#小説
昨日は色々なことがありすぎて、そのまま竜姫亭に戻ることにした。 管理人室を訪ねても、フランは多くを語ろうとはしなかったが… 「近いうちに、かならずあなたたちには本当のことを話すから…」 そう必死な表情で言われては、何も言う事はできなかった。 ・ …
シャーク教団の司祭に託されたミスリル電光石を握りしめる。これで時計塔の動力を取り戻せば、上層階への道が開ける。けど… 「ルルのことが気がかりよね」 マイコの言葉に頷く。あの司令書には、ルルを裏切り者として処刑する旨が記されていた。ソルに反旗を…
さて、それじゃあ今日から新しい階層に挑もうか。 「いいけど…上の階層に向かう昇降機はまだ使えないんじゃ?」 うん、だから先に、シャーク教団のところに寄っていこう。色々教えてくれるみたいだし。 「すみませーん、出かけるの少しお待ちくださいっ」 と…
アストロを倒したのも束の間、新たなデモンが眼前に現れる。どうする…戦えなくは無いけど、今は僕の魔眼の中にはすでにアストロが封じられてるし… 「まぁ、デモンが倒れるのはいいことです。ソルの力が弱まるのは、ルルにとっても好都合ですから」 ルナとし…
「行くの?」 竜姫亭を出ようとしたところで、フランに声をかけられる。 「じゃあ、ちょっと後ろを向いてて」 いいから、と僕達に背を向けさせる。ややあって、背中越しにカチカチと乾いた音がした。 「…うん、これでいいわよ」 何したの? 「えっとね。たま…
リーダーからジェムの補充を頼まれて、道具屋に向かう。 「えーっと…次は基本その3ね」 と、すぐそばの管理人室の扉の向こうで何やら聞こえる…誰かと会話してるのかしら? いや、なんか良からぬこと企んでるかも知れない…急に家賃上げたりとか。あの女ならし…
エルダーゴーレムに飛ばされた先で、探索を続行する。 『また水中ですか…それにしても、皆様も水中でも息ができるのですね?』 はは、これは魔法具のおかげだよ。っていうか、皆様“も”って? 『僕たちは水中から酸素を直接採取することで呼吸が可能なのです…
ルゥ・ルナーク…もとい月のデモン・ルナとの戦いから一夜明け、ソルの復活阻止に向けて決意を新たにした僕たちは、グリモダール城の次なる下層に降りた。 「無限坑道…か」 壁を見ると至る所にほのかに光る鉱石が埋まり、洞窟だというのにむしろ明るすぎるく…
赤き竜人よ来やれ、オープンデモン! 「っしゃあ!アタシの出ば…うおっ!?」 呼び出されて早々に、ルナの姿を目の当たりにしたマルスが戸惑う。 「おいおいゲイザー、なんだあのバケモンはよぅ…」 「フン、化け物に化け物呼ばわりされたくなんかないね」 ル…
ヴィーナスの魂をフランに渡していると、ノックもそこそこにレゼルムが飛び込んできた。 「悪いが急を要するので、野蛮人の流儀でやらせてもらうよ」 いつになく慌てた様子の道具屋は、「カッスルの身に危険が迫っている」と告げた。 曰く、彼がルル…賞金稼…
双子がパーティー入りして一週間が経った。 頑張って教えた甲斐あってか、僕以外の言うこともちゃんと聞くようになってきた。 「おいお前ら、補助魔法かけるからこっち来い」 ノアルやビアンカからの魔力供与も、最初こそ嫌がっていた二人だったが、今は率先…
探索帰りに持ち帰ったドクロを受け取ったプロメスに誘われるまま、ドクロ磨きの手伝いをすることになった。 「その後、双子のご様子は如何ですか?」 まぁ、ぼちぼち…っていうか、本人達を前にして聞く?すぐ隣で一緒にドクロ磨いてるじゃない… 「まぁ、是非…
「お、お願いしますっ!管理人さんを探しに行ってください!」 地下牢獄の探索を切り上げ、竜姫亭に戻ると、血相を変えたピーネに飛びつかれた。ちょっと落ち着きなさいなピーネ、何があったの? 「管理人さんが帰ってこないんです…っ。お昼には戻ってくるっ…
小柄な体がふたつ、同時に地を蹴る。 少年の方…クリスが槍で魔物の足元を薙ぎ、その隙をついて少女の方…クレアが刀を振るい首を落とす。一糸乱れぬ連携は、まさに“二人で一人”を体現しているかのようだ。 プロメスによれば、二人は一つ分の魂を共有している……
「ふむ…なるほど」 竜姫亭に戻った僕たちは、オヤカタの体をプロメスに見てもらっていた。 「でもどうして葬儀屋に?」 マイコの疑問も尤もである。 竜姫亭には医者がいない(からこそ先日のフランの発熱は騒ぎになったのだが)ので、医者の次に人体に精通して…
