわ……」
 まぁ、知らなくても別に問題はないもんねぇ。それはともかく、「ぬかったー!」な彼女の表情はなかなかに可愛い。
「そういえば。なんでいきなり星?」
「うん、こないだね。残業明けて帰っててさ。ふっと空見上げたら……星がすっごい奇麗で」
 だから、一緒に見たいと思ったの。……だって。
「……って、何顔そむけてんの」
「……ノーコメント」
 ええい、ニヤケが収まらん!
「あーもー、下向いてないで、上向く!」
 襟首を引っつかまれる。彼女が座るベンチの隣に腰を落とすと、ほら、と言う彼女の声が耳元で聞こえた。
「秋だからかな? 空が高いね」
「これからは空気が澄んでもっと星が奇麗に見えるよ」
 そういや、もうじきしし座の流星群もあったっけ。
「ほんと!? じゃそれも見に行こう! 約束ね!」
 屈託のない笑顔でそう言われたら、頷く以外の選択肢なんてあるわけがない。なんかくすぐったい―――
「……っくし!」
「あ、寒い?」
「……む、ちょっとね」
 車に置いてきた上着を取りに戻ろうと腰を浮かすぼくを、彼女の手が押しとどめる。
「おりゃっ」
「っわぷ!」
 次の瞬間、暖かな感触と柔らかな彼女のにおい。
「~~~~ぷはっ」
 それが毛布によるものだと分かるのに数秒。どうにか頭を毛布から出すと、すぐ傍に彼女のいたずらっぽい笑顔。
「こうすれば暖かいでしょ?」
「……う、ん」
 耳まで真っ赤になってる気がする。
「実は妄想してたでしょ、こーいうの?」
「……否定はしない」
「へへ、むっつりスケベめ」
「それについては異論を唱える」
 大体きみだって、こーいうことを妄想しなかったわけじゃないだろう?
「……否定ができない」
「むっつりスケベめ」
「だがそれは否定します」
 顔を見合わせて、ぷっと吹き出す。
「ま、しょうがないか」
「うん、しょうがないね」
 きゅ、と毛布の中で手を繋ぐ。体温が上がるのが分かる。
「―――」
「んー?」
 不意に、彼女がぼくの名前を呼ぶ。
「呼んだだけー」
 にへらっ、と笑う。

 ……反則だよまったく。
 照れくさくてそらした視線の先に、シリウスが煌々と輝いていた。
 
 
 
 
 


 
 久々に更新したのがこんなんで果たしてよかったのか否か。
 細かいことはキニシナイ。それが俺様クオリティ(マテ
 
 イワユル「いちゃらぶ」系のネタでオイラが書くには珍しく登場人物の年齢が高め。つっても20代だけどね。
 でも結局のところ学生モチーフに使うのとあんまり変わらない気がしなくも無い。このへんは要精進ってトコか。
 
 さておき、この二人で何パターンか書きたい気分やね。恥も外聞も無くいちゃラブ書き散らかしたい。