炎部さんちのアーカイブス あるいは永遠的日誌Ver.3

日々是モノカキの戯言・駄文の吹き溜まり

【ときメモ4SS】くろすれんじ・すいーと【柳冨美子】

 ―――放課後の放送部はわりかし暇である。

 下校時刻になったことを伝える放送をやるくらいで、それまでの時間は特にやることがないのだ。


 そんなわけで、下校時刻待ちのオレは、時間つぶしと実益を兼ねて課題を片付けている最中だ。

「古我先生…いつもながら課題出しすぎだろ…そんな難しくは無いけど」

 ボヤいたところで課題は減らないのでしぶしぶこなす。静まり返った放送室はこういう作業には向いていると思う。

 3枚目のプリントを片付けたあたりで、おなかが小さく鳴った。

「……ええと、たしか…」

 カバンの中を漁り、中からスティックのチョコ菓子を取り出す。口の中でポキっと折り、口の中で転がしながら、プリントの続きに取り掛かった。



   * 



「…あー、お菓子食べてるー」

 背後から間延びした声がしたのは、後もう少しで課題もチョコ菓子も終わろうというところだった。

「あ、柳さん」

 顧問の先生に頼まれていた買出しから戻ってきた彼女は、ぷうっとやわらかそうな頬をふくらませてみせる。

「いーけないんだー」

 と言いつつ、目は笑っている。
 大体、彼女だってしょっちゅうお菓子持ち込んでるわけで。

「ありゃ、見つかっちゃったか」

 そんなわけで、オレもしれっと返す。

「んじゃ、せっかくだから共犯者になっとく?」

 あと2本になっていたチョコ菓子の、一つを口にくわえて、もう一本をひょいと差し出す。

「んー。それはミリョク的なお誘いだね~」

 ふにゃ、と柔らかな笑みを浮かべる柳さん。それじゃ、と伸ばすオレの手をスルーして……

「……えいっ」
「…!?」


   ぽきっ。


 オレがくわえてた方を反対側から一口。

 これまでないくらい身近に、彼女の顔を、瞳を目の当たりにした。



「ん~っ。甘くておいひ~い」

 なんとも幸せそうな笑顔でチョコ味を堪能している柳さん。
 …いや、それ以前に。

「……や、柳…さん?」

 少し上ずったオレの声に、彼女は一瞬きょとんとなる。と、ようやく自分のとった行動を思い出したのか、その頬が見る間に赤くなる。

「あ……あ、ああぁぁぁっ!!?」

 効果音をつけるなら、小さな爆発音だろうか。一気に耳まで真っ赤になった。

「あ、あのっ…あのあのその、あのねっ……ええと……」

 かける言葉を捜しているのか、熱くなった頬を押さえながら必死に声を絞り出す柳さん。

「ご、ごごごごご、ごめんねえっ!!!」

 口をパクパクさせながら、どうにかそれだけ言い切ると、柳さんはカバンを引っつかんで放送室を飛び出していった。


「…………あー…」

 再び静寂の戻った放送室。柳さんが想定以上に慌てまくったおかげかある程度冷静でいられたが、改めて意識するととたんに頬が熱くなってきた。

 柳さんとは最近、仲がいい。…とは、思う。

 声をかけてくれるときはにこにこしながらファーストネームで…いや、これは最初からだが。
 それでも、女友達や、学や正志に向けるのそれとは違う種類の笑顔を、オレに向けてくれている、と思う。

 …うぬぼれかもしれないけど。

「……どうなんだろうなぁ」

 オレは、彼女を、どう思っているのか。

 彼女は、オレを、どう思っているのか。

 答えを出すのは、難しくない。

 …ただ、ちょっと早いかも、とも思う。


 軽く息を吐いて、くわえたままのチョコ菓子の片割れを、口の中に押し込んだ。



 ……なんだか、いつもより甘く感じた。




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 そういえば、間にタイトルコールを挟まないスタイルって久々に書いたような。

 さておき、2010年はじめての執筆奏上!であります。


 さてさて。

 いわゆる「ポッキーゲーム」をモチーフにしたネタですが。
 実は小ネタでやったことあるんですよね似たようなのをw

 まぁ、と言ってもSSではなく、某サイトさんのイラストでポッキーくわえてる春香(アイマス)ってのがあって、それにプロデューサーと春香の簡単な会話ネタを掲示板にカキコした程度なのですが。

 それが春香→アニメ版春香はふみちーの中の人!→よし、じゃあふみちーでいこう!

 …となったわけでは特にないのですが。やっぱお菓子ならこのコかなとw


 後日談のラブラブあまあまなノリでも良かったのですが、こーいうくっつきそうでくっつかないのもたまにはいいかな? と思いまして。

 それでも少しはいちゃラブ…あれ?



 ちなみに、メモ4(に限らず、ときメモ系)SSを書く場合には

 ○たとえED後日談でもキスはしない。
 ○スキンシップは腕を組むORぴったり寄り添うレベルまで。ハグはギリギリアウト?
 ○それでも可能な限りいちゃラブさせる(何


 という、我ながら阿呆な制約を課しています。

 まぁ、アレだ。
 ときメモってプラトニックですから?(ぇ


 当時は(特に1)どんだけ仲良くなって女の子からも下の名前で呼ばれたりあだ名で呼ばれるようになっても主人公が延々苗字でしか呼ばないことや、キスも手つなぎもないことに物足りなさを感じていましたが(名前呼びや手つなぎは後のシリーズで実装こそされてますけどね)、いざいろいろなギャルゲやエロゲの類をやってきて、キスシーンのバーゲンセールをぼんやり眺めていると、ときメモシリーズのプラトニックさが逆に良く感じたりもするんですよw(ぇ
 傍から見たらどーみても「おまえら恋人だろうがYO!」な雰囲気であっても卒業式に思いを伝え合うまではお友達という凄まじさとかw
 まぁ、ふみちーの場合は某イベントのおかげで周囲からは卒業前から公認カップルとされてそうですけどねw