「それで、あの子たちリーダーの部屋でお留守番してるの?」 もうすっかり慣れ親しんだグリモダール城内で、マイコが僕に問いかける。 「あの錬金術師殿と共にこの城で戦っていたというなら、良い戦力になるだろうにねぇ」 まぁ、パーティーとして同時に行動…
ユピテルの魂を魔眼の中に収め、さて帰ろうとした矢先…カチリ、となにか錠の開くような音がした。 吹き抜ける風の音が、なぜだか僕を呼んでんいるような気がして… 僕は導かれるまま、上の階を目指す。
グリモダール城、宝物庫の最奥。 狂気の鬼女ユピテルはそこで僕たちを待っていた。 「まさか…『追い詰めた』とか思ってる…?」 どう見ても笑っていない表情でくふくふと含み笑うユピテルは「もっともっと苦しめてやるッ!」と言い放ち…姿を消した。 「に、逃…
「聞いたわ、城の中で魔剣を見つけたんでしょう?」 ピーネが開いたお茶会の席で、フランが尋ねる。昨日、カッスルにその話をしたところ「詳しくは管理人に聞け」と言われたんだっけ。 フランに曰く、その剣の名は“魔剣デモンスレイン”。その名の通りデモン…
シャーク教団から頼まれたアンデッドの討伐に成功し、司祭に報告する。これで彼らが塞いでいた障壁を開けてくれるはずだ。 あとで2階にある礼拝所にも寄って欲しいと頼まれた。以前、プロメスに預けた精霊神への手紙について聞きたいらしい。 「そういえばあ…
アスタロトとの戦いで疲弊していた僕たちは、一旦竜姫亭に戻り、翌日から探索を開始することにした。 最初こそ鏡の向こうがかのグリモダール城かどうかははっきりしなかったものの、探索範囲を広げていくにつれ、少しずつ確証を得ている状況だ。 ・ ・ ・ 入…
──誰だ?僕を、呼ぶのは…? ぼんやりした視界の中、僕の名を呼び続ける声に目を向ける。黒く禍々しいシルエットが浮かび上がっていた。 『よう…俺…』 その姿に見覚えはなかったが、はっきりとわかった。こいつは…僕…今は僕の内側にいるはずの…デモン! 『フ…
「グリモダール城の中に入れる?」 カッスルの言葉に、フランが目を丸くする。 曰く、200年前のグリモダール城の主は自らの領地と富を守るために、城全体を結界で守ってしまおうと考えたらしい。 一見、城に城門がないように見えるのはその所為のようだ。 さ…
ネプトゥヌスの鍵を受け取る際に語られた、フランの目的。 それは、デモンの祖たる“大天使ソル”の復活を阻止することだった。 万一復活してしまったら、太古の昔に猛威を振るったかの魔王の如き闇の主神にまで成長するかもしれないのだという。 これまでのデ…
武器屋からの呼び出しの理由は、管理人さんの急な発熱によるものだった。 病人の世話ぐらい館に残っている連中で事足りそうなものだと思ったが…どうやらそうもいかないらしかった。 管理人室からは、赤の旧市街もかくやの熱気がドア越しからも伝わる。いや、…
館の鏡を経由して、ゲートストーンから“青の旧市街”に突入する。このルートでもちゃんと息吹のヴェールは機能しているようでなによりだ。 「とりあえずはあのデモンとまともに渡り合えるようにならなきゃだね」 うん。そのためには僕たち自身もだし、身に付…
ちょっとしたアクシデントがありつつも、無事“息吹のヴェール”は完成した。 赤の旧市街のはずれ、水浸しの廃墟にて、いよいよ湖に飛び込む。 「まずは準備運動からです!水は冷たいですのでちゃんと体を温めておかないと心臓が止まっちゃいますよ!」 ビアン…
「大将、宝探しに行かんか?」 顔を洗っていると、オヤカタからそんな提案を受けた。 「これまでの探索行でいくつか“宝の地図”を入手しておったじゃろ?」 あぁ、そういえば。探索とデモン狩りに集中したくて、片っ端から倉庫に入れてたっけ。 「次のデモン…
デモンを倒しに行くよ。 僕がそういうと、仲間たちはみな一様に目を見開いた。 まぁ、無理もない。あれだけのことがあった昨日の今日で、なのだから。 ローナが死んで、周りが僕を見る目がガラリと変わって…みんなの態度に変わりがなかったのは正直助かって…
「勇介」 鈴の転がるような声に、名前を呼ばれた青年は振り返る…その前に動きは背後から伸びた腕に絡めとられて阻まれる。 「どうした、コロン?」 勇介はその腕の持ち主の名前を呼び返すが、返事はなく。ただ彼女の冷たく硬い感触を背中に感じた。 Kissing …