炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【闇照】ZEN~炎刃の鋼腕~/プロローグ【スピンオフ】

   プロローグ:幻/Pain 
 
 
 
 ――右手を穿つ、痛み。 
 
 突き立てられた巨大な針のようなモノが、じわじわと蠢いて俺の肉を掻き回す。 
 
 中に入ってくるナニカが……オレヲ……変エ…… 
 
 ……変えられて、たまるか! 
 
 
「うあぁぁぁぁぁ……クソッタレェェェッ!!!」 
 
 地面に刺していた刃に右手を当て、躊躇いごと切り落とす。刺された痛みすら吹き飛ばす更なる激痛が全身を駆け巡り、薄れかけた意識が一気に浮上した。 
 
 既に“魔導ホラー”に変わりかけている俺の右手を、黄金騎士に託す。 
 
「斬れ! これで魔導ホラー1体殲滅だろ! ……流牙ァッ!!!」 
 
 牙狼剣が俺の手を斬り、迸る黄金の光が、輝きを失った牙狼の鎧を照らす。 
 
 へへっ……ざまあみやがれ金城滔星…… 
 
 悔し紛れに飛び掛ってきた滔星を殴り飛ばして、俺は降って沸いた眠気に身体をゆだね…… 
 
 
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「……っは!?」 
 
 “男”が跳ね起きる。 
 
 全身汗だくになった彼が辺りを見回すと、それはようやく見慣れてきた自分の新しい寝床であった。 
 
「……夢、か」 
 
 ほっとため息をついたのもつかの間、“右手”に疼痛が走る。 
 
「ぐっ……うぅぅ……」 
 
 しかし、その右腕……その先に、痛みを訴える“右手”は無い。 
 
 
 
 “男”の名は蛇崩猛竜。 
 
 
 
 かつて、<ボルシティ>と呼ばれる仮初の理想郷で、“魔導ホラー”と呼ばれる魔獣と戦った、3人の魔戒騎士の一人である。 
 
 さまざまな試練……出会いも、別れも経験し、激闘の果てに、原初の魔導ホラー・ゼドムを討ち倒した猛竜たちであったが、その代償は、決して小さくは無かった。 
 
「やっぱ、義手つけて寝るか……」 
 
 戦いの最中、戦友を庇ったことで喪った右手を見やりながら、独りごちる猛竜。 
 無論、そのことを後悔はしていない。むしろ、最強の騎士を守った名誉の負傷だと、時折軽口交じりに嘯くほどだ。 
 
 枕元に置いた義手……今は亡き、恩師とも言うべき男が遺した……に手を伸ばす。 
 
 これまでも、時折ありえない痛みを訴える右手だったが、この義手をつけているとずいぶんと和らいだ。ソウルメタルを削りだしただけの急拵えであったが、ゼドムとの戦いでも共にあったこの“相棒”は、いまや猛竜にとって、無くてはならないものであった。 
 
 文字通り、握り拳大のソウルメタルの塊を右腕につける。と、走っていた亀裂がさらに伸び、厭な破砕音が耳朶をなぞった。 
 
「……あぁ、そうだっけか……」 
 
 未だ収まらぬ幻肢痛に顔をしかめながら、猛竜がやっちまった、と呟いた。 
 
 
 
 
     牙狼<GARO>~闇を照らす者~スピンオフ 
 
     ZEN~炎刃の鋼腕~/ENZIN_NO_KAINA 
 
 
 
 

 
 「サブキャラが主役のスピンオフを作りたい病」に新たに罹患しました。 
 
 ……と思ったけど、もともとそーいう傾向があったような気がする。 
 生まれて初めての二次創作が、ときメモドラマシリーズの秋穂みのりをヒロインにしたヤツだし。 
 (リメイク準備中) 
 
 で、今回の生贄(マテ)に選ばれたのは、「闇を照らす者」の炎刃騎士ゼンこと蛇崩猛竜。 
 
 彼がどんな目に……もとい、どんな活躍をしてくれるのかは、これからの物語を読んでやってくださいまし。