炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【アギト×イナズマン】Fight for FREEDOM/シーン1

「……」
 怪人は、相手の姿を一瞥し、困惑しているようだった。
「アギ…ト…? ギ…ルス……?」
「? 何を言っている?」
 唸るような呟き声を発する怪人に、いぶかしげな視線を向けるサナギマン。
「グゥ……」
 怪人が、思考を振り切るかのように頭をぶんぶんと振る。やがて、サナギマンを睨み付けると、頭上に浮かんだ光の円盤からもう一本の長剣を取り出し、構えた。

「……やる気は十分、ということか」
 そう呟き、サナギマンもこぶしを握り、身構える。

 先に飛び出したのは、トンボの怪人のほうであった。長い刀身が波うち、軽やかにサナギマンの体を切り裂く。

「…むんっ」
 が、先ほどと同じように刃はサナギマンの表皮を打ち付けるだけに終わり、傷ひとつ付くことはない。
「!」
 あせったのか、2度、3度と切り結ぶ怪人。鈍い音が響き、刀身が衝撃にわななくが、サナギマンに与えるダメージは皆無であった。

「…どうした、もう終わりか。ならばこちらから行くぞ! チェェースト!」

 攻撃に転じるサナギマンが、怪人の腕を掴み、片手で投げ飛ばす。地面にしたたかに叩きつけられ、怪人が潰れた蛙のような声を発した。

「む…?」

 手に感じた怪人の感触を思い出し、サナギマンは疑問符を浮かべる。
(やはり、ミュータントロボットやサイボーグではない。体の構造を“読み取った”が、100%生物だ。…だが)

 目の前の怪人を見やる。どうみても、存在し得ない“存在”である。

「貴様は何者だ! なぜ俺を狙う!?」

 サナギマンの問いかけには答えず、怪人は再び立ちあがり、今度は背中からトンボのそれに似た羽根を生やし、飛び掛ってきた。

「なんのっ」
 腹に力を溜め、正拳突きを怪人の頭部に見舞う。

「…なにっ!?」
 が、その拳は怪人の手前で見えない力に阻まれた。
「こ…これは!」
 それは、サナギマンにとってもなじみのある力であった。
(超能力による念動障壁!? まさか……こいつは超能力者…いや、ミュータントなのか?)

 思考に陥り、サナギマンの動きが止まる。そこを見逃す怪人ではなかった。

「がはぁっ!」

 念動力をまとった掌底がサナギマンの腹を打ち、衝撃波が突き抜ける。
 吐血したサナギマンの口元が鮮血に染まった。

「む……やつめ、正攻法では歯が立たないと踏んだか…」

 数度むせ、口元をぬぐう。怪人は、今度は軽快に二本の長剣を操り、刃に念動力を込めて振り下ろした。不可視の刃が飛び、サナギマンを襲う。

「ぐっ!」

 自らも“超能力”でその視認に成功したサナギマンが、量の掌で二つの刃を押し止める。斬撃をものともしなかった岩石のごとき表皮が、擦り切れるように傷ついた。

「なかなかやるな。…ならば、俺も真の力で立ち向かわせてもらおう。今こそ、成長のときだ!!!」

 かっと目を見開き、叫ぶ。と、腰に巻かれていたベルトのバックルが、煌々と輝き始めた。


「超力・招来!!!」

 サナギマンの全身にひびが入った次の瞬間、彼を中心に爆発が起こる。

「…!」

 やがて収まった爆風の中から、青い体躯の戦士が飛び出してきた。


「自由の戦士、イナズマン!!!」

 瞳を爛々と輝かせ、自由の戦士が朗々と名乗りを上げた。


   -つづく-



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 ―――サナギマンが成長すると、ベルトのゲージが頂点に達し、イナズマンになるのだ!!!


 前回と同じ引き方じゃねえか!という突っ込みは微笑みと一緒に昨日に捨ててきなさい(ぇ

 サナギマンは、五郎の能力だといっぺんにイナズマンになれないからこれで力を溜める、というための形態だそうで、劇中では戦闘員にフルボッコにされているのに耐えながら力を溜めているシーンがあるそうです。

 …さすがにそれをそのままSSに活かすとカッコ悪いことこの上ないのでちょっと変えてみましたが。

 まぁ、眠っていたとはいえ歴戦の勇士。相手がアンノウンだろうがなんだろうが。

 さて、次回はアギト勢から彼の登場予定。はてさてどーなる?

<2009年08月25日07:34 mixi日記初出